8月1日、アニメ映画『サマーウォーズ』が公開初日を迎えた。『サマーウォーズ』は、2006年公開の『時をかける少女』でロングランヒットを記録し、多数の賞を受賞した細田守監督の3年ぶりの新作。インターネット上の仮想都市と、地方都市の旧家に集う大家族というユニークな題材を扱い、アクションやホームコメディ、タイムリミット・サスペンスや恋愛といった要素を織り交ぜたオリジナル作品となっている。

満場の客席をバックに「ギガヒット」を祈願。若い世代の男女を中心に、幅広い年代層が初日の劇場に足を運んだ

■『サマーウォーズ』ストーリー概要
現実と同様の仮想都市OZ(オズ)が作られ、世界の隅々にまで行きわたるようになった「現在」。高校2年生の夏休みを、OZの保守点検のバイトで過ごしていた小磯健二は、憧れの先輩、篠原夏希に誘われて長野の田舎に行くことに。室町時代から続く戦国一家、陣内(じんのうち)家では、90歳の当主、栄を筆頭に多彩な「ご親戚」が顔を揃えていた。栄のために夏希のフィアンセを装うことになった健二。その夜、不審な数列によるメールを受け取った健二は、数学好きの無視が疼き出し、それを解いてしまう。それがOZと現実世界を巻き込んだ大災難の引き金になるとも知らずに……。

『サマーウォーズ』のメインスタッフには、脚本に奥寺佐渡子氏(『学校の怪談』シリーズほか)、キャラクターデザインに貞本義行氏(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』ほか)といった、『時をかける少女』の中核メンバーが再結集。アニメーション制作も前作と同じくマッドハウスが行った。また声の出演には、神木隆之介や桜庭ななみといった人気若手勢のほか、ベテランの富司純子がアニメのアフレコに初挑戦するなど、多彩なキャストが顔を揃えた。また細田監督自身もファンと語る山下達郎が主題歌『僕らの夏の夢』を提供しているのも必聴のポイント。そんな『サマー・ウォーズ』の公開初日、東京・新宿バルト9では、監督とメインキャストによる舞台挨拶が行われた。

■細田守氏(監督)
「皆さんにようやくこの作品をお見せすることができました。3年間ずっとこの映画のためだけにがんばってきたのですが、今ようやく皆さんと一緒に何か大切なものを共有できたかなという気持ちでいっぱいです。制作途中もスタッフやキャスト、興行や宣伝の方、皆さん一緒にこの映画の家族のように楽しく作ってきました。1本の映画を作るのは非常に大変な労力が必要なんですけど、明るい映画なので、笑顔を絶やさずにみんなと作れたのが非常に大きな思い出です。本当に今日はありがとうございます」

■神木隆之介(小磯健二役)
「初日を迎えられて本当にうれしく思っています。いままでの声のお仕事では、録るときはひとりなんですが、今回この映画では出演者全員、30人ぐらいで一気にシーンを録ったんです。それが初めてで、暖かい雰囲気や空気というのが映画にリアルに入っているのかなと思います。ベテランの方々もいらっしゃったので緊張していたのですが、すごく楽しく演じることができました」

ロカルノ国際映画祭に向け「世界中のお客さんの感想を聞きに行きたいと思います」と細田守監督

小磯健二役の神木隆之介。演じた健二は見た目だけでなく、性格も似ているとか

■桜庭ななみ(篠原夏希役)
「3年間監督ふくめスタッフの皆さんが制作に携わってきて、そのなかで夏希という女の子の大切な声をやらせてもらって本当に幸せです。今日みなさんがこうして集まってくれたことで、本当に幸せが倍になりました。家族や故郷が懐かしく感じる作品で、私も見終わったあと実際に鹿児島に電話したりしました。家族の大切さ、感謝しないといけないという気持ちに気づかされる作品だと思います」

■富司純子(陣内栄役)
「90歳のおばあちゃんの声をやらせていただきました。声での参加は初めてなんですが、私にとってはとても難しかったです。映画の場合は自分の口に合わすので慣れていたんですけど、動画に声入れるというのがとても難しくて。みなさんお上手なので、自分だけ浮いているんじゃないかと思って、すごく心配だったのですが、とても優しく指導してくださって、なんとか務められました。こんなすばらしい映画にお誘いいただき、参加できたことをとても幸せに思っております」

篠原夏希役の桜庭ななみ。今年の夏休みは夏希のように実家で家族と過ごしたいとのこと

アフレコは難しかったと語る陣内栄役の富司純子。一方細田監督は「富司さんと映画を一緒に作れるというこんな幸せなことはないです」と絶賛

『サマーウォーズ』は8月13日から、韓国でも100館以上の全国規模で公開されるほか、8月5日からスイスで開催される、ロカルノ国際映画祭のコンペティション部門にも日本のアニメーション作品として初選出されている。細田監督は「コンペティション部門に入ったと聞いて、大変びっくりしました。日本の田舎の家族の物語ですから、それが世界中の皆さんにどう受け止めてもらえるのか、非常に楽しみです」と述べ、初日舞台挨拶を締めくくった。

数学の才能以外はごく平凡な主人公の健二。気弱な彼も、ひと夏の「戦争」に巻き込まれることで、成長していく

夏希(左)と、彼女を応援する陣内家の親戚一同。多数のキャストが顔を揃えての収録は、劇中さながらの賑やかなものになったとか

OZでは健二たちがアバター姿で登場。デジタル空間での息をもつかせぬ展開は、細田監督の『劇場版 デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』を彷彿とさせる

奇しくも『時をかける少女』に続き、劇中の季節も公開時期も夏となった『サマーウォーズ』。健二と夏希の微妙な距離の揺れも気になるところ

ネットを介して世界中がつながるデジタルの絆と、田舎の親戚というアナログな絆。日本のどこでも見られる、ふたつの世間の長所と短所をテンポよく、かつユーモラスに描いた本作は、健二のような少年少女たちはもちろん、栄のような90歳のおばあちゃんまで、老若男女問わず楽しめる良作となっている。『サマーウォーズ』は、新宿バルト9、池袋HUMAXシネマズ、梅田ブルク7ほかにて全国ロードショー中。

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