【レビュー】
『スター・トレック』は、1966年のTV版放映開始から、40年以上の長きに渡り世界中で熱狂的ファンを増やしてきた長寿シリーズ。映画はこれまでに6本製作されているが、本作は過去作の延長線上にあるストーリーではなく、ジーン・ロッデンベリーの原案を再構築した驚異のスペース・エンタテインメントである。『LOST』(2004~)や『M:i:III』(2006)で知られる稀代のヒットメーカー、J.J.エイブラムス監督が目指したのは、予備知識が全くなくても楽しめる『スター・トレック』。キャスト、監督共に一新し、最高傑作と謳われた『007/カジノ・ロワイヤル』のように、新シリーズの始まりを予感させる内容となっている。本稿ではキャスト勢に的を絞り、鑑賞前に知っておくとより本編を楽しめるポイントをご紹介する。
物語は、連邦艦隊士官の父を持つジェームズ・T・カーク(クリス・パイン)の誕生からスタート。まるでアトラクションに乗っているかのような臨場感溢れる戦闘シーンとカークを産もうと力む母の姿が交互に映し出される。ILMによる最新VFXを駆使したスペクタクル映像は圧巻で、いきなりの手に汗握る展開に引き込まれること請け合いだ。カークの母を演じるのは、全米で大ヒット中の医療ドラマ『Dr.HOUSE/ドクター・ハウス』にレギュラー出演中のジェニファー・モリソン。セクシーなTVスターとして注目の彼女をインパクト大のオイシイ役に抜擢するとは、さすがTVと映画界の両方を知り尽くしたJ.J.エイブラムス監督だ。
波乱含みの誕生を経て、米アイオワでやんちゃ三昧の日々を送るカークの青春時代もしっかりフォロー。ビースティ・ボーイズ の名曲『サボタージュ』をバックに車を乗り回すシーンは特に印象的だ。一方、スポック(ザッカリー・クイント)の住むバルカン星では、地球人の母(ウィノナ・ライダー)を持ったがためにイジメを受ける彼の幼少期が描かれる。ウィノナ・ライダーの老けっぷりに目を奪われるが、深く考えていてはサクサク進む物語に遅れを取ってしまう。ここは特殊メイクだと信じて、やり過ごしたい……。
大人になってもナンパとケンカに明け暮れ、反抗期真っ只中のカーク青年だったが、800名の命を救った亡き父の偉業を知るクリストファー・パイク大佐(ブルース・グリーンウッド)に諭され、連邦艦隊へ入ることを決意する。訓練の場で初めて顔を合わせる破天荒なカークと冷静沈着なスポック。まさに水と油の2人は衝突を繰り返しながらも非常事態を乗り越え、深い信頼関係で結ばれてゆく。その過程は丁寧に描かれ、見応えのある人間ドラマとなっている。本作の見せ場は、ド派手なアクション・シーンだけではないのだ。
キャスティング重視を公言するJ.J.エイブラムスだけに、惑星連邦軍戦艦・USSエンタープライズの他のクルーたちも個性派揃い。悪役ネロには、タトゥーと特殊メイクで別人に変身したエリック・バナ、機関主任モンゴメリー・"スコッティ"・スコット(オリジナル版『宇宙大作戦』では、チャーリー)には、サイモン・ペッグ(『ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン!』)と映画通納得のラインナップだ。おまけに、ウフーラ(オリジナル版では、ウーラ)役のゾーイ・サルダナは、ランジェリー姿を披露。スタイル抜群のクール・ビューティが果敢に挑むお色気シーンは必見だ。
本作はオリジナルを再構築したものと冒頭で語ったが、往年のファンも満足出来るツボもちゃんと盛り込まれている。メイン・キャラクターのユニフォームの色・デザインはオリジナルを踏襲。建造中のUSSエンタープライズやオリジナル版のスポック役レナード・ニモイ(御年78歳!)の登場も、トレッキーにはたまらないサービス・カットとなっているはずだ。
あまりの前評判の高さに、2011年夏の公開を目標とした続編の計画が早くも水面下で進行していると噂の本作。引き続き、エイブラムスがメガホンを取るかどうかはまだ決まっていないようだが、プロデューサーを務めることは内定しているという。ちなみに、今年4月リリースされ、ビルボード・シングル・チャートの9位に初登場したエミネムの新曲『We Made You』のPVは、『スター・トレック』のパロディが含まれていることでも話題で、巷の『スター・トレック』熱は高まるばかりだ。映画やTVといった枠に留まらず、現代のポップ・カルチャーを語る上で欠かせない『スター・トレック』の世界に触れたことのない方は、ぜひこの機会にその魅力を体感して欲しい。
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