東京・渋谷のシブヤ大学(特定非営利活動法人)で、参加資格を18歳以上の女性に限定した保健講座「みんなではなそうセックス・ライフ」が開かれた。本講座は、イギリスの地上波民放テレビ局で放送された女性向けセックス教育番組『GIRLS’ GUIDE SEX(ガールズ・ガイド・セックス)』のDVDを視聴しながら、大人の女性同士でセックスに関する悩みや疑問を本音で語り合い、理解を深めようという斬新な企画だ。

『ガールズ・ガイド・セックス』
8月5日発売 9,870円
販売元:ポニーキャニオン

講座で使用されたDVD『ガールズ・ガイド・セックス』は、セックスに関する様々な最新のノウハウを、本物のカップルが実演。特殊カメラを駆使した映像で紹介し、世界各国で物議を醸した問題作で、日本の地上波では間違いなく放送できない内容に驚かされる。一方で、性やセックスの問題点に真面目に取り組んだ教科書的な役割もあり、女性がセックスの知識を得る術が少ない中、貴重な存在になりそう。今回、本誌では、何が飛び出すか想像のつかない期待と不安を抱えながら、女性だけの秘密の講座に密着してみた。 セックスにおける女性の不満とは?

スタッフを含め、男性の立ち入りを厳重に禁止した会場には、20~30代中心の一般女性10数名、会社員や派遣社員、就活中の女性、育児中の主婦など、様々な経歴の女性たちが集まった。出産を経験した者の中には、出産後の精神的ケアや夫との性への関わりに不満を持つなど、一番に男性に対する悩みを抱えて参加した女性が多かった。

ある女性誌のアンケート(対象者:20代中心、約1,000人)では、セックスに「とても満足している」と答えた女性はわずか19%で、満足していない、どちらでもないなど、少しでも不満を持っている女性は4割近くに達している。

本講座でも、女性たちがセックスに持つ不満や疑問点が続出し、グループに分かれての話し合いでは、以下のような本音が飛び出した。

会場となった渋谷の「PINZA Salon」にはゆったりとしたイスが並び、くつろいだ雰囲気で授業が行われた

グループ1

「セックスをしていて、100に例えると80ぐらいは気持ちいいけど、残り20は演技やおまけだと思う。相手を気づかってる部分があるという話しでは、皆も"あるある"って。どこか冷静なところもあって、あまり見られたくないと"電気消して"って言いますよね。そういうのはみんな一緒なんだって安心しました」

グループ2

「フランス人は生涯現役だっていう話を聞いて、日本人の男性も、もうちょっと元気であって欲しいな。それから、ビデオやインターネットの普及が男性に間違ったセックスを教えたんじゃないかって。女性はこういうことをしたら喜ぶって、あまり嬉しくないことをしたがったり…。分からないことは教えてあげるとか、協力しながらお互いに気持ちよくなるのならいいですよね!」

本音トークが繰り広げられる

排卵日じゃなくても、"思わず排卵"で妊娠もアリ!

他のグループからは「不妊治療を行う産婦人科の先生から、オーガズムをいっぱい感じれば、たとえ排卵日じゃなくても、排卵が急に起こる場合があると聞いたことがある。心と体が感じるセックスをしてないと、子宮が動かず、精子を取り込む力がなくなってしまう。心と体が感じるセックスをしてオーガズムをいっぱい感じれば、妊娠もできる」といった意見も。

講師を務めたシブヤ大学恵比寿キャンパス校長・小倉若葉氏は、この件について「排卵は月に一回だけど、実は何かのショックがあると、"思わず排卵"ってすごくよくあること。だから、今日は絶対大丈夫! っていう日に安心していても、100%じゃないことは覚えておいて欲しい。たとえば、すごく忙しい彼氏で、なかなか会える時間がない。結婚してもっと会いたいのに、結婚しようって言ってくれないときは、思い切り気持ちを高めてみて。もしかしたら思わず排卵で、"授かり婚"を狙えるかも(笑)」と、男性にはドキっとする話で会場を沸かせた。また、「戦争や9.11の後にベビーラッシュが起こったのは、みんなが不安や人類の存亡の危機を感じてセックスをしたから。人類の危機にも"思わず排卵"で、つなげていく命がすごくたくさん生まれた」と、人間の性の持つ大切な役割を伝えた。

性行為の意識は、親との関係が影響?

講師を務めた、シブヤ大学恵比寿キャンパスの小倉若葉校長

また、セックスに極端に苦手意識を持つ人や、過敏に反応し悩む人たちに、小倉校長からこんなアドバイスが。「10代や20代の若い頃は、なぜこの行為が好きじゃないのかって悩む人もいると思う。その原因のひとつに"親への罪悪感"がある。"こんなことをしてる…"っていう罪悪感を置いていけないがために、オーガズムを得にくく、性行為そのものが苦手になる」と障害を挙げる一方、「反対に、依存症になる人は、全員ではないけれど、小さいときの親との関係が大きい。小さい頃、親から暴力を振るわれたり、虐待されると、相手との距離が極端に小さくなって、セックスだけが自分を確認できる手段になってしまう。だから、そういうことで少しでも悩んでいたり、考えている人は、過去に対して"振り返り"の作業をして、そのことに気づいて手放していけば効果があると思う。セックスは体を使ったコミュニケーション。楽しんで欲しい」。

約1時間半に渡って行われた講座は、女性だけで過激なトークを交わすというよりも、不安や悩みを共有し、笑いあい、勉強になるものだった。それは、時間の半分を、数人でお互いを紹介し語り合う場に使われたからだろう。初めの緊張からはすぐに打ち解け、飲み物とお菓子を囲みながら「そうそう!」と女性同士で意気投合し、会場は次第に笑い声が飛び交う和やかな雰囲気に。女性にとって、性に関する話題は、友人や知人にもなかなか話しにくいもの。そんな中、人目を気にせず本音を語れたことは、とても良い機会になったのではないだろうか。