韓国政府の知識経済部傘下の技術標準院は6月22日、リチウムイオン電池に独自規制を課すと発表した。しかしこの内容が、日本メーカーを除外する貿易障壁だとして日本政府が反発。あわや国際問題に発展かとの憂慮もなされた。韓国政府はその後すぐに貿易障壁ではないことを述べ落ち着いたもようだが、両政府の摩擦の種となりかけた規制とはどんなものだろうか。

安全確保で規制強化

22日に同院が発表した規制とは「品質経営および工産品安全管理法」に基づいて、韓国内で販売するリチウムイオン電池の認証を行うというものだ。これにより、国内外のメーカーなどは韓国の特定機関で安全認証を受けなければ販売ができなくなる。施行は7月からで、2009年12月末まで猶予期間が与えられる。

こうした規制を設ける理由は、リチウムイオン電池の過熱事故などが相次ぐ中、安全性を高めることにある。そのため、認証試験は加熱関連の項目を、韓国内の4機関(韓国化学試験研究院、韓国電気電子試験研究院、韓国産業技術試験院、韓国電気研究院)で実施することとなっている。

詳しい安全基準の内容は、高温試験において90℃の状態でも発火および爆発がなければならないなどで、国際基準よりもレベルの高いものもある。軍事用や研究設備用など、一般的に販売される以外の製品は、これに含まれない。また、検査に合格した製品には安全マークと安全深刻番号など、安全に関する表示をする義務もある。

規制に日本が大反発

ところが、日本政府がこれに物申した。

同規定では、認証機関はいずれも韓国の機関となっており、日本メーカーが認証を受けるのに手間暇がかかって販売時期に遅れを取るなど、障害が生じるというのだ。

しかも韓国は米国に対しては2009年10月から、同国内の認証機関からの承認を受ければ輸入を許可する方針も打ち出している。日本に対しては、同様の方針はない状態だ。

こうした規制は、あらゆる国に平等な通商条件を与えるWTO(世界貿易機関)のルールにも反しているとして、日本側はWTO会合の席上で懸念を表明する意向まで表明し、あわや国際問題に発展するかとの憂慮が飛び交った。

政府がこれほど熱心に対応するのは、リチウムイオン電池は日本メーカーのお家芸で世界シェアも高いため。不況のため世界で保護貿易の動きが広まる中、韓国の新たな規制を貿易障壁とみる見方も出ている。

日本での認証も承認

これに対し韓国政府は23日、日本政府による貿易障壁説を払しょくする方針を打ち出したもようだ。

韓国の各報道によると、韓国政府は23日、韓国側からの指定を受けさえすれば日本の機関であっても安全認証テストをできることとを明らかにした。これは日本だけでなく、他国に対しても適用となる。

米国の認証機関に認証の権利を与えたことに対しては、米韓FTA交渉が現在進められていることから、あらかじめ行ったものと説明した。

これで完全に解決したかどうかは、いまのところ明確ではないが、一段落はしたようだ。輸出入問題は国家間の重要な問題であり、日韓両国は双方にとって重要な貿易国。解決に向けた、今後の両国の歩み寄りに期待したい。