コスト削減と運用管理者の負担減を同時に実現する技術として、ここ数年とみに注目を集めている仮想化。同技術を取り巻く市場は今、急速に伸長しており、ベンダー各社の動向には多くの関心が寄せられている。

本誌は、Linuxカーネル標準搭載の仮想化機能「KVM」の開発元を買収したRed Hatに、同社の仮想化製品戦略や今後の予定について話を聞いたので、その模様をお伝えしよう。

2008年9月、Red HatがQumranet買収

レッドハット マーケティング本部 部長 プロダクト・マーケティング・マネージャの中井雅也氏

普及期に入ったと言われる仮想化技術。しかし、実際にその導入率を数字で確かめると、調査会社ごとにばらつきがあるものの、国内で5~10%、米国でも10~20%程度だという。

レッドハット マーケティング本部 部長 プロダクト・マーケティング・マネージャの中井雅也氏は、こうした状況を踏まえたうえで、レッドハットの仮想化戦略のターゲットが「残りの80%」であると説明する。そして、その80%を対象とするからには、「汎用的で、標準的で、普及しやすく、長く使えるものでなかればならない」と続けた。

そのような戦略の下に提供される、レッドハットの仮想化プロダクトが「KVM(Kernel-based Virtual Machine)」である。同プロダクトは、Linuxカーネルに標準で搭載されている仮想化機能。開発元のQumranetをRed Hatが昨年9月に買収し、同社のポートフォリオの1つに加えられることになった。

昨年9月にKVMの開発元を買収

Qumranetの買収成果

中井氏によると、Qumranetは面白い技術/製品を3つほど持っていたという。

1つ目は、上記のKVM。2つ目は「SPICE(Simple Protocol for Independent Computing Environments)」と呼ばれる、仮想デスクトップ環境向けに最適化されたプロトコル。そして、3つ目は両技術を組み合わせて開発された仮想デスクトップ製品「Solid ICE」である。

特にSolid ICEについては「管理機能が優れていた」(中井氏)と言い、Red Hatではその特長を活かした製品の開発にすぐさま着手した。現在、「Red Hat Enterprise Virtualization Manager for Desktop(以下、RHEVMD)」というかたちで仮想デスクトップ環境の管理ツールとして製品化を進めているほか、それをさらに応用し、同様のインタフェースで仮想サーバが管理できる「Red Hat Enterprise Virtualization Manager for Server(以下、RHEVMS)」の開発も始めている。これらに加えて、次期Red Hat Enterprise Linux(RHEL)である「RHEL 5.4」でKVMを統合するほか、KVMをベースにしたハイパーバイザー「Red Hat Enterprise Virtualization Hypervisor(以下、RHEVH)」も開発中だ。

これらは今年9月を目処にリリースされる予定。多くの開発者から支持されるOSベンダーのRed Hatが、ついに仮想化市場の開拓に本腰を入れはじめたかたちだ。