ノークリサーチが6月9日に公表した「08/09年度 PCサーバ国内出荷調査報告」によると、2008年度のx86サーバの出荷台数は、前年度比2.7%減の53万5,487台となり、2002年度以来の6年ぶりのマイナス成長となった。製造業や流通、金融関係などの民需の冷え込みが要因だが、サーバの中核となるCPUの革新は続いている。今回は、x86サーバ向けプロセッサの動向とその性能を振り返ってみたい。

大幅なコスト削減が可能となったNehalem世代Xeon

Intelのx86サーバ向けプロセッサ「Xeon」には、エントリ向けとして1-wayサーバ用「Xeon 3000番台」、HPCサーバ/ワークステーション向け2-wayサーバ用「Xeon 5500番台」、4~32-wayのエンタープライズサーバ向け「Xeon 7000番台」の3つのシリーズが用意されている。

左が「Pentium Pro」のチップ、中央が「Xeon 5500番台(Nehalem-EP)」の300mmウェハ、右が「Xeon 5500番台」のチップ

「Xeon 5500番台」のヒートスプレッダを外したところ

特に5000番台と3000番台は、2009年3月末に発表した「Xeon 5500番台」「Xeon 3000番台」により、アーキテクチャをNehalemベースのものに更新、さまざまな機能の向上が図られた。特にIntelは、5500番台を重視しており、搭載システムを活用することにより、1PFLOPSを実現するシステムが可能になることや、製造業分野でのシミュレーションに活用することで、従来Xeon(5300番台)に比べ、製品開発期間の58日の短縮ならびに試作コストの48%削減などができることを紹介している。

IT予算の用途(左)とXeonプロセッサの出荷台数実績(右)

ちなみに、Intelが自社のデータセンタなどでの実証により得たデータでは、4年前の2005年に主流だったシングルコアのXeonプロセッサ搭載サーバを、Xeon 5500番台搭載サーバに置き換えた場合、サーバ台数は1/9に減少、フロア面積は89%減、年間エネルギーコストは90%減となり、年間の運用コストは8万3,000ドル、ソフトウェア関連コスト14万7,000ドル削減できたとしており、サーバの更新で発生する投資コストは約8カ月で回収可能であるとしている。

2005年のXeonサーバとの比較

RISCプロセッサ搭載サーバとの比較(右はIntelの上級副社長兼デジタル・エンタープライズ事業本部長のパット・ゲルシンガー氏)

年内にも8コア搭載CPUが登場予定

Xeon 5500番台を構成しているNehalemのアーキテクチャの観点から見た場合でも、相応の性能向上を見て取れる。既報のとおり、同アーキテクチャは、45nmプロセスのHigh-K/メタルゲートを採用し、(5500番台=Nehalem-EPは)クアッドコアに対応する。状況に応じてプロセッサの動作周波数を変化させる「Turbo Boost Technology」や、「Hyper-Threading Technology」、仮想化技術である「Intel Virtualization Technology(VT)」などを搭載、これらにより、"処理性能""消費電力""仮想化"といった要求に柔軟に応えることが可能となった。

特に、HTによるコア数の擬似的な増加とVTを組み合わせると、2CPU構成のサーバでは、(物理的な)4コア×2(HT)×2(CPU)で16スレッドの稼働が可能となることから、シングルコアのXeon世代のサーバと比較するとサーバ台数の面では、仮想化を活用することで性能を維持しつつ削減することが可能となる。ちなみに、シングルコアXeon(3.8GHz)搭載サーバをXeon X5570(2.93GHz)搭載サーバに置き換えた時の性能比はシングルコアXeonサーバを1とした時、X5570搭載サーバは8.7、消費電力は382Wから315Wに削減、データセンタのエネルギー効率(PUE:Power Usage Effectiveness)を同一(1.6PUE)ちすることを前提とした場合のデータセンタの電力消費量は1000kWから825kWへと18%削減されるという。

シングルコアXeonサーバの更新による性能向上の割合

ちなみにIntelは、2009年5月26日にXeon 7400番台の後継となる「Nehalem-EX(開発コードネーム)」の概要を公開している。1パッケージで8コアと24MBの共有L3キャッシュを搭載。HTにより16スレッドの稼働を実現する。Xeon 5500番台などに搭載した機能に加え、メモリなどのハードウェアシステムのエラーを検出して回復させる「MCA(Machine Check Architecture)」や、「Itanium」と同様の「RAS(reliability/availability/serviceability)」機能も提供される予定となっている。2009年下期に製造を開始、搭載システムは2010年には出荷される見込みとなっているほか、2009年末にはNehalemアーキテクチャを32nmプロセスにシュリンクした「Westmere(開発コードネーム)」として6コア対応サーバ向けCPU「Westmere-EP」を登場させることなどを計画している。

8コアを搭載し最大16スレッドを実現するハイエンドXeon「Nehalem-EX(開発コードネーム)」の概要

なお、Intelでは、「企業の競争力強化、状況変化への対応力向上が求められる今こそ、ITへの投資を新規システムやシステムの再構築に割り振る時」としており、そうした補助の一環としてROI試算ツールを2つ用意、Webサイト上で公開している。1つはXeon プロセッサ搭載サーバを導入した場合における投資利益率を試算するツール「Intel Xeon Processor-based Server Refresh Savings Estimator」、もう1つは、Xeonプロセッサ搭載サーバで仮想化ソリューションを導入した場合における投資利益率を試算するツール「Energy Estimator with Virtualization」。いずれもIntelのXeon紹介サイトでチェックすることができる。

ROI 試算ツール「Energy Estimator with Virtualization」の見た目