現在同社がQAWを使って千数百台のPCに対して行っている管理作業を以前のような「人海戦術」でできるかと言えば、答えは「No」だ。同氏は、先述のような"見える"部分のコスト削減効果以外に、「できないことができるようになった」というメリットの大きさを強調する。

「PCの存在チェックについては、QAWから出力したCSV形式のレポートを当社のDBサーバ側に取り込むことで照合作業を行っていますが、やはりPCの情報が一斉に収集できることは、率直に言ってすばらしいことだと実感しています」と同氏が語るように、人員やPCの管理台数が増えたからといって情報システム部門のスタッフを増員する必要がなくなったため、コスト的なメリット以外に、部門長としての管理業務に対する負担の軽減も実現できている模様だ。

Macへの適用と豊富な機能の有効活用が今後の課題

同社には出版事業部門やその他の製作部門などにおいてMacの資産も存在しているが、現在はQAWでの資産管理対象にはなっていないという。これは「ひとりひとりの生産性を上げる」ことを重視した同社の考え方によるものだが、資産管理の観点からはMacが盲点になっているという。

同氏は、「DTPが主用途のMacには重要な情報がない」という考え方にも一定の理解を示しながら、「実際には通常の業務でも頻繁に使用されており、重要な情報もやりとりされている」とし、今後はMacもQAWの資産管理対象として検討したいとのことだ。

また、現在は社内ネットワークに接続されることがない持ち出し専用のモバイルPCや、DMZに接続されたPCもQAWによる管理対象の資産からは除外されている。同氏は製品に対する要望として、「今後はこのようなネットワーク外のPC資産についても統合的に管理できるようにしてほしい」との意見を述べてくれた。

同氏は製品の導入検討時にQND Plusも考慮したとのことだが、最終的にQAWを導入した理由として「情報を"ウォッチする"だけならQND Plusでも十分だが、吸い上げた情報をもとに具体的な"アクションを起こす"ことを踏まえるとQAWという結論に至った」ということを挙げている。ただ、今のところはまだ「アクションを起こす」機能を最大限に使っているとは言えない状況だという。

今後は、「一定のセキュリティポリシーを満たさないPCは自動的にネットワークから除外する」といったルールを自動的に適用できる簡易検疫機能やソフトウェアの対話型インストールなど、QAWが持つ豊富な機能をさらに研究し、より発展的なIT資産管理を実現したいとのことだ。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.9(2009年3月発刊)』 本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。