【レポート】
ニワンゴが運営する動画投稿サイト「ニコニコ動画(ββ)」の生放送番組「とりあえず生中(仮)」に11日、自民党前衆議院議員で元首相の森喜朗氏が出演した。番組内では、記者クラブ所属媒体以外のメディアの記者が森氏に質問できる「ネットぶらさがり」が行われ、森氏が質問に回答した。
今回森元首相が出演したのは、「ニコニコ生放送」と「ニコ生モバイル(仮)」で21時から放送中の生帯番組「とりあえず生中(仮)」で火曜日に放送されている「とりあえず生中(仮)~ニュースの日」だ。政治系の番組では、通常は記者クラブや番記者のみの取材に限られるが、今回、IT系メディア(ネット媒体)の記者も参加が可能となった。取材方法は、控え室の記者から事前に受け付けた質問を、番組運営者が生放送途中に画面上に表示させ、それを見た森元首相が質問に答えるという「ネットぶらさがり」の方法がとられた。
「とりあえず生中(仮)~ニュースの日」は、政治ジャーナリストの角谷浩一氏とグラビアアイドルの松嶋初音氏がパーソナリティを務めており、今回森元首相は、番組のスペシャルゲストとして出演した。番組は、森氏のプロフィールやニワンゴが実施した世論調査の結果をテーマに開始された。また同時に、ユーザーから森氏への質問の受け付けも開始した。森氏が日本ラグビーフットボール協会の会長としてラグビーの2019年ワールドカップの誘致に成功した話や、森氏が携帯電話ではメールは使わず、電話機能のみ利用しているなどの話が行われた。
ニワンゴが実施した衆議院議員選挙に関する「ネット入口調査」において、比例代表の投票先で自民党が38.7%、民主党が31.1%であることが示されると、森氏は「新聞と違っている」「ありがたい」などと発言。森氏の地元である石川県で小選挙区での政党支持率が自民党が民主党を上回っていることが示されると「安心してはいけない」と述べた。
角谷氏が「40日間も選挙期間がある中で、いろんな駆け引きがあるのでは」と森氏に質問を投げかけたところ、森氏は「今の選挙はマスコミとの戦い」と述べ、「麻生さんは結構しっかりやっている。本当は(昨年の)秋に解散したかったんだろうが、あえて解散しないで我慢をして(リーマンショック後の世界不況に対し)経済対策をやり、国民の生活を守ることを優先した。それだけやったんだから誉めてもらわなければいけない」と麻生首相を評価した。
松嶋氏が「麻生首相は漢字の読み違いという印象がある」と話すと、森氏は「そんなこと誰だってある。今のテレビは(そんなことを)大きくとりあげて楽しんでいる。だが、電波は公共のものだ」と述べた。
民主党に関しては、「ベルリンの壁が崩壊して社会主義や共産主義との戦いは終わったが、(社会主義や共産主義の)残滓(ざんし)が社民党と共産党だ。民主党は参議院で過半数を確保するため(これらの党と)協力している」とし、「本当に日本の国のことを思ったら、国会でも(麻生首相の)問責決議案を出す前に、ちゃんと議論して北朝鮮の船を査察するための法律を通してからにすべきだった。そうしていれば一流の政党といえる」と述べた。
その後、ユーザーから受け付けた質問に対し、森氏が回答した。最初の質問は、「正直森さんはインターネットやPCにあまり詳しいとは思えないのですが、どうしてこの番組に出ようと思ったのですか」というものだった。これに対し森氏は、「日本の国がITが進んだのはいつなんだということ。日本は当時IT後進国で光ファイバーの敷設も遅れていた状況で『IT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)』と『e-Japan戦略』を定めたのは、どこの内閣かというと森内閣」と強調した。角谷氏も「高速回線を日本に張り巡らせ、画像や映像がさくさく見られるようになったのは、森さんの作った法律のおかげ」と説明した。
また、「今こそ小泉内閣の総括をしてほしい」とのユーザーからの質問には、「財政を健全化するために(政府支出を)これだけ削りましょうというものだったが、医療・介護・子育てなどの分野でそうしたことが本当に良かったのかという疑問を国民は抱いている。また、小泉さんが一番大きくやったのは郵政民営化だが、それは巨大な国営銀行はおかしいという小泉さんの思いに端を発している。だが、地方の小さな郵便局がなくなってしまい、地域住民の心のよりどころがなくなってしまうようなことは、見直していきましょうということだ」と、小泉改革に修正すべき点があることを認めた。
衆議院の解散前に自民党内で見られた「麻生降ろし」の動きについては、「あの時(2005年の衆議院議員選挙)風が吹いて、ふわふわと上がった(当選した)人達が、今回は風が吹かないから『麻生やめろやめろ』と言った。だが、会社でも、自分の会社の社長を社員が悪い悪いと言っている企業の株は上がらない」と非難した。
「ロシアのプーチン首相について聞きたい」という質問には、「プーチン氏は奥が深い」とし、プーチン氏と信頼関係ができていると話した。こうした信頼関係をもとに、京都議定書に関して、ロシアさえやってくれれば発効できるという状況下でプーチン氏と会談し、日本の新聞記事を見せながら「あなたの国はエネルギー大国であり、エコ社会に責任をもってこそ信頼される」と説得した結果、ロシアが京都議定書を批准したという裏話も披露した。
この後、控え室の記者からの「ネットぶらさがり」が行われた。最初の質問は、「森元首相は以前からニコニコ動画に出演していたが、そこから政治活動へのヒントを得ることができたか」というものだった。これに対し森氏は、「これだけ多くの人が見てくれて、一生懸命(コメントも)書き込んでもらい、政治家冥利に尽きる」と回答。「あぁ、そんな風に見てくれていたのか、と自分を再発見する面がある」と出演の意義について述べた。
筆者からのネット規制についてどう思うかとの質問に対しては、森氏は「TPOなんだよな。子供たちを害するものもあり、規制すべきものもある」とした。さらに、「携帯電話の規制では、石川県が日本で初めて小中学生に携帯を渡さないようにする条例をつくった。国会では自民党の高市早苗前議員が(携帯規制を)やろうとしたが、いろんなところからものすごい圧力をかかってきた。企業の代弁者達がいっぱい国会にもいる」と、国会での議論の内幕を話した。
「インターネットで政治活動をするために、公職選挙法を改正する必要があるか」との質問には、「これもTPOだろう。全て公平公正にというのが選挙で、できる人だけが(ネット選挙を)やってもいけない」としながらも、「いつまでも全部規制することはできなくなるだろうから、専門の方々で議論していけばいいのではないか」と含みももたせた。
今回番組を視聴したユーザーは総来場者が延べ2万人を突破。ニワンゴと、同社の親会社であるドワンゴでは、「堅い内容の番組にもかかわらず、2万人を超えたというのは大きな反響があった証拠」と話していた。また、「通常記者クラブ以外は受け付けない質問が、交渉によって今回はIT系メディアでも可能になった。今後も『ネットぶらさがり』のような試みを続けたい」と今後も同様の取り組みをしていく方針を示した。
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