厚生労働省は16日、医薬品のネット販売規制などについて議論する検討会の第4回会合を開いた。今回は医薬品のネット・通信販売が規制されると生活が困難になるケースなどについて関係者からヒアリング。その上で、今後検討すべき論点について議論を行った。

「ネットを使う人は情報リテラシーが高い」と主張

2009年6月に施行される予定の厚生労働省の省令では、、一般用医薬品のネット・通信販売に関して大幅に規制する内容になっているが、この省令を再度議論するため、「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」が設置。今回は第4回の会合となる。

今回の会合では、複数の構成員らの要望を受け、舛添要一厚労相が検討会設置を指示した理由の一つである「医薬品のネット・通信販売が規制されると生活が困難になる場合の救済措置」をより具体的に議論するため、インターネットで医薬品の購入を行っている消費者ら5人からヒアリングを行った。

ヒアリングの一人目として慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏が発言。夏野氏は、大学教授の職務などの利用から、普段の生活では移動することが多いとし、物理的制約などから、「肩こりや風邪を治す薬などはほぼインターネットで購入している」と説明。「全て薬局で買うことになると、大きなストレスになる」と話した。

また、省令における対面販売の原則について、「薬局でも、どういう薬がいいのか薬の箱に書いていること以外に参考にしたことはない」と述べ、今回の規制について、「一般の消費者として理解できない」と主張。「薬の情報を知りたい場合は、医師のサイトなど薬局よりインターネットのほうが情報が多く、医薬品のネット販売が規制されると非常に不便になる。一般に、ネットを使う人は情報リテラシーが高いことが多く、(医薬品に限らず)情報収集も得意。そういったことを考慮した上で議論を行ってほしい」と要望した。

「外出困難な視覚障害者にとってネットは有意義」

続いて、日本盲人会連合の鈴木孝幸氏が発言。「視覚障害者には、外出が困難であることと、読み書きが難しいという二つの大きなバリアーがある」とした上で、「音声で薬の効能などの情報を知ることができるインターネットは、外出が難しく読み書きも困難な視覚障害者にとって非常に有意義な存在」と強調。

「人生の途中から視覚障害者になって点字が分からない人にとっても、音声で情報を得られるネットは医薬品を購入する有効な手段」とし、「ネットではメールでやり取りをすることも可能で、ヘルパーさんに買いに行ってもらう場合などに比べてプライバシーも守られる」とも述べ、「このような便利な生活の手段を奪わないでほしい」と訴えた。

伝統薬で坐骨神経症が治ったという千葉県の香取淳子氏は、病院で投薬を受けても治らなかった痛みが、伝統薬で治った経験を説明。伝統薬の製造・販売企業との電話で、「心のサポートもしてもらえる」と話し、「(通信販売による)伝統薬の販売をぜひ続けてほしい」と述べた。

一方、鹿児島県の丸田京子氏は、奄美群島での医薬品購入の状況を説明。「過疎化の進んだ小さな島々だが、僻地診療所などの地域ネットワークやスーパーの薬店などにより、医薬品の面で困っている状況にはない」と説明。「我が国にはサリドマイドなどの薬害の歴史もあり、安全性と信頼性を最優先にした医薬品行政を行ってほしい」と要望した。

これらの発言の後、検討会の構成員から質問がなされた。全国薬害被害者団体連絡協議会の増山ゆかり氏は、日本盲人会連合の鈴木氏に対し、「障害のある人達が前もってネットで登録し、登録した人達のみ医薬品を購入できる制度があるとすればどうか」と質問。これに対し鈴木氏は、「自分の障害を何で知らせなくてはいけないのかという思いがあり、そのような制度は考えるべきではない」と回答。さらに、民生委員らにより薬の購入をしてもらえないのかという増山氏からの質問にも、「10数年前から、民生委員が視覚障害者がどこにいるかを把握しているという状況にはない」と述べた。

全国消費者団体連絡会事務局長の阿南久氏は、「ネットで買った医薬品を服用して違和感があったという経験はあるか」と質問。これに対し、夏野氏は「そのような経験はない」と回答。鈴木氏も「薬を買う際にネットで効能をきちんと読んで買っているので、違和感があったというような経験はない」と述べた。