【レビュー】

BOOK REVIEW - AIRアプリ作成の敷居を下げる読んで楽しい入門書

    竹添直樹  [2009/05/20]

    本書はAdobeが提供するRIAプラットフォーム「AIR」を扱った書籍である。2008年から2009年にかけて『Web Designing』誌に連載された「AIR World by KAYAC」に大幅な加筆/修正を加えたもので、最新のAIR 1.5に対応した内容となっている。

    本書の構成は以下の通りだ。

    • Chapter 1 AIRアプリの作り方、キホン編
    • Chapter 2 AIRアイデアレシピ編
    • Chapter 3 知りたかったアレコレ、事例編

    また、付録として著名な外部ライブラリの利用方法が解説されている。

    "レシピブック"の名前の通り、Flashを使ったAIRアプリケーションのレシピが数多く掲載されている

    AIR関連の書籍はすでに数多く出版されているが、Flex Builderを用いたプログラマ向けの書籍が多かった。本書の特徴は、開発に必要な情報は必要最低限に留め、「AIRではこんなことができる」ということに焦点をあてている点だろう。本書はFlashでの開発を前提としていることもあり、Flashユーザの方にもおすすめできる。

    基礎知識はポイントを押さえて最低限に

    Chapter 1ではFlashでのAIRアプリケーションの開発手順や、ActionScript3の基礎知識が説明されている。ただし、ActionScript3については基本構文のみに絞るなど、ポイントを押さえた必要最低限の記述に抑えられている。

    重要なAPIについてはChapter 2のレシピや、コラムで簡単に紹介されているが、実際にAIRアプリケーションを開発する際には、別途技術的な内容に特化した書籍やAPIリファレンスなどを参照する必要があるだろう。

    レシピとあわせて紹介されているさまざまなAIRアプリ

    Chapter 2ではさまざまなAIRアプリケーション開発のレシピが紹介されている。ファイルアクセスやドラッグ&ドロップ、SQLiteやタスクトレイの利用など、どれもAIRの特徴を活かしたもので、紹介されているレシピから自分なりのアプリケーションのアイデアを広げることができる内容になっている。

    誌面ではソースコードの重要な部分のみ抜粋して掲載されているが、書籍のWebサイトからサンプルファイルをダウンロードすることもできるので、気になるレシピがあればサンプルファイルをチェックしてみるといいだろう。

    さらに、レシピに関連したAIRアプリケーションがあわせて紹介されているのがおもしろい。掲載されているスクリーンショットを見るだけでもどのようなアプリケーションを作ることができるのかがわかるし、紹介されているアプリケーションはどれも完成度の高いものばかりなので、実際に動かしてみることでAIRのポテンシャルを感じることができるはずだ。

    ユーザ視点でも参考になるケーススタディも充実

    Chapter 3ではさまざまなAIRアプリケーションのケーススタディがインタビューとともに紹介されている。

    AIRは比較的新しい技術だが、すでに多くの利用事例があることがわかる。また、本書で紹介されている事例はいずれもAIRの特徴を活かしたものであり、インタビューの中ではAIRを採用した理由やビジネスモデルなどについても触れられている。とりわけBtoCのサービスではやはりマルチプラットフォームという点がAIRの大きなメリットとなっているようだが、それ以外にも性能面やデザイン面でのメリットが挙げられている事例もある。新しい技術の採用にはリスクも伴うが、実際にAIRを採用している事例では、リスクを上回るメリットがあると判断されたわけだ。

    これらの内容は制作サイドのみならずユーザサイドの視点でも参考になるのではないだろうか。

    AIRのおもしろさに気づかせてくれる一冊

    極論を言えば、本書はAIR開発者向けの書籍ではない。プログラマのための技術的な情報ではなく、AIRの採用を検討している企画担当者であったり、AIRに興味はあるがどんなアプリケーションを作ったらいいかで悩んでいる開発者にヒントを与えてくれるものだ。また、まったくAIRに関する知識がない状態からAIRで何ができるのか? を知るために読んでもいいだろう。RIA技術には選択肢が多いが、本書はAIRならではのメリットを活かしたアプリケーションを企画/開発するための手助けになるはずだ。

    また、本書で紹介されているアプリケーションや事例はいずれも完成度が高く、デザイン性や機能性にも優れたアプリケーションばかりだ。これらのアプリケーションのスクリーンショットを見ているだけでもAIRのおもしろさを感じることができるだろう。すでにAIRを利用している開発者/ユーザも本書を通して新たなアイデアを得ることができるのではないだろうか。

    以上のように、本書はこれまでのAIR関連の書籍にはない価値を持っている。AIRに興味のあるすべての人に読んでほしい一冊だ。

    Flashで作るAIRアプリケーションレシピブック

    面白法人カヤック 著
    毎日コミュニケーションズ
    2009年04月22日 発行
    B5変型判 / 224ページ
    ISBN978-4-8399-3167-4
    定価 2,480円 + 税
    出版社から: AIRは「ぱっと思いついたものをとにかく作ってみる」ことに非常に適した環境です。スケッチブックに絵を描くように気軽にアプリケーションを作れ、かつWeb との親和性が強く、強力なライブラリ群が無限の可能性を提供します。AIRアプリを作るのが初めての人でも、ある程度作れる人のブラッシュアップにも使える1冊です。

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