放送局などの業務向けの音響機器の展示や技術発表・セミナーなどを中心とし、オーディオ・音響に関わる人々が一堂に会するイベント「AES東京コンベンション2009」が7月23日~25日の3日間、東京・科学技術館にて開催された。本レポートでは、多数の音声関連機器メーカー、プロダクションによる機器展示から、業務用途のみならずコンシューマー・ユーザーにとっても有用な各種最新機器を中心に、会場の模様をお伝えしていこう。

2009年7月23日~ 25日までの3日間、武道館にほど近い東京都千代田区の科学技術館にて開催された「AES東京コンベンション2009」。同イベントには機器展示や、産学展示、プロダクト・セミナー、技術発表など多彩なプログラムが用意された

エムアイセブンジャパン

Propellerhead製品の日本代理店としても知られるエムアイセブンジャパンでは、先日取り扱い開始のアナウンスが行われた「TL Audio」の製品展示が行われた。デジタルレコーディング環境に、真空管特有のアナログの温かみを加えることが可能な各種アウトボードには、「Ebony」、「Classic」、「Ivory」の3シリーズをラインナップ。さらにDJやエレクトロ系ミュージシャンからの評価も高い「Fat Track」(Firewireなどのオプションあり)なども目にすることができた。TL Audio製品の国内での発売時期は2009年9月予定とのこと。また同ブース内ではシンタックスジャパンの展示も行われ、日本国内初公開となるUSB2.0接続に対応する高品位オーディオインタフェース「Fireface UC」(2009年3月、フランクフルトミュージックメッセにて発表)の実機を展示。ユーザーの注目を集めていた。

左から「Ebony」、「Classic」と「Ivory」、「Fat Track」。本イベントに合わせて来日したTL Audio社セールス・ディレクターSarah Yule氏は「弊社は、20年の歴史を持つイギリスのオーディオ・メーカーです。有名アーティストの録音にも採用される大型コンソールから、プライベートユースなアウトボードまで幅広製品を取り揃えていますので、真空管ならではの魅力的なサウンドを皆さんもぜひ楽しんでください」とコメントした

高品位オーディオインタフェース「Fireface UC」。同製品の仕様やサウンド、価格などは同社「Fireface400」と同程度になると予想され、発売は今夏になるとのこと

メディア・インテグレーション

多種多様なハードウェアやソフトウェアを取り扱うメディア・インテグレーションのブースでは、日本での発売を間近に控えたMetric HaloのDSP内蔵Firewireオーディオ・インタフェース「ULN-8」などを展示。同製品は、ハードウェアおよびソフトウェアをシームレスに融合した製品。192k対応へと進化したAD/DAコンバーターや高品位なプリアンプをはじめ、さらに強化された専用ミキシングソフトウェア「Metric Halo v5 Mixer」によるルーティング、ミックス、プラグインの内蔵DSP上での処理など、現代のプライベートスタジオでの音楽制作にもベストマッチする製品だ。

現在のオーディオ製品としては珍しいMac専用のオーディオインタフェース「ULN-8」。専用ミキシングソフトウェアでは、サラウンドなどマルチチャンネルへの対応も行われている。また、本体にはAES/EBUのデジタル端子も装備されているため、他のデジタル機器と連携し、D/Aコンバーターなどとして本機を利用することも可能だ

会場にて、未発表のIK MULTIMEDIAのiPhone用アプリ「Groove Maker」の情報をいち早く入手。同社スタッフのiPhoneにインストールされたベータ版アプリからは、ハウス・サウンドを聴くことができた。残念ながら詳細についてはまだお伝えできないとのことだが、音楽好きのiPhoneユーザーの方は、ぜひ近日公開予定の本アプリを楽しみに待っていただきたい

オタリテック

オタリテックのブースでは、近年の需要の高まりを見せている音場補正に対応したバイアンプDSPモニタリング・システム「8250A」や、Genelec Loudspeaker Manager(GLM)コントロール・ネットワークおよびマネージャー・ソフトウェアなどを操作/体験できるコーナーが設けられた。GLMは、制御用のPCと対応スピーカーを接続してコントロールネットワークを形成。専用ソフトウェアとマイクによりステップ・バイ・ステップ方式で音響情報の測定と調整を行い、正確なモニタリング環境を簡単に構築できる。1度測定した設定情報は、スピーカー本体のフラッシュメモリーに保存しておくだけで、制御用のPCを必要とせずスピーカー単体でも音場補正が可能。そのため制作スタジオにとどまらず、最近では野外のでモバイルレコーディングなどでも利用されている要注目の製品シリーズだ。そのほか、ニアフィールド再生も想定されデスクトップ・モニターとしても重宝するコンパクトなアクティブスピーカー「6010A」や、最大5台までの6010Aを接続し手軽にサラウンド環境を構築することができるサブウーファ「5040A」などのカラーバリエーション(ブラック/ホワイト/シルバー)なども展示された。

左:どんな音響環境に対しても妥協しない最良のサウンドを提供してくれるGLMシステムに対応したモニタースピーカー「8250A」。より小さいミキシング空間にも対応するシステム「Genelec Loudspeaker Manager for Small Environments(GLM.SE)」および対応スピーカー「8130A」なども用意されている。
右:コンパクトなアクティブスピーカー「6010A」やサブウーファ「5040A」。システム全体の音量調整をコントロールできる「リモート・ボリュームユニット」が付属し、ユーザーが手元でダイレクトに音量の調節を行える