「Twitter」を一躍有名にしたのは、何と言ってもアメリカ合衆国オバマ大統領の選挙戦略だろう。オバマ大統領が選挙時のネット戦略の一環としてTwitter上にアカウントを作り、情報発信と有権者たちとのコミュニケーションを取るためのツールとして活用したことは有名だ。現在、日本の国会議員では、衆議院議員の逢坂誠二氏(民主党)(Twitterアカウント)と橋本岳氏(自由民主党)(Twitterアカウント)の2人がTwitterの活用を始めている。逢坂氏は、6月17日に行なわれた党首討論の様子を45分に渡り、感想を交えながらTwitterでリアルタイム投稿し、「国会議員がTsudaった!(※)」としてユーザーの間で話題になった。また、逢坂氏は「選挙のネット活用は、もっと積極的であるべき」と、Twitterと選挙について総務省に確認をとり、その回答を自身のブログ「逢坂誠二の徒然日記」で公開している。逢坂氏にTwitterを始めとするネットへの関わり方や考え方、「選挙とネット」に対する見解等についてお聞きした。

衆議院議員(民主党) 逢坂誠二氏

※Tsudaる : シンポジウムや講演会の様子をTwitter上で実況中継すること。ITジャーナリストの津田大介氏が、審議会やカンファレンスなどに出席した際に現場での会話の流れを140字に要約して、Twitter のTimeline(TL)上に刻々とポストしていたことからネーミングされた。

Twitterはパソコン通信の経験とiPhoneを手にしたことがきっかけ

逢坂議員には、臓器移植法改正案に対する衆議院の採決が行われた6月19日の夕方、国会と打ち合わせの合間の時間に取材に応じていただいた。

――Twitterを始めたきっかけについて

逢坂 Twitterの存在は2年程前から知ってはいましたが、この3月に"新しいコミュニケーションツール"やトレンド的なものに改めて触れておこうとiPhoneを手にしたことがきっかけでTwitterを始めました。笑われるかも知れませんが、実は30年近くも前のことですが、私はパソコン通信のヘビーユーザーで、当時、通信速度がまだ300 baud(ボー)という時代に、パソ通のチャット機能を使って結婚式の実況中継をしたり、音響カプラ(※)を使って会議中継をしたりしていた。しばらくして今度は、シンポジウムで会場のスクリーンにチャットの様子を映し出してネット上の参加者との共有を行うなど、まさにTwitter的なことをやっていた経験があります。Twitterを使ってみると、以前のパソコン通信時代の感覚が甦って来て、これは(有権者への情報発信ツールとして)"使えるな"と感じました。

※電話回線の音声通話を用いてデータ通信を行なう装置。モデム通信以前に機器に受話器を固定し、音響カプラから出る音でデータを送受信していた。

――Twitterでの党首討論中継について

逢坂 以前(パソ通時代)の感覚を思い出しながらやって行く中で、「党首討論」はいい機会だから中継してみようと思った。今回は、国会の中継を皆が見ているわけではないので、様子を伝えながら自分の意見も述べていくという具合に進めました。どういったやり方がいいのか、まずは手探りしながらの状態であったのと、電話や来客などにも対応しながらでしたので、結構大変でした。

Twitterでの党首討論中継は、議員会館内(各国会議員に割り当てられた事務室がある)で、テレビ中継を観ながら、ノートパソコンからの作業だったそうだ。委員会室の傍聴席は、パソコンの使用についての規制があるということも理由の一つだが、それ以前に傍聴席が20席程しかなく、あぶれた人は後ろで立ち見となるため、メモをとる作業さえままならない状態なのだという。携帯電話に関しても委員会室では使えない"お約束"のようなものがあるそうだ。この件に関しては、「携帯電話としてではなく、スケジュール機能を使うにも遊んでいるように見られる傾向がある。セキュリティ上の問題等をクリアにしたうえではあるが、本会議場でコンピュータが使えるようにしていかないと、もう時代遅れだと感じている」と逢坂議員は述べている。

――フォロワーからの反応は?

逢坂 概して良い反応が来て、内容も真面目なコメントが多く、こちらも学ぶことが多かった。臓器移植法案の採決についても反応が高く、多くの意見や感想が寄せられています。「こんなことをやっている国会議員は暇だ」「国会議員の仕事じゃない」といったマイナスの反応もあったが、ごく僅かでした。やはり、秘書や書記官が機械的に行うのでは意味がなくて、国会議員自身が"呟く"ことが重要だと思っている。Twitterは、単なる独り言の呟きの場所で、暇つぶし的な見方をしている人もいると思いますが、今回のような使い方をしたことで、その可能性を感じてくれた人はいると思います。

議員会館の事務所から、(テレビ中継を見ながら)党首討論の様子と感想をTwitterで45分に渡り伝えていった。臓器移植法案など逢坂氏のポストに対して、Twitterユーザーからの@seiji_ohsaka の付いたRTやポスト返しも多数あったという

――Twitterをどう捉えている?

逢坂 相当強力なツールだと思っている。Twitterには基本的なルールがないが、そこで渦が起こった時には(インパクトが)大きい。その渦が、さらには大きなうねりになっていくものだと感じている。ネット上のコミュニケーションツールは、"単純であること"と"簡便であること"が大切だと思っているが、Twitterにはそれが備わっている。また、発信する情報には、命の短いもの、あるいは中期、長期とそれぞれ賞味期限があって、発信の場所を間違えないこと、つまりタイミングが大切だと思っている。有権者向けの情報発信ツールとしては、ホームページとブログ、mixi、Twitterを活用しているが、瞬発力の必要な情報にはTwitterは適していると考えています。例えば、リアルタイムで会議の感想を書き綴り、これを後でタイムライン(TL)に沿って整理できることもできる。まずは賞味期限が短い情報を旬の内に発信しておいて、後から形を整えてブログに掲載するといった利用もできるだろう。

逢坂 情報量は多ければ多いほど、ひとつの情報の存在価値が低くなっていくもの。Twitterは簡単、簡便、情報量が少ないという特徴があって、これが武器になる。大量の情報をアップロードしても読まれないが、(簡潔なコメントを出すことで)世間の注目を浴びるということもできる。武器の良さを利用しない手はない。

――逢坂議員をフォローしていたユーザーたちからは、「自民党側の議員も入って呟きあってほしい」といったいくつかのコメントを見かけましたが、どうですか?

逢坂 まさにそう思います。複数の政治家が入って、最初は野次のレベルでもいいと思っている。例えば、将来的に地デジをやるなら、画面の横にデータ放送を付けて、Twitterチャットみたいなものが流れていたら有権者も興味を持つのではないか。

――今後も頻繁に(国会中継を)やって行く予定なのか?

逢坂 その時のスケジュールなどにもよるが、できる限りはやりたいと考えている。

――他に活用しているSNSやネット上の情報発信ツールは?

逢坂 3年くらい前からmixiを活用している。クローズドでコミュニティ的な中では、Webやブログと比較して、ある程度の(情報の出し方に対する)安全確認をしながら、あるいは読み手の温度を読み取りながらの情報発信ができると感じている。マイミクが上限の1,000人を超えてしまったので、現在公認アカウントを申請中です。以前、音声ブログ"ケロログ"をやっていたが、mixiで動画配信が始まった時に、そちらで様子を見る形で移行しました。ただし、最近は携帯電話で見ている方が増えて、動画は"重くなる"とあまり評判が良くないので、いろいろと様子を見ています。 いろいろなことをやりながら感じているのは"情報発信をすればするほど情報は入ってくる"ということです。

――後編へつづく(6月30日掲載)

プロフィール:逢坂誠二 民主党衆議院議員

1983年 北海道大学薬学部卒業後、ニセコ町役場勤務。総務課財政係長などを経て、1994年11月から2005年8月までニセコ町長(3期)を務める。2005年9月から衆議院議員。次期総選挙は、北海道8区(渡島桧山管内)から出馬。

参考資料:2006年の民主党の解禁案PDF/ 選挙制度改革の取り組み/ 総務省:選挙や政治資金について/ 東京都選挙管理委員/ 議会ストリーミングサイト(衆議院TV)参議院TV