【レポート】

クリエイターのイメージをいかに現実にするか - IAMASの研究成果展覧会

    小林行雄  [2009/09/10]

    情報科学芸術大学院大学(IAMAS:Institute of Advanced Media Arts and Sciences)のユビキタスインタラクション研究領域は、9月10日から13日までの4日間、東京六本木のアクシスギャラリーにおいて、研究成果の展覧会「Hands On - プロトタイプをプロトタイプする」を開催している。同展では、電子玩具やユビキタス社会に関する研究の成果物展示のほか、東芝 デザインセンターとの共同研究に関する成果も展示されている。毎日11:00~19:00の間で開催されており、入場料は無料。

    会場は東京六本木のアクシスビル4Fにあるアクシスギャラリー

    会場風景

    同大のユビキタスインタラクション研究領域は、「ユビキタスとコンテンツ研究プロジェクト」と「ガングプロジェクト2」という2つのプロジェクトで構成されている。ユビキタスとコンテンツ研究プロジェクトでは、ユビキタス社会で求められる技術やコンテンツの研究が進められており、一方のガングプロジェクト2では、ティーツーラボの協力により、電子玩具のデザインを通じてハードウェアとソフトウェアを統合したモノづくりのあり方の研究が行われている。

    また、同展では、プロジェクトに参加する学生向けに行ったアイデアスケッチの展示や、Cypress SemiconductorのPSoCを用いた"フィジカルコンピューティング"開発環境「GAINER」を用いた体験型ワークショップも開催されている。なお、ワークショップの受付はすでに終了しているが、展示会場で行われているので、自由に作業している様子を見学することは可能だ。

    ワークショップの様子(右がワークショップで用いられるGAINER)

    デザイナーのイメージを具現化する

    そもそも、フィジカルコンピューティングとは、ニューヨーク大学から始まった教育プログラム、研究指針でPC上のGUIを超えて、実際の生活環境におけるコンピュータのあり方を模索する研究。GAINERのプログラミングには「Flash」「Max/MSP」「Processing」といったビジュアルプログラミング環境が主に用いられるため、例えばFlashコンテンツのデザイナーのイメージをPCのモニタ上ではなく、電子回路基板を通してリアルな世界に表現することが可能となる。

    実際に、展示会の内容を見てみると、クリエイター達がイメージした無数のアイデアスケッチが壁一面に貼り付けられている様子が見て取れる。これをいかに3次元世界で実現していくかが第2段階であり、身近で手に入る材料やビデオを用いて、紙の上のアイデアを形にして可能性や問題点を整理、上手くいかない場合には諦めて次のアイデアにトライする場合もあるという。

    壁一面に大量のアイデアスケッチが貼り付けられている

    まずは身近な材料でアイデアを形にしてみる(写真は「Eye am You」と銘打たれた目の前の人の目を映すことを目的としためがね型玩具をイラストから3次元に起こしてみたもの)

    こちらは「アニマルクリップ」と銘打たれた動物の形をしたクリップで、挟んだモノににより、音が変化する玩具のイメージをスチロールで具現化したもの

    第3段階としてハードウェアとソフトウェアを用いて実物の一部を実装して評価するというプロセスを繰り返し、さまざまな可能性を試すことで、形状だけではなく、実際のインタラクションが加わることで、さらなる問題点や可能性の発見が行われることとなる。そして、これらの工程を経て、ようやくプロトタイプの製作となる。今回のアイデアスケッチを基にして作成されたプロトタイプは、ガングプロジェクトによるものであり、玩具として実際に遊んで体験できるプロトタイプの製作を目標としており、ハード、ソフトに加え、ボディなどの外装部分の作りこみも行われている。

    「Eye am You」を実際に見ている人の目が映るように作ってみたもの

    「アニマルクリップ」をより実物に近づけたもの

    「いちゃいちゃ! ゆびずもう」と銘打たれたもので、指人形で指相撲をすると、効果音や振動によるフィードバックが生じる。ちなみに、白熱すると人形の頬がLEDで赤く染まる。相手の背中を抑えるとゴングが鳴る。

    「アクション! ゆびにんぎょう」のプロトタイプ(指にこのブーツを履かせて歩かせると、アクションに応じてどこかで聞いたことがあるような効果音が鳴るという玩具)
    「アクション! ゆびにんぎょう」が実際に動いているところ(wmv形式 2.29MB 15秒)

    「スタンポロン」のプロトタイプ(3対の動物の足に12種類のモジュールを選んで装着することで、歩くときの音が変化する)

    スタンポロンのデモその1(wmv形式 951KB 6秒)
    スタンポロンのデモその2。歩く音がその1と異なっている(wmv形式 390KB 3秒)

    ユビキタス社会のコンテンツ研究

    ガングプロジェクトの成果物のほか、同展では"ユビキタスとコンテンツ研究プロジェクト"や"東芝 デザインセンターとの共同研究に関する成果"に関する成果物の展示も行われている。

    ユーザインタフェースをPC上から具現化し、実際に触って用いることで何かしらのアクションが発生するといったものが多く、紙や布の色を認識するとPCでアクションが起きたり、無線通信モジュールのXBeeを用いて稼働したりするもののほか、小型プロジェクタの機能を活用したものなども展示されている。

    色を認識できるクリップでモノを挟むことで、そこに覚えさせた各種アクションなどをコンピュータに処理させることができる「inClip」(クリップで何か挟んだことを認識すると、受信側の色が青から緑に変わる。写真は時計の色を認識したときのもの)

    触れずに倒れる「エスパードミノ」(無線通信ネットワークの可視化を狙ったものだとのこと)
    「エスパードミノ」を実際に倒してみたところ。4つ目が上手く倒れてくれなかったのは御愛嬌で、他の人がやったらきちんと倒れた(wmv形式 951KB 6秒)

    このほか、ワークショップ参加者からのアイデアを元に、プロジェクト運営スタッフが3Dプリンタを活用し、プロトタイプを実際に作るワークショップ「Prototyping Project(プロトタイプをプロトタイプする)」も行われている。

    会場には3Dプリンタも用意。実際に作成デモを行っていた

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