米国の無線通信用半導体大手ベンダであるBroadcomの日本法人ブロードコム ジャパンは、東京で報道関係者向けの新製品発表会を開催し、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)の受信機能、短距離無線通信方式「Bluetooth」の送受信機能、FMラジオの送受信機能を集積した無線通信LSI「BCM2075」を開発し、特定の顧客向けにサンプル出荷を開始したと発表した。携帯電話機や携帯型音楽プレーヤ、パーソナルナビゲーションデバイス(PND)などのモバイル機器向けである。

「BCM2075」のチップ外観写真

ブロードコム ジャパンのカントリーマネージャーである小林昭二氏

発表会では始めにブロードコム ジャパンのカントリーマネージャーを務める小林昭二氏が挨拶し、Broadcomの2008年売り上げが前年に比べて10億ドル近く伸びたことを示すとともに、2009年は過去を上回るペースで新製品を市場に投入していくと述べた。

米国本社(Broadcom)のバイス・プレジデント兼ワイヤレス・コネティビティ・グループ ワイヤレス・パーソナル・エリア・ネットワーキングビジネスユニットの本部長を務めるクレーグ・オチクボ(Craig Ochikubo)氏

続いて米国本社のバイス・プレジデント兼ワイヤレス・コネティビティ・グループ ワイヤレス・パーソナル・エリア・ネットワーキングビジネスユニットの本部長を務めるクレーグ・オチクボ(Craig Ochikubo)氏が、Broadcomワールドワイドの概況と新製品「BCM2075」の概要を説明した。

Broadcomは「Enterprise Networking」「Mobile and Wireless」「Broadband Communications」の3つの事業グループで構成される。「Mobile and Wireless」がBroadcom全体の売上高の40%を占める。

Broadcomの年間売上高推移。2008年は過去最高の46億5,800万ドルに達した。右側はモバイルおよびワイヤレス関連の四半期売上高推移

「Mobile and Wireless」グループ製品の主要な応用分野である携帯電話機は多機能化が進んでおり、特に今後はGPS受信機能を搭載した機種の割合が増えるとの見通しを示した。これまではハイエンドの携帯電話機でGPS受信機能を搭載していたが、これからはミッドレンジの機種でもGPSを搭載するようになるという。このため、GPS受信機能とそのほかの無線通信機能を集積した「BCM2075」を開発した。

携帯電話機が電話以外の機能を装備する割合の予測。今後はGPS受信機能や無線LAN機能を搭載した機種の比率が増える

BCM2075のような複数の無線機能を1チップに集積した製品を、Broadcomは「コンボチップ(Combo Chips)」と呼んでいる。BCM2075は同社のコンボチップでは5番目の製品になる。これまでには、Bluetooth通信機能とFM受信機能を集積した「BCM2048」、無線LAN機能とBluetooth通信機能、FM受信機能を集積した「BCM4325」、Bluetooth通信機能とFM送受信機能をまとめた「BCM2049」、無線LAN機能とBluetooth通信機能、FM送受信機能を集積した「BCM4329」を製品化してきた。今後は60日ごとに新たなコンボチップを発表していくという。

roadcomが製品化してきたコンボチップの一覧

コンボチップの利点

BCM2075が搭載したGPSはA-GPS(Assisted GPS)受信機能で受信感度は-157dBm。ポジショニングアップデート速度は最大2Hzである。Bluetooth通信機能はBluetooth2.1+EDRに準拠した。FMラジオの受信帯域は65MHz~108MHz、送信帯域は76MHz~108MHzである。

またデジタルオーディオプレーヤ機能も装備した。MP3およびAAC+のデコード機能とMP3の録音機能を内蔵する。記者会見では、オーディオ処理における消費電力の低さをアピールしていた。MP3およびAAC+のオーディオを有線のヘッドホンで再生したときのバッテリ寿命が50時間、Bluetoothを介してヘッドホンで再生したときのバッテリ寿命が35時間、FMラジオを受信してMP3で録音したときのバッテリ寿命が33時間だという。ただし具体的な消費電力の値やバッテリ容量の値は明言しなかった。

「BCM2075」の内部ブロック図。製造技術は65nmのCMOSプロセス。チップ寸法は約4mm角