もう1つのお客様起点としては、自らが得た経験を提供することが挙げられる。これは、ユーザーに対してシステムの再構築を提示するのであれば、まずは自分たちがシステムの再構築を行うべきだという考えから生まれたもの。そこでSAP CRMを中核として、25年間使い続けてきた基幹システム(受注・発注システム)「FOCS」の段階的な再構築が実施された。

SAP CRMを中核とした基幹システム「FOCS」の再構築

従来のFOCSは約1300のインタフェースや69の周辺システムで構成されており、プログラムステップ数は約6メガステップにも及ぶ肥大化したシステムだった。これを約2年かけて再構築した理由について野副氏は、「自分たちができないようなことはお客様にも言えません。社内には相当な反感があり、莫大な予算も必要でしたが、結果として61の共通インタフェースに集約したり、SOAに基づくシステム構築が実践できたことは大きな成果でした」と語る。

さらに、FOCSの再構築を行う過程でさまざまな考え方やアプローチ方法が生まれたことも貴重な財産であり、あらゆるデータを時系列で記録できる「XML大福帳」や、データの一覧性を向上により、経営者層の情報活用を助ける「マネジメント・ダッシュボード」を開発。

さらに10月からは、遠隔地にあるノートPCのHDDを読み出し不能にできるHDDリモート消去技術も社内採用する予定だという。「FOCSの再構築の経験を活かし、お客様により深く大きな価値を提案できるようになりました。これが富士通の新世代ERPの中に組み込まれています」(野副氏)

データの一元管理を可能とする「XML大福帳」のイメージ

経営者層の情報活用を助ける「マネジメント・ダッシュボード」

FOCSの再構築から生み出された富士通の新世代ERP

ノートPCのHDDリモート消去に関するイメージ図

IAサーバで2010年に50万台、7%のシェアを目指す

2つ目の「グローバル起点」について野副氏は「多様化したITの世界では、一社だけですべてのお客様をサポートすることはできません。生き残るにはグローバルかつ強いパートナーシップで、より価値の高いソリューションを提供する必要があるため、従来の『Act Local』から『Think Global, Act Local』へと変革しました」と語る。 グローバル起点を加速するべく、富士通では地域をベースとした海外事業の在り方から、2008年6月以降は海外ビジネスを一本化する組織体制へと変更している。また、85のデータセンター、47拠点のマルチカスタマーサービスデスク、167カ国のグローバルネットワーク網などを通じて、クラウドやSaaS基盤の提供を強化していくという。

グローバル成長に向けて変更された、海外ビジネスを一本化する組織体制

全世界で同レベルのサービス提供を実現するグローバル・インフラストラクチャ・サービス展開

最新のデータセンターを活かし、クラウドやSaaS基盤の提供にも注力

また、4月1日に富士通テクノロジー・ ソリューションズ(旧:富士通シーメンス・コンピューターズ)を統合したことも大きく、野副氏は「今後のサーバビジネスにおいて主戦場となるIAサーバで2010年に50万台、7%のシェアを目指します。現在の富士通には50万台を海外で販売する体制や組織はありませんが、これを実現するために製品ラインアップや価格競争力、提供時期などを見直し、富士通自身が変革していく必要があるのです」と語る。このようにグローバルグループで共通の目標を持つのは、富士通として初めての経験だという。