ネットブックの興隆で2008年に大々的デビューを果たしたIntelの「Atom」プロセッサ。低価格を売り物にEeePCなどの製品を中心に採用されているAtom Nシリーズに加え、ソニーのVAIO type Pの登場でさらに低消費電力を追求したAtom Zシリーズも脚光を浴びつつある。今回は、CESで米Intelが開いたラウンドテーブルにて、同社シニアバイスプレジデントでAtom製品を扱うウルトラモビリティ部門ジェネラルマネージャのAnand Chandrasekher氏に、同社のAtom戦略について話を聞いた。

米Intelシニアバイスプレジデント兼ウルトラモビリティ部門ジェネラルマネージャのAnand Chandrasekher氏

――AtomにはNシリーズとZシリーズの2種類があるが、両者のマーケティング戦略上の違いは? またCentrino Atomのブランド名がなぜフェードアウトしつつあるのか?

Chandrasekher氏: ともにベースとなるアーキテクチャはほぼ一緒だ。ただZシリーズは非常に低消費電力をターゲットにしているのに対し、NシリーズはよりベーシックなPC性能をユーザーに届けることを主眼としている。このように、両者が狙う市場の性格は区別されている。Centrino Atomについてはブランディングが複雑すぎた。Atom自身がすでに市場に認知されており、あえて区別する理由もなくなりつつある。

――現行のMenlowプラットフォームの後継となるMoorestownはどういった製品になる?

Chandrasekher氏: Moorestownは第2世代にあたるアーキテクチャで、同プラットフォームの特徴である低消費電力と低コストの2つをより追求するものとなる。LincroftはMoorestownを構成するプロセッサ製品で、(現行のネットブック向けプロセッサ「Diamondville」の後継にあたる)「Pineview」とは違う形状になる。この第2世代では、(Menlowのプロセッサ部分にあたる)Silverthorneよりもより(GPUなどの)機能が統合されたプロセッサとなる。

――現行のネットブック製品ではWindows VistaのAero動作で問題を抱えているが、Moorestownの世代では正式サポートされるのか?

Chandrasekher氏: 新プラットフォームでのスムーズな移行を期待している。だがGPUに負荷をかけるのは本来の目的に反する。なぜなら高パフォーマンスは消費電力の増加につながるからだ。

――Moorestown以降も現行と同様、(CPUと周辺機能を2つのチップに分離する)2チップソリューションを引き続き採用していくのか?

Chandrasekher氏: 1チップのほうが(消費電力やパフォーマンスの面で)うまくいくことは確かだ。だがIntelでは2つの理由で2チップソリューションを採用している。1つめはフレキシビリティ(柔軟性)、2つめは戦略ミスの防止だ。例えば携帯電話市場などはIntelにとって初めてのマーケットだ。もし間違った機能を1チップに統合してしまうことで、そのチップそのものが市場で駄目なものになってしまう。機能を2つのチップに分割することで、そうしたリスクをある程度回避することができる。

――(AtomとPC向けプロセッサという)2つのモバイル向け製品ラインが存在することで、Intelでの内部競合はないのか?

Chandrasekher氏: どちらが売れてもいいわけで、Intel的には問題ない。もちろん価格下落圧力を受けてしまうという指摘もあるが、価格引き下げという顧客メーカーとの交渉はすでに存在しており、その意味でダイナミックな市場競争原理が働いている。

――Atomでネットブック以外の市場に進出していく計画は? そのための対策は?

Chandrasekher氏: もちろんある。現状は2つのAtom製品を軸に、少しずつ裾野を広げていけばいいと考えている。