【インタビュー】

ライフネット生命岩瀬副社長が明かす - 「従来の生命保険らしくない」新しいマーケティング手法

2 「ネット生保の持つ可能性は無限大」 - 岩瀬副社長の新たな挑戦

    酒井富士子  [2009/07/09]

    ブログは一定期間を過ぎても消えない。資産として蓄積されていく宝だ

    ――それで、口コミ的なネット上でのブログには積極的にアプローチされてきましたね

    岩瀬「そうですね。ブロガーイベントなども結構実施しました。Web上のブログに書かれたものは、時間がたっても資産として蓄積されていきます。読みたいな、と思ったら、いつでもアクセスして読めるわけですから。その点、雑誌やテレビはそうはいかない。一定期間を過ぎたら、消えてしまいますからね。

    ただ、ブログに書いてもらうにあたっては、ブランディングには随分気を遣いました。第三者に『あそこはいいね』と書いてもらわなければいけないわけです。間違っても、安かろう、悪かろうのイメージではいけないわけです。そこで考えたのが、ロゴマークを中心とするイメージ訴求。ロゴマークは、正直そうで、ちょっとこじゃれた印象もありますよね。生協とか共済とも違い、安いだけではない主張がある。

    保険料の安さをどう伝えるかも苦心しました。その結果、チャレンジしたのが、原価開示です。原価を開示するにあたっては、この先、都合のいいことも悪いこともすべて出し続けよう、という決意も改めて持ったうえで実行しました。これは、ライフネットのマニフェストにも書いてあることですので、大事にしていきたい姿勢であり、そんなことも含めて、多くの人々に共感してもらえるという自信は、持っています」  

    ――岩瀬さんのお話をうかがっていると、せっかく新しい会社を作ったのだから、他の会社がやらないことをどんどんやっていこうという意気込みをひしひしと感じますが、他にはどんな試みをやられましたか?

    岩瀬「ちょうどその開業1周年が終わったタイミングで、携帯電話で申し込みできるモバイル生保を始めました。セミナーや加入者の集いなどでお話していても、特に子育て中の主婦の方などは、落ち着いてパソコン立ち上げてインターネットをできない人がいっぱいいる。そういう意味で我々はできるだけ多くの人に便利な機会をご提案したいと思っていますので、他社に先駆けて、多分世界初だと思うのですが、携帯電話でも資料請求できたり、申込できるといったことを実現しました」

    ――岩瀬さんたちが、新しい生保のマーケティングの形を模索した結果として、「プロが選ぶ生保」として1位に選ばれたという実績も出たのではないですか?

    岩瀬「それは、商品の力があったからだと思いますが、まあ、なんというか本当にうれしかったです。私なども、従来の保険のイメージが強くて、最初の頃は、電話でお客様と対応していても、遠慮してしまって、『入ってください』の一言が怖くて言えなかったんですよ。ドギツイ勧誘になっちゃうじゃないか、今までのような勧誘はしたくないっていう思いが、ためらいにつながっちゃいましたね。でも選ばれてからは、自分たちは間違ってなかったというんですか。やっぱり自信を持てるようになってきたと思います。みんなで顔上げて自信をもって、入ってくださいっていえるようになりましたよ。これは、私自身にとって大きな効果でしたね」

    ゲリラ的に全国を行脚。少人数に語りかける手法が輪を広げた

    ――ネットを中心としたマーケティングについてばかり、うかがいましたが、リアルのセミナーも積極的に実施なさってきましたよね

    岩瀬「われわれは、ゲリラ戦とか、行脚とか言っていますが、この1年、出口とともに、小さい会合でいいので、勉強会とか講習会といったものを全国でずっとやってきたんです。なんとなく理屈で考えると、全国の人を対象に通販をするのに、10人や30人に話したって仕方がない、と思ったりしますよね。そして、実際競合他社はこうしたことをやっていません。でもそうではなくて、やっぱり一人一人の人に知ってもらって共鳴してもらうっていうことが、少しずつ輪として広がっていくと思うし、ちりも積もれば山となるとでもいうのでしょうか。それが、ウェブ上の記事だったり、電車の広告だったり、新聞・雑誌でのパブリシティ記事だったりとクロスメディアして、広がっていくものだと実感しています。ただ、僕らは100万人に向かってでも、目の前の一人に向かってでも、等しく誠実に語りかけること、これは大切にしています。一人一人、目の前のお客様を大事にすることが最終的にはもっと大きな輪が作れるというのは、やはり原点ですね」

    ――ネット生保という新しい業態に対し、これから仕掛けていきたい、挑戦していきたいことは何ですか?

    岩瀬「僕らもわかりやすいからネット生保と言ってますが、改めてそういわれると、少し緊張しますね。最近は、他の生保もどんどんホームページリンクさせて、ホームページで資料請求させたり、……あるいは営業マンがノートパソコンをもっていろいろやったりしてますよね。僕らも『ネット生保』といっても、ネットだけにこだわらず、今後は、個別で対面相談をしたり、場合によっては場所を借りたり、すごく先には支店を出して、といったことだってないとはいえないと思ってるんです。ただ、インターネットは究極の1対1を実現できるインタフェース機能ですから、加入前の問い合わせだけでなく、加入後の問い合わせにだって、24時間フリーで対応できるわけです。それもPCだけでなく、携帯やもしかしたら、もっと先のメディアでも。そう思うと、ネット生保の持つ可能性は無限大です。そんなたくさんの可能性にこれからも挑戦していきたいですね」

    ――今日は貴重はお話をありがとうございました。

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    聞き手 : 酒井富士子氏

    経済ジャーナリスト。回遊舎代表取締役。
    上智大学卒。日経ホーム出版社入社。
    「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長歴任後、リクルート入社。「あるじゃん」[赤すぐ」(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から現職。近著に「20代からはじめる お金が貯まる100の常識」(秀和システム発行)「FPになろう」「定年手続きダンドリスケジュール」(インデックスコミュニケーション)「編集長の情報術」(生活情報センター)。新著に「0円からはじめるつもり貯金」(秀和システム)。二児の母。

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