今回の皆既日食の基本知識を整理
さて、硫黄島の皆既日食の模様をご覧いただく前に、会場の進行に合わせるかたちで、ひとまず日食という現象についておさらいしておこう。
ご存知のとおり、日食は地球と太陽の間に月が入り込み、太陽光が月に遮られることで発生する現象だ。太陽がすっぽり隠れる地域では皆既日食、部分的に隠れる地域では部分日食として観測される。
そして、日食は、普段は観測するのが難しい太陽の活動を観測することができる機会でもある。例えば、太陽の最外層を取り巻くコロナなどは、太陽本体の100万分の1の明るさであり、通常時は本体の明るさが邪魔になって観測することができない。皆既日食はそれを観測/解析できる数少ないチャンスで、以前は太陽風の加速する様子などを解明するために活用されていたという(ただし、最近では、乗鞍コロナ観測所の特殊な望遠鏡や、太陽観測衛星「ひので」、科学衛生「ようこう」などにより常時観測されている)。
また、シャドーバンドと呼ばれる縞模様の影が流れるように見えることがあるとの説明もあった。もっとも、これについては、はっきりとした原因は未だ解明できていないという。
なお、皆既日食で見られる主な像としては3種類存在する。クレータなどの影響で月の周囲に小さなビーズが連なっているように見える「ベイリービーズ」、皆既日食終わり間際などに一ケ所だけ強く光って見える「ダイヤモンドリング」、月の周囲を太陽表面のコロナが囲う「コロナ」の3つだ。
硫黄島の皆既日食ショーがスタート
以上のような、ちょっとした日食知識が紹介された後、いよいよ硫黄島の皆既日食ショーの始まりである。
まずは、当日の硫黄島の様子。雲が見られるものの、前評判どおりの晴天が広がっている。
そして、ついに皆既日食がスタート。部分日食時は太陽観測用フィルターを中継用カメラに付けてその様子が撮影されていたが、皆既日食状態になるとそれを外しての撮影に切り替えられた。
フィルタを外して露光調整が終わると、画面には突然ベイリービースが現れた。
その後、コロナの状態がしばらく続く。
数分後、突然、ダイヤモンドリングが出現。その瞬間、会場は感嘆の声で溢れかえった。なお、ダイヤモンドリングが見られた時間はわずか1、2秒だった。
ダイヤモンドリングが終わると、部分日食の像へと戻る。太陽観測用フィルターを再び着用しての撮影が行われた。
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次回日本で見られる皆既日食は26年後の2035年になる。ただし、太陽よりも月の像が小さく、太陽の中心部がくりぬかれたように見える「金環日食」であれば、3年後の2012年に九州南部から関東、東北北部にかけた地域で観測できるという。次の機会では、肉眼で観測できるよう、青空を期待したい。