【レポート】
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"Change"を高らかに謳って当選したオバマ大統領。米国の科学技術政策も大きく変化することが考えられるが、中でも最も注目度が高いのは「ES細胞」がらみだ |
出口の見えない不況のなか、各国政府は景気対策のためにさまざまな方向性を模索している。先ほど第44代米国大統領に就任したバラク・オバマ氏が掲げるブロードバンド普及による情報スーパーハイウェイ構想復活などはその一例だ。またオバマ氏は医療やバイオ分野での研究開発や投資にも熱心で、特にブッシュ前政権時代に制限されていた幹細胞やES細胞関連の研究開発投資を解禁しようとしている。万能細胞として知られるES細胞は病気治療の究極解ともいえる存在で、難病治療における技術進歩が一気に進むことが期待される。また金融危機で多大なダメージを受けたバイオ分野を政府政策で復活させることで、景気全体の底上げを狙うという効果も期待できる。
幹細胞(Stem Cell)とは、細胞分裂を経てもその機能が失われずに残る細胞のことで、無限に細胞分裂が可能な一種の細胞供給基幹である。代表的なものは男性の睾丸内の精巣などだ。こうした幹細胞のうち、受精卵などをベースとした胚細胞のことをES細胞(Embryonic Stem Cell)と呼ぶ。通常、幹細胞からの細胞分裂においては、分裂した細胞は特定の器官の細胞としての機能を有している。精巣の例でいえば、分化した細胞は精子となる。ところがES細胞を基に分裂した細胞は他のすべての器官細胞になることができ、いわゆる細胞のスーパーセットとしての機能を持つ。これを応用することで遺伝病や内臓疾患など、これまで内臓移植や対症療法でしか治療が難しかった病気を根本的に治すことができるようになる。特に内臓移植では拒絶反応がよく問題になってるが、ES細胞生成の過程で患者本人の細胞を掛け合わせることでこうした課題をクリアできるのも特徴で、医療分野でいま最も期待される技術であることは間違いない。
だが一方で、ES細胞生成に受精卵を用いることで、本来生まれるべき生命の芽を摘み取ってしまうという倫理的な面や、あるいはES細胞の性質を利用して受精卵を母胎へと戻すことで人体クローンが可能になるなど、種々の問題もはらんでいる。こうした問題は特に宗教関係者や保守派の抵抗もあり、研究開発の進展における足かせにもなっている。
主に保守派の支持を受けて当選したジョージ・ブッシュ大統領は2001年8月9日の演説でこの問題に触れ、連邦予算におけるES細胞の研究開発を制限する旨を発表している。その後、ブッシュ氏の2度目の任期となる大統領就任から5年目の2006年9月には、米上院を通過してきたES細胞の研究開発の制限解除をうたった法案についても、同氏としては初となる拒否権を発動して法案成立を阻止している。現在、連邦予算の問題をクリアできるES細胞は21種に限定されており、ブッシュ氏の8年間におよぶ政策が研究者たちの悩みの種の1つだったといえる。だが連邦予算外での研究は制限の対象外という裏ルールもあり、各大学が独自に研究を進めたり、米カリフォルニア州ではアーノルド・シュワルツェネッガー知事の支援もありCalifornia Institute for Regenerative Medicine(CIRM)が成立して幹細胞研究を推進するなど、個別の取り組みに依存していたのが現状だ。
オバマ氏は大統領候補として名乗りを挙げた2007年時点からすでに公約として幹細胞研究の制限撤廃を訴えており、大統領として就任したいま、改めてどの段階で制限撤廃に関するアクションを起こすのかに注目が集まっている。ブッシュ氏は就任から7カ月経って幹細胞研究に関する制限を発表したが、オバマ氏がこの件に関する具体的なアクションを起こすのはどのタイミングなのだろうか。医療関係者を含む業界からの注目が集まっている。
(イラスト ひのみえ)
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