【レビュー】

BOOK REVIEW - モータ制御で学ぶ、組込み技術者になるためのはじめの一歩

    横田敬久  [2009/04/01]

    生活に根付く組込みシステム

    ICカード、洗濯機、掃除機などといったマイコン制御の家電製品や、携帯電話、自動改札機、エレベータ、ロボット、自動車、航空機など我々の生活の身の回りには様々な特定の用途向けのコンピュータを利用した制御システム(組込みシステム)がいたるところで使用され、日々の生活に欠かせない物になっている。もはや、我々は組込みシステムなしでは生きていけないといっても過言ではないであろう。

    これらのシステムにおいては、マイコン制御によるモータやLEDや画像などの出力制御とセンサやスイッチによる情報の入力制御はシステムの基本となる制御である。

    さらに、出力した結果をさらに入力として与えるフィードバック処理は様々な機械化、自動化制御の根幹となるものであり、これらをターゲットとした本書「モータ制御で学ぶ 電子回路と組込みプログラミング」は組込み技術者の入門に必要なエッセンスをすべて含んでおり、組込みプログラミングを学ぼうという人の入門書としては最適といえる。

    「モータ制御で学ぶ 電子回路と組込みプログラミング」

    組込み技術者を目指す方への一冊

    本書の想定する読者は、基礎的なC言語の知識がある組込み技術者を目指す高専、大学生や社会人がターゲットとなるであろう。コンピュータ工学や組込み技術の専門的な知識があれば比較的容易に読み進めることが可能であるが、基礎がなくとも「習うよりなれろ」という実習を主とした形体で学習できるように構成されている、

    例えばプログラミングの部分ではポインタなどのC言語の学習者が陥りがちな複雑な概念を知らなくても学習できるレベルのサンプルで構成されているので、本書で一通り実習を通して学び、組込み技術の感覚をつかんだ上で、より詳しい知識を深めていく手段の1つに選んでも良いと思われる。

    基礎的なマイコン制御まで学べる構成

    本書の構成は12章からなり、まずはセンサ(ポテンショメータとエンコーダ)、モータ(アクチュエータ)の基礎、モータ駆動回路の説明、プログラムによる制御としてはLEDの点滅、センサデータの取り込み、PWMによるモータ駆動を扱い、最終章でセンサデータの入力とモータ駆動の出力を連動させフィードバック制御を実現することを目的としている。

    これにより、基礎的なマイコンを使った制御から学びそれをモータとセンサによって位置の制御ができるところまで学ぶところまで学習することができる。各章は独立性が高いためツール導入後、理解している部分は読み飛ばし、必要な章から読み始めソフト開発を体験することが可能だ。

    本書はどの組込みマイコンでも通用するレベルの内容であるが、本書で扱う組込みプログラム部のプログラムを実行するには著者の会社であるZMPが販売す「e-nuvo BASICボード」を前提としており、購入するかもしくは巻末についている回路図を元に同等の回路を自作することが必要である。

    マニュアル併用で読むテクニックを磨く

    本書を読み進めるには初歩的な電子回路の知識やプログラミングの知識が必要になる、マイコン開発におけるツールの導入は本書の手順にしたがっておこなうことにより苦労なくでき、またソフト開発もプログラムもソースを逐次くわしく解説している。仮に解説が理解ができない場合でも、とりあえず章末のソースリストを入力すれば実行できるので、実行して実際にどのように動作するのか学習し、解説にもどって理解を深めることも可能である。

    各章ともくわしい解説がなされおりハード、ソフト編ともに図表も豊富である、以下の写真をご覧になればわかるようにハードの説明にに関しても非常に基本的な点から解説がなされている。

    トランジスタによる電流増幅のページ(図も多用されておりハードがわからない人にもわかりやすいレベルで解説されている)

    ソフト編では第4章でダウンロードをしているH8マイコンのハードウェアマニュアルを併用しながら読み進めることでより理解を深め、他の組込みマイコンを扱う際にも必須となるマニュアルを探して読むというテクニックを磨くことができるであろう。

    筆者はハードウェアに関しては未熟であり電子回路のおおよその意味しか把握できないが、ハード部を読むことにそれほど苦労は感じず、理解を深めることができた機会があればセンサなどの性能測定などをおこなってみたいと思う。

    ソフトウェア制御を扱う章では、何らかのプログラム言語の経験が少しでもある人であれば理解でき、経験がない場合でも入力し体験することにより学ぶことができるレベルによくまとめていると感じた。

    気になった点は要所要所に、IO構造体の定義を掲載しているが、入門者をターゲットとするのであればとりあえず初期化や制御部のみを解説すれば十分であり、その代わりに、巻末にさらに知識を深める項目としてメモリマップトIOやIO構造体の定義などの概念の解説と一緒にまとめたほうがよいのではないかと思った。

    最終章でフィードバックにより指定角度でモータを止める制御を実現して終わるのであるが、最後にもう1章なにか高度な制御を行う応用例か簡単な製品レベルの実例が欲しいと感じた。

    ZMPはほかにもアーム型や二足歩行型ロボット教材を販売しており、今後、より深い機械制御やロボットアームの制御、リアルタイムOSなどを導入した応用編などを扱う続編の予定があるのであれば期待したいところだ。

    組込み技術者を目指す人に

    一口に組込みシステムといっても用途に応じて、機械、電子、情報処理などなど様々な分野の応用知識が必要であり、年々システムの複雑化が進み、様々な分野からの出身の人間が関わるようになってきている。本書はそれぞれの分野の技術者がおいての接着剤となる入門書としては最適であるといえるだろう。この本を手に取って組込み技術者に向かって踏み出してみてはいかがだろうか?

    「モータ制御で学ぶ 電子回路と組込みプログラミング」

    坂井亮介 著
    水川真 監修
    毎日コミュニケーションズ
    2009年02月28日 発行
    B5判 240ページ
    ISBN978-4-8399-2699-1
    定価 2,940円

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