"ブレード"サーバとは

ブレードサーバとは、独立したサーバを構成するための必要最小限のパーツだけをブレード(Blade)と呼ばれるモジュールにまとめたサーバだ。実際にサーバとして使用する際には、複数のブレードから共通で利用される機能を実装し、ブレードを格納する筐体ともなるブレードシャシーにセットする必要があり、ブレード単体で稼働させることはできない。ブレードとは「刃」「刀身」といった意味で、薄い板状のサーバというニュアンスだ。

右のように薄い板状のボードに、サーバとして最低限必要なパーツが詰め込まれ、左のように何枚かがシャシーに格納され、稼働する

大規模なSMPマシンなどでは、プロセッサやメモリを搭載した「プロセッサボード」を本体にセットすることでプロセッサ数の増設等が可能だが、ブレードはこのプロセッサボードと良く似たものだと言える。ただし、大規模SMPマシンが「多数のプロセッサを搭載した巨大な1台のコンピュータ」であるのに対し、ブレードサーバは「1つの筐体内に多数のサーバが格納された状態」であり、まったく異なる設計となっている。端的に言うと、大規模SMPマシンでは1つのOSがすべてのプロセッサボードを利用するが、ブレードサーバではブレードごとにそれぞれ独立したOSが稼働するということになる(仮想化のことはここでは無視している)。

ブレードサーバの仕組みと成り立ち - 重要なのはプロセッサとメモリ

ブレードサーバは、サーバのサイズを極限まで小さくするためのデザインとして、1990年代後半ごろから将来のフォームファクタを検討する各種の提案を源流とする。プロセッサやメモリはサーバ固有のリソースだと言えるが、たとえば電源ユニットなどはサーバごとに独立に備わっていることが必須というわけではない。複数のサーバで共通化できるモジュールは共有化し、サーバとして固有に装備しなくてはいけない機能だけを残して極限までリソースを切り詰めたらどうなるか、という思考実験から生まれたものとみることもできるだろう。

1990年代末には、19インチラックに搭載されるサーバとして最小サイズと見なされる1Uサーバが登場した。1Uよりさらに薄くするのは設計上も困難だし、ラックに搭載するのも難しくなってしまう。一方で、サーバの設置スペースが増え続けることに対する懸念から、より小さく、より高密度実装を、という要求は1Uサーバの登場後もなくなることはなく、これを受ける形で2000年代に入ってブレードサーバが登場した。

ブレードの中核的な構成要素は、プロセッサとメモリとなる。HDDに関しては、ブレード上に搭載している例もあるが、外部のネットワークストレージを使用する例もあり、必須要素とは見なされていない。一方、シャシー側には電源ユニットや冷却ファン、ネットワーク等のインタフェースなどが搭載される。シャシーには「バックプレーン」と呼ばれるインターコネクトが用意され、各プレードはバックプレーンに接続され、シャシー側のネットワークポートに接続されたり、電源供給を受けたりすることになる。通常はシャシーの奥にバックプレーンとコネクタが用意され、ブレードをシャシーに差し込むと、ブレードの背面に用意されたコネクタが接続される形を取る。ブレードのサイズや形状、コネクタなど、ブレードサーバの基本的な構成要素の仕様は標準化されておらず、各社それぞれ独自仕様を採用している。このため、シャシーとブレードの組み合わせは固定的なものとなる。

ブレードサーバの論理的構成: 各ブレードはシャシーに差し込まれた後、バックブレーンに接続され、そこから電源やネットワークボードを提供してもらう。なお、ブレードとシャシーはベンダ固有の仕様になっているため、IBMのブレードをHPのシャシーに差し込む、ということは現状ではできない