学習する検索エンジンと「ベストマッチ」

筆者からみたBingの特徴は「スピード感」「正確性」の2つにあると思うが、それを端的に表しているといえるのがここで紹介する機能だ。Googleなどの検索エンジンでは、特定のキーワードの組み合わせで該当するページが1つしか出現しない状況が存在する(そうしたキーワードの組み合わせを探す遊びも存在する)。だがGoogleの場合とは異なり、Bingではあるキーワードに対して特定の1つの結果のみを返答する「ベストマッチ」と呼ばれる組み合わせがある。例えば「UPS」というキーワードは、宅配サービス大手の"UPS"を指し示す。その場合、Quick Tabsの内容もUPSに特化したものとなり、再検索を行わない限りはUPSを対象とした結果のみが表示される。賛否両論あると思うが、検索を試みられることの多い特定のキーワードに対して特定の返答を行うのは、前述の"スピード感"や"正確性"を重視した結果ともいえる。

キーワードによっては、ベストマッチと呼ばれる特定の検索結果1つのみが返されるものが存在する。例えば「UPS」と打ち込むと配送サービスの"UPS"のみが該当し、Quick Tabsもトラッキングや料金検索など、UPSサービスに関連付けられたもののみが出現する。もちろん、"UPS"以外の意味の検索結果を表示することも可能だ

このほかに興味深いのが、1つのキーワードが複数の全く異なる意味を持つ場合だ。例えば「turkey」というキーワードには「ターキー(七面鳥)」「トルコ(国)」という2つの主要な使い方がある(このほかにも、ボウリングの"ターキー"や"愚か者"を意味する俗語などの意味もある)。このキーワードを入力したときの結果はカオスだ。2つの異なる"turkey"に関連したページが交互交互に並んでいる。Quick Tabsはさらにカオスになっており、「Images」を選ぶと七面鳥の画像が所狭しと並び、「Facts」や「Map」といったトルコという国を連想するものもあれば、「Recipes (レシピ)」という明らかに"七面鳥料理"に関連したタブもある。前述のベストマッチとは真逆の状態だ。

検索結果にカーソルを合わせると、Quick Linksと呼ばれる検索結果に対応した関連検索が行えるリンクが出現する。「turkey」のように複数の意味(「鳥の"ターキー"」と「トルコの"ターキー"」)を持つキーワードの場合、より素早く目的の検索結果に到達できる。出現する項目の内容は検索結果によって変化する

Microsoftによれば、こうした検索結果はユーザーの入力した検索クエリーの動向を反映したものだという。例えばQuick Tabsの場合、ユーザーが多く検索した情報や組み合わせほどタブの上位に出現する傾向があるという。「turkey」の場合は旅行計画や調査などでトルコ関連の検索を行うユーザーがいる一方で、感謝祭でおなじみの七面鳥料理のレシピを研究するユーザーも同程度いることになる。ベストマッチとならない理由は、そうした検索動向の差にあるといえるだろう。また「hyundai sonata」というキーワードを入力すると、他の車種ではあまりQuick Tabsに出現しない「Problems」というタブが現れる。これは、ユーザーが同車種に関する検索では、特にそうした話題を気にしていることが多いという事実を意味する。Bingはユーザーの利用動向を反映し、なるべくスピーディに目的に近いデータを返答するという、学習機能を持った検索エンジンだといえるだろう。

Quick Tabで「Reference」を選択すると、例えばWikipediaで検索した内容をそのままBing上に表示することも可能。あくまで目的の検索に素早くたどりつくための仕組みだ

Quick Tabsは手動で操作されているものではなく、機械的な統計でユーザーの検索頻度の高いものが上位に出現し、その順位や項目内容に影響を及ぼす。例えば「hyundai sonata」とキーワードを入力すると、他の車種ではあまり出現しない「Problems」という項目が上位に現れる。これは同様の検索を行っているユーザーが多いことを意味する