【レポート】
メディア・コンテンツビジネスの展覧会「IMC Tokyo 2009」が幕張メッセで開催された。ここでは、テッド・シュロビッツ氏による「RED Digital Cinema - 4Kは、はじまりにすぎない。」というカメラシステム「RED ONE」に関する基調講演が行われた。シュロビッツ氏が熱く語ったREDの世界とその未来を詳細レポートする。
こちらの記事でお伝えしているように、今、RED Digital Cinema社のRED ONEは、世界中の映像クリエーターたちから注目されている4Kデジタルカメラだ。この基調講演でシュロビッツ氏は、RED ONEカメラの概要や、これらカメラで撮影された映画・テレビ番組・CMなどのデモ映像を紹介。そして2007年に登場したRED ONEのラインナップ拡充版として展開予定のEPICやSCARLETなど超高解像度カメラ、REDレンズ、デジタルシネマ用のRED RAY 4K再生機などにも触れた。
EPICやSCARLETの話の前に、RED ONEについて触れよう。シュロビッツ氏はRED ONEを「ビデオカメラではなく、映画が撮れるモーションピクチャーのカメラ。ハイエンドのデジタルスチールカメラで動画ファイルを作成するもの」と定義している。スチール撮影でも、映画の撮影でも、超高解像度の画像・動画を撮影し、欲しいデータをすぐに切り出すことができる。また、PLマウントの採用により、既存のニコン・キヤノンのレンズを取り付けることができるので、これまでの映画の映り方と同じく、フィルムカメラで撮影したような映像クオリティーを確保できるというメリットもある。映像業界において破格の4Kデジタルカメラとして話題を席巻したRED ONEは、デジタルシネマ撮影の有力なアイテムとして定着した。
RED ONEからさらに進化を遂げ、DSMC(Digitla Stills and Motion Camera)というコンセプトのもとに開発されたものがEPICやSCARLET。SCARLETシリーズは3K-6Kで、EPICシリーズは5K-28Kでラインナップされる予定だ。シュロビッツ氏は、熱心に聞き入る日本人ユーザーにこんなジョークで両機種を例えた。「SCARLETのシステムは、ステロイド剤を使ったRED ONEと思っていい。そしてEPICは(メジャーリーガーの)バリー・ボンズが使うような超違法なステロイド剤を使用し増強したRED ONEと言っていい」。両機種の登場時期については「3K・5KのSCARLETと5KのEPICは、今年秋のタイミングで、9KのEPICは来年春に出荷できるよう鋭意開発中だ」と伝えた。
EPICとSCARLETは、コンパクトなボディであることも注目されている。シュロビッツ氏は、「ある日は映画、ある日はスチールというように、どちらの撮影スタイルにも自在に構成を変えながら対応できるところがEPICとSCARLETの長所。両機種ともサイズ的には似ているが、機能が大きく異なる」と語った。ちなみに価格はSCARLET 5Kが7,000ドル、EPIC 5Kが2万8,000ドルと、同じ5Kデジタルカメラとしてもこれだけの差が出る。さらに両機種の販売については、RED ONEユーザーへのインセンティブ制度「下取りプログラム」も設ける予定で、RED ONEをRED Digital Cinema社へ送り返すことによってユーザーは約1万ドルでEPICシリーズへアップグレードできるという。
シュロビッツ氏はREDで映像撮影した際の画像データのコンパクトさについてもアピールした。「アナログのフィルムサイズで1000フィートにもおよぶ映像データも、REDでは16GBのコンパクトフラッシュに収めることができる。データはREDCORDフォーマットで記録されて、16GBのCFで4K非圧縮データが約1秒分、圧縮すれば約10分の4Kデータを記録することができる。しかもメディアは再利用可能だ」という。
一方で、再生・編集システムについての進化も目覚しい。ドイツの「DVS clipstar」という製品についてもシュロビッツ氏は触れた。Clipsterは、非圧縮4KサイズのRAWファイル(R3Dファイル)に対応し、デスクトップPCほどの規模のコンピュータで、リアルタイムに再生・編集、そして出力できる映像編集システム。REDのRAWファイルを再生するためには、特別なコンピュータでレンダリングし、リアルな尺時間のおよそ30倍の時間を要していたが、このClipsterは、レンダリングなどを一切必要とせず、リアルタイムで4K素材を4Kのイメージそのままに再生し加工・編集・出力することができるという。
このClipsterと同様のシステムをREDは開発しているという。その名は「RED rocket」。これは、『Adobe Premiere Pro』や『Final Cut Pro』などのPC向けノンリニアビデオ編集ソフトなどを用いて、4K素材をレンダリングなしで、非常のコスト効果の高いかたちで使えるようにするアプリケーションだという。
日本でもごく少数だが、劇場公開用映画を自宅にあるPCで編集して、マスターを制作するというワークフローで作られた映像コンテンツがある。近い将来、こうしたアプリケーションの普及によって、劇場用映画と同クオリティーの映像作品を、ポストプロダクションの力を借りずに、個人のデスクトップPCでフィニッシュさせるというスタイルが主流となるかもしれない。
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REDが創造する28K EPICのひとつの形、「EPIC 617 PRO」。ボディ上部に設けられた突起物はアンテナで、これにより100フィート離れたところからのリモートコントロールも可能にする。価格は5万3,000ドル |
REDが9Kの次に見据えているのは28Kだ。シュロビッツ氏は、28Kまでのサイズの変遷を「最初が3分の2インチ。これがREDのスタートポイントです。RED ONE 4Kデジタルカメラは、35mmフィルムシネマと同クオリティーで撮影ができます。そして645が中判(ブローニ)カメラの大きさで、ビスタビジョン映像と同クオリティー。そして、IMAXフィルムのサイズを超えるのが28KのEPIC 617 PRO。これは、200メガを超えるサイズの画像を動画として収めることができるカメラということになる」と語った。
IMAXフィルム版のサイズを超えるEPIC 28Kは、コスト・パフォーマンスに優れた最新のIMAXデジタル技術と競合する可能性は大いにある。こうしたREDの目覚しい技術革新は、撮影する・編集する・出力するという3つの面で、プロ・アマ問わず、映像クリエーターたちの圧倒的な支持を受けるであろうという期待感に満ち溢れている。今回の講演から、REDは映像の世界において、無限の可能性を持っていると感じられた。しかも、今回紹介した様々な技術が映像世界のスタンダードとなるのは、「未来の話」ではなく、もう1年以内の事なのだ。
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