ソニーを辞めた理由とスピーシーズのビジョン

話は最初に、AIBOの開発メンバーだった春日氏がなぜソニーを辞めたのか、というところに触れたい。AIBOの初代モデルが発売されたのは1999年。もともと「VAIO」のデスクトップAVモデルなどを開発していた春日氏は、発売の1年ほど前から開発中のAIBOに興味を持ちチームに合流、AIBO技術管理室長に就任したと言う。国内分3,000台の予約販売が開始わずか20分で完売となるなど、AIBOは大いに話題となり、ソニーのマスコット的な存在にもなった。2006年に開発・生産中止となるまで何世代ものモデルが発売され、最終的には累計十数万台が販売された。もっとも普及した本格的な家庭用ロボットと言ってよい。

しかし、ソニーではどんな商品でも100万台売れなければ事業として認めらないそうで、最初こそ勢いはあったがその後は尻すぼみの販売状況を見て、これはいずれダメになると早々に感じていたそうだ。そこで、ロボットの仕事を続けていくために独立を決意し、2001年に退社、スピーシーズを設立したという。

スピーシーズのビジョン

スピーシーズのロボットの特徴

スピーシーズが目指すのは「インターネットロボットの技術で世界的な家庭用エンタテインメント企業になること」。春日氏は、AIBOは普通の人なら2週間で飽きてしまう、と語る。それは基本的にプログラムが変わらなかったから。対して、なぜパソコンはこれだけ普及し、人々に楽しまれているか? インターネットにつながることでメールが届き、さまざまな情報を見ることができ、多彩なソフトをダウンロードできる。ロボットも常に最新の情報が来るようにしないと飽きてしまう。そこで、ロボットをインターネットと融合させ、新しいエンターテイメント、新しいメディアとしていきたいと考えた。

スピーシーズのロボットの市場性

格闘技ロボット、掃除ロボット、レスキューロボットなど、さまざまなロボットがあるが、その多くはハードウェア志向で目的指向だと春日氏は語る。それに対し、スピーシーズのロボットはインターネットに接続したソフトウェア指向。オープンな開発APIの提供により、ITとロボットの融合を目指して常に進化していくのが特徴であり、それにより広い市場性を持つことができる、と説いた。春日氏にとってのロボットとは"手足がついた、動くラジオやパソコン"のようなものだそうで、ロボットだから……という固定観念に捉われて難しく考えるよりも、その方が様々な方向性が考えられる、ということのようだ。

セガトイズとの協業により家庭用低価格ロボットの投入を計画している

また、スピーシーズのこれまでのロボットと、新たに開発中の家庭用ロボットも紹介された。初期は大学などを対象とした高価な研究用ロボットを開発し、中には250万円もする世界初の燃料電池搭載ロボットもあったと言う。作るのが大変で実は売りたくないのでそんな値段をつけたそうだが、高橋氏としてはそれでも欲しくてたまらなかったとか。さておき、現行のインターネットロボット「SPC-101C」も30万円という価格で、実際の購入者はやはり研究用途が多かったため、今後はより家庭への普及を目指した低価格機を投入していくとする。開発中のセガトイズとの協業ロボットは「SPC-101C」の30cmよりももっと小型で、価格も5万円前後、高くても10万円以下に抑える予定で、発売は来年初旬を目指しているとのこと。