【レポート】
筑波大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、国立天文台の3機関が協力し、つくば国際会議場において「大規模計算が切り拓く基礎科学の将来」と題するシンポジウムを開催した。この3機関の主要な研究対象は、素粒子、原子核、宇宙で、まとめて「素・核・宇宙」と称している。極微の素粒子から超巨大な宇宙はサイズにおいてはかけ離れているが、宇宙の極限状態では、素粒子や原子核レベルの振る舞いが重要であり、これらの拠点が連携して研究を行う意義は大きいという。
宇宙の研究は、ビッグバンはもちろん、銀河系の形成やブラックホールの形成なども、実験室で再現するというわけには行かない。したがって、観測の結果を説明できる理論を考え、理論が多くの観測を上手く説明できれば、正しいと見なすというように発展してきた。しかし、観測といっても、1つの銀河系の形成過程を時系列を追って観察するというわけには行かず、観測から得られるデータは限られている。
一方、素粒子や原子核の世界では、理論の予言を加速器実験で検証し、理論で説明できない現象が観測されると、理論を見直して改善するというプロセスが取られている。次々と高エネルギーの加速器が建設されているが、常に手の届かないより高いエネルギーの世界があり、また、手の届く範囲でも山のような加速器の衝突データから新しい粒子を検出するには膨大な手間が掛かる。
そこで、理論に基づいて数値モデルを作り、コンピュータによるシミュレーションでその振る舞いを観測する方法が取られる。例えば、銀河系の衝突などでは、銀河を形成する多数の星(やダークマター)が重力相互作用で運動する状態をシミュレーションし、それが観測される衝突銀河の形状と一致していれば、理論と計算の前提条件やシミュレーション結果は正しいと考えられる。そして、シミュレーションでは衝突の過程を詳細に観察できるので、観測と比べて格段に多くのデータが得られ、また深い理解が可能となる。これが、計算による基礎科学のメリットである。
また、加速器では到達できない高エネルギー領域の素粒子物理や、大統一理論の有力候補である超弦理論なども、数値シミュレーションを行い、それが影響を与えると考えられる何らかの観測可能な現象と付き合わせるという方法でしか検証することができない。昔の物理学は天才的頭脳と紙と鉛筆があれば良かったが、最近は、理論は出来ても、それがどういう現象になるかの計算は複雑で、スーパーコンピュータ(スパコン)が無ければ計算することができないという状況になっている。
宇宙は、ビッグバンの結果、水素とヘリウムと極少量の軽い原子が作られ、それが凝縮して恒星となり、恒星の内部で重い元素が作られ、その恒星が超新星として爆発して物質を宇宙に撒き散らし、当初の水素、ヘリウムにそれらの物質が混ざったものが凝縮して第2世代の星となるというループを繰り返し、その過程で、我々のような生命が誕生したと考えられている。
この100年で、このような過程がおおよそ分かってきたが、まだ、詳細な理解ができていない分野も多い。生命には、アミノ酸を構成する炭素、窒素、水素だけでなく、微量ではあるが重元素も必要となる。この重元素は超新星爆発によって作られたと考えられているが、超新星がどうして爆発するか、そして爆発の中でどのように重元素が生成されるかについては、まだ、分かっていないことが多いという。
星のコアの中では、最初は水素が核融合してエネルギーを発生し、その熱で重力とのバランスを取る。そして水素が枯渇してくると重力による圧縮で温度が上昇し、ヘリウムが核融合を起こすというように順に核融合が進んで重い元素が作られる。しかし、鉄ができると、それより重い元素を作るには逆にエネルギーが必要となり、重力に対抗するエネルギー発生がなくなってしまう。このため、コアが重力に耐えられなくなって重力崩壊が起きる。そして周囲の物質が落ち込み、その重力エネルギーの解放で爆発が起こるというのが基本的考え方である。
しかし、シミュレーションを行ってみると、球状に対称に潰れるモデルでは爆発が起こらず、40年に及ぶ研究が続けられているが、まだ、満足なモデルは作れていない。このため、最近は、磁界や自転の影響などを考慮した非対称なモデルの研究が進められているという。非対称であれば加熱の集中した部分で爆発が起こる可能性があり、観測される超新星爆発は非対称というデータとも一致する。しかし、球対称なら1次元モデルのシミュレーションで良いが、3次元モデルとなるとシミュレーションの計算量が大幅に増加する。
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