【レポート】
球場内のサービスが快適でも、肝心のチームが弱かったらファンは球場から遠ざかってしまう。ジャイアンツは2000年にチームの映像資料をテープからデジタルデータに変更した。数TBクラスのストレージがまだ高額な頃だったが、デジタルビデオなら素早く見たいシーンにアクセスできる。記録ビデオは、1球ごとに切り分けられスタッフが、それぞれに選手名や球種、シチュエーションなどのタグを付けていく。たとえばミーティングで、ある投手のカーブが話題になったら、その場でカーブを投げるシーンだけを呼び出せる。自チーム側の施設には、ビデオ資料にアクセスできる端末が設置されており、試合前に選手が相手投手や自分のフォームを6つのカメラアングルから確認できる。また、こうして蓄積されたデータは戦術や配球の決定をサポートする予測情報としても活用されている。その精度という点でも、デジタルアーカイブが10シーズン目に突入したジャイアンツは有利である。
今日では、大リーグ球団の多くがデジタルビデオを導入している。そこでジャイアンツはさらに1歩先に行こうと、今期Sportvisionのトラッキング・システムをテストしている。球場上部からフィールド全体を撮影するように照明にカメラが設置されており、選手やボールの位置やスピードが逐一記録される。
たとえば、これまでの守備シフトは経験に基づいた感覚的なものだったが、ボールと選手のスピードが分かれば、球場の形状と考え合わせて、もっとも効果的な場所に野手を配置できる。ベースランニング指示をサポートするデータにもなるだろう。
投球の速度を測るスピードガン同様、このシステムが本格的に導入されるようになれば、観客にもデータの一部が公開されるだろう。イチローのレーザービームはどのぐらいのスピードなのか? 守備範囲の広さは? 今日、野手を評価するデータは守備成功率やエラー数などしかないが、動かず無難に守る野手と果敢に挑戦してE(エラー)がつけられる選手の違いがきちんと判る。野手をアスリートとして評価できるようになる。他にも盗塁のスピード、守備シフトの移り変わりなど、これまでとは違った視点から試合を評価できる。
02年にワールドシリーズ進出したのをピークにボンズ退団を経て、ジャイアンツは守備型の地味なチームに変わってしまった。それでも攻撃型だった頃と同じレベルの観客をAT&T Parkに集めている。これは、ベースボールの面白さや奥深さを分かりやすく伝えようとするCIOの取り組みのたまものではないだろうか。
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