俳優・古田新太。映画やドラマで、何故か頭にこびりつく癖のある脇役(もちろん主役も!)を演じるこの男。舞台に立てば、忽ち真剣な表情で熱演と思いきや、ギャグを連発し……。まさに変幻自在の"怪優"である。今回、彼が看板役者を務める劇団☆新感線が昨年夏に上演した新感線☆RX『五右衛門ロック』が、演劇公演の映像をスクリーンで上映する「ゲキ×シネ」作品となって生まれ変わった。公開に先立ち、五右衛門役の古田、そして彼を助ける謎の美女役を務めた松雪泰子に話をうかがった。

ルパンと峰不二子と銭形と?

――これまでさまざまなヒーロー像を舞台で演じてきている古田さんですが、今回の「五右衛門」というキャラクターはいかがでしたか?

松雪泰子(左)と古田新太

古田新太(以下、古田)「この作品は、北大路さん(北大路欣也)と未來くん(森山未來)の話が芯になっていて、タイトルは『五右衛門ロック』だけど、『五右衛門ロック』っていう漫画の番外編みたいな感じで、五右衛門は事件的な問題でいうと何もしてないんですよね。その中でオイラとえぐっちゃん(江口洋介)の役っていうのは、ずっと昔から追いかけっこしてたっていう、本当にルパンと銭形警部のような関係で、メインストーリーから全然ずれたところにいる。だけど、オイラたちが出てきたらお客さんが賑やかな気持ちになればいいなって」

――松雪さんは"色っぽさ"と"強さ"を兼ね備えた、まさに峰不二子的な女性(お竜)に挑んでいますが、役作りで何か意識されたところはありますか?

松雪泰子(以下、松雪)「五右衛門とお竜はシーンを展開していく中での狂言回し的な存在なので、舞台に出たらパっとシーンが変わっていくような登場の仕方ができたらいいのかなって考えていました」

――足を大胆に露出されたり、かなりセクシーなシーンも用意されていましたよね。古田さんが舞台上で特に松雪さんを色っぽいと感じられたシーンはありますか?

古田「オイラが好きなのは、キューティーハニーキック(笑)」

松雪「色っぽいっていうか、"賑やか"な感じですね。"色っぽい風"にしました(笑)」

新感線☆RX『五右衛門ロック』

稀代の大泥棒として名高い石川五右衛門が、実は釜茹でにならず、生き延びてもっと大きな事件を起こしていたら……という設定で繰り広げられる"痛快冒険活劇"。生バンドをまじえ、殺陣あり、歌あり、踊りありのパワフルな舞台で2008年夏に話題を呼んだ

打ち上げ花火を打ち上げるつもりで

――劇団☆新感線では毎回、話題の俳優をゲストに招き劇団という枠を越えたプロデュース公演を展開していいますが、今回の『五右衛門ロック』チームはどうでしたか?

古田「(今回の公演の)キャスト選びでは、"全員歌える人たちで"っていうのが念頭にあったんです。内面的で抑えた感じのお芝居ではないので、できれば全面的に派手な感じのチームでいきたいと思ってたんですよね。コマ(上演した新宿コマ劇場。2008年12月に閉館)も最後だし、夏祭りみたいな公演にして、派手に打ち上げ花火を打ち上げてコマにお疲れさまって言いたいねって話していました。今回、それは成功したと思いますね」

江口洋介、森山未來ら脇を固めるメンバーも豪華キャストが揃う

――北大路欣也さんや江口洋介さんをはじめとして、かなり個性的なメンバーが揃っていますよね。

松雪「北大路さんってすごくチャーミングな方で(笑)。稽古場のはじでおうちから持ってきたおにぎりを食べながら、イヤホンで歌を聴いて練習していらっしゃったのが印象的でした」

古田「(北大路さんは)すごく練習する人でしたね。失礼な話ですが、あのお歳で立ち回りが素晴らしい。映像とは違って、舞台では『ちょっと待って』ができないので嫌がる人も多いんですけど、(声色を変えて)『僕はこれ以上立ち回りは速くならないのでよろしくね』って(笑)」……続きを読む