Coca-Cola Happy Musicキャンペーン

今回のキャンペーンは、16歳~24歳の男女をターゲットに日本独自で行われているもの。「コカ・コーラを買ってもらう」ことから始まり、「キャップ裏に応募するためのコードが印字してあることを伝える」、「キャンペーンに応募してもらう」、「何が当たるのかを教える」など、様々な要素をわずか15秒間のテレビCMに盛り込まなければならない。そんな条件下で制作されたテレビCMの制作工程を追った。

Coca-Cola Happy Musicキャンペーン テレビCM制作の流れ

1、CM放送開始日の約2カ月半前に日本コカ・コーラ(クライアント)から今回制作するテレビCMの趣旨のオリエンテーションを制作代理店である電通に実施。

2、制作サイドで、放送開始日から逆算し、全体のスケジュールを考慮しつつ、テレビCMの企画コンテ(以下の写真参照)をオリエンテーションの1週間後に複数本提案。

3、企画コンテ提出後にクライアントサイドが検討し、1案に決定。ここからクライアントのリクエストなどを取り入れつつ制作サイドで演出コンテを制作。今回のCMではCM撮影までに4~5回提出。

4、本格的なCM制作に突入。撮影後、PC上で様々な処理を施し、仮編集したものを提出。クライアントサイドで実際に消費者調査をかけて、当初目指していたメッセージがきちんと訴求できているかを検証。

5、消費者調査の結果を踏まえて、カット割りなど細かい表現を修正し、完成。完成したCMをテレビ局に納品(通常、納品期日は、放送開始日から営業日なか4日前が締め切りとなっており、締切日より前に提出することはほぼないという)。

今回のキャンペーンCM用に作成された7つの企画コンテ

CM制作現場の様子

今回のテレビCMの制作を担当した電通のチームでは、最初の企画コンテを提出する際、このキャンペーンの参加促進のためには、消費者がキャップをあけることや、キャップの裏を見ることが重要であると考え、CM映像を「キャップ」を中心に展開することに決定。次に、伝える要素にプライオリティをつけ、それを少しずつ変えた企画コンテを全部で7案作成したという。この提案数はやや多めで、通常のCMでは3~5案程度だとのこと。今回は、伝えたい要素の多さに加え、グローバルの素材を活用して同時期に放送される予定になっていたブランドCM「Share the Love」(動画はこちら)と共通のイメージを持たせ、コカ・コーラブランドのテレビCMであることをより強く効果的に訴求できるとのアイディアから、「Share the Love」と同様に画面分割を利用した。そのほか、演出コンテでは、紙コンテだけでは完成したCMのイメージが掴みにくいと判断し、動画でのコンテも制作したとのこと。

上段:Share the Loveの画像、下段は今回のキャンペーンCMの画像。キャンペーンCMの画面分割は、テンポ良く、気持ちよく感じるように心掛けて制作されており、1秒に30コマあるフレームを1コマ単位の細かいレベルまで調整したという。背景の緑は、実際に撮影したものに、より濃い緑色を足している

CM映像での工夫

実際にテレビで観ると気づかないかもしれないが、背景にたくさんの水滴を表現し、シズル感を出している

このCMは、キャンペーンを紹介することがメインテーマだが、「暑い夏にはよく冷えた美味しいコカ・コーラを飲みたくなる」ということを伝えるのも重要な要素のひとつ。そこでそれらの価値を表現するのにもっともふさわしいシチュエーション設定をし、演出上も細かい工夫を施したという。「出演者や、ペットボトルに汗をかかせる」、「出演者に団扇も持たせる」、「強い日差しを表現するエフェクトを加える」、「バーベキューセットなどの小道具をセットする」などの基本的なテクニックに加え、過去のCM映像のなかで、コカ・コーラを飲むシーンを研究。その結果、背景に空や緑などのアウトドア感を出すと、より暑さが際立つと分析し、今回のCMでは背景に真夏を感じるような緑を採用したという。

映像として、特に注力したのはペットボトルの中から液体が波打ちながら落ちていくシーン。ペットボトルを様々な角度で固定して、一番おいしそうな波打ち方をする角度や流れ落ちるスピードを何度も検証し、ハイスピードカメラで撮影しているとのこと。そのほか、今回のCMに限らず、コカ・コーラのテレビCMでは、液体の色が映像を通すと実物よりも黒く写ってしまう上、液体の動きなどが見えにくくなるという理由から、編集の段階で、実際に手にとって普段飲んでいるコカ・コーラと同じ色を再現できるよう、色調整にも細心の注意を払っているのだという。

実際にペットボトルを使い、工夫した点を語ってくれた電通の和田氏(左)と三浦氏(右)

テレビCMの制作では、1本のCMを制作する際に複数の案が出され、そのなかから採用された1案が何度もブラッシュアップされて映像化される。実際にCM映像が完成した後も消費者調査にかけ、再度細かな調整を行うなど、撮影後にも多くの時間と工程が割かれている。電通の三浦氏によると、基本的に清涼飲料水のCMはだいたい制作に2カ月ほどかかるという。テレビで何気なく見ている15秒や30秒のCMも、これだけの時間と工程を経てクリエイトされているのだ。

完成した10パターンのテレビCM