Windows XPの開発が行われていた当時、CRTディスプレイからLCDパネルへの移行はまだ完全に終わっていなかったため、Windows XPのデフォルトのフォントレンダリング技術はWindows 2000と同様にグレイスケールアンチエイリアスとされた。しかし、OEMベンダ各社ではデフォルトのフォントレンダリング技術を自由に変更できたため、Windows XP SP2の出荷の頃には多くのOEMベンダがClearTypeをデフォルトに設定していた。

Windows Vistaでは、デフォルトがClearTypeに変更された。なお、デフォルトのフォントレンダリング技術は、アプリケーションがフォントレンダリング方法を明示的に宣言していない場合に自動的にその技術が適用されるというだけで、必ず使わなければならないという意味ではない。これは、アプリケーション自身が最適なフォントレンダリング技術を選択するというWindows 95登場当時のテキストAPIの挙動とは矛盾している。これまでの経験則にはそぐわないことは理解しているが、アプリケーションだけでなくWindowsそのものにも明示的にフォントレンダリング技術を指定することが必要と考えている。

アプリケーション自身にフォントレンダリング技術を指定する余地はあるものの、大多数のアプリケーションはOSのデフォルトのフォントレンダリング技術を利用するため、Windows Vistaでのデフォルトのフォントレンダリング技術の変更は安易に決められたものではない。CRTディスプレイからLCDパネルへの移行は急速に進み、残り少ないCRTディスプレイユーザーもWindows XPでのフィードバックを見る限りではClearTypeに好意的であるようだ。また、Windows Vistaでのデフォルトのフォントレンダリング技術をClearTypeに変更するという発表の後に得られたフィードバックでも圧倒的に好意的な意見が多い。

デフォルトがClearTypeになっても、ClearTypeが要求する仕様(一例を挙げると、ピクセルあたり16bitのディスプレイ解像度が必要)をハードウェア的に満たせないなどの状況では、OEMベンダはデフォルトの設定を変更して製品を出荷することができる。また、リモートデスクトップなど一部のアプリケーションでは、パフォーマンスを向上させるためにデフォルトではClearTypeが無効となっている。

Windows 7でのデフォルトのフォントレンダリング技術の変更方法

Windows 7ではデフォルトのフォントレンダリング技術は変更されず、Windows Vistaと同じClearTypeが採用されている。Windows 7でBi-Level Renderingをデフォルトにするには、本稿冒頭で説明した手順で設定を変更する。

「ClearType テキスト チューナー」

ClearTypeの効果のかかり方が気に入らない場合は、コントロールパネルの「デスクトップのカスタマイズ」→「ディスプレイ」→「「ClearType テキストの調整」の順番にクリックすると起動する「ClearType テキスト チューナー」で簡単に調整できる。ClearType テキスト チューナーでは、ウィザード形式でさまざまなClearTypeのサンプルから好みのものを選ぶだけで、ディスプレイのガンマ値、色に対する感性、文字の太さの好みといったさまざまな角度からそのユーザーにとって最適なClearTypeの設定を見つけ出せる。なお、ClearType テキスト チューナーでグレイスケールの調整を行うには、ウィザードの一番最初のページにある「ClearTypeを有効にする」のチェックを外せばいい。

「ClearType テキスト チューナー」