不景気でモノが売れない時代。小売業者は苦戦気味だが、韓国では"オープンマーケット"と呼ばれるインターネットショッピングモールが好調だ。

好調のオープンマーケット、日本へも進出

韓国企業のGmarket提供の資料によると、韓国の電子商取引総額は年々増加の一途をたどっており、2008年には18兆ウォン(約1兆2,800億)に達する見込みだ。そしてこの中でも「オープンマーケット」と呼ばれる分野が大きな成長ぶりを見せており、電子商取引総額のうちの44%程度に達しようとしている。

オープンマーケットとは、個人もしくは事業者など、誰でも商品を販売できる形態のオンラインショッピングモールを指す。誰でも自由に出店できて、かつ不特定多数に向けて商品を売ることができるという点が、出店審査などがある通常のショッピングモールとは異なる点だ。

そのオープンマーケットの代表格として挙げられるのが「Gmarket」「Interpark」「Auction」といったWebサイトだ。このうちInterparkは、Gmarket発行株式の29%を持つ大株主であり、Auction発行株式の99%は米e-Bayが持つ。実質的に韓国のオープンマーケット市場は2強時代にあるといえる。

2強はいずれも、急成長を遂げてきた企業だ。1998年と早くからオークションサービスを提供していたAuctionの一人勝ちだった市場に、2000年に起業したGmarketが"オープンマーケット"という新しい概念を引っさげて登場し、頭角を現してきた。このGmarketは、2005年の取引額を1兆809億ウォン(約760億円)とし、2004年の2,245億ウォン(約160億円)より5倍近くの成長を遂げた。一方Auctionでも2002年から、主力サービスをオープンマーケットに据え、Gmarketに対抗するとともにオープンマーケット市場を拡大してきた。

オープンマーケット成長の理由としては、販売方法自体の手軽さ、安さ、商品の豊富さなどが挙げられる。またGmarketにいたっては「芸能人と提携した"スターショップ"の開設や、買うことで慈善活動に参加できる寄付購入、販売者には商品登録料無料といった、それまでにない新しい試みがいずれも成功した」と、同社担当者は説明している。これに加え洋服などを購入したい人は、Gmarketを一度はチェックするほど衣料関連に強いという強みも築いている。というのは韓国では2002年以降、景気がいまひとつだった韓国で、衣料を専門に取り扱う東大門市場の洋服商たちが、新たな流通経路を求めてこぞってGmarketに出店した。店舗が豊富なら購入者も集まり、サービスが大規模化する。こうした過程経て、いまや「ないものはない」と言われるほどにまで成長した。

米国進出も視野に

ところでこのGmarketは、日本を始めとした海外進出の計画もかねてより持っていた。2006年6月には米NASDAQに上場しているほか、同7月には外国人および海外在住の韓国人向けに英語サイトを運営している。2008年内のシンガポールでのサービス展開も表明している。日本には2007年12月に現地法人を設立し、現在はパイロットサイトを運営中だ。本格的なオープンは「2009年上半期中」(Gmarket担当者)を予定しているという。

日本版Gmarketでも、商品登録手数料などが無料となっているほか、1店舗に登録できる商品数が無制限など、商品販売する側にとって自由度の高いシステムを提供し、販売者や商品数の拡大を狙う(出店者の個人/事業者の扱いは特定商取引法の基準に従う)。カスタマーセンターを運用するなど、きめ細やかさにも気を遣っているようだ。

日本では知名度の低いGmarketだが、「消費者への知名度を高めること」(Gmarket担当者)が当面の目標だ。韓国での強者が日本でどこまで受け入れられるのか、今後が楽しみなところである。

また日本進出後も含めた長期的な計画として、米国進出も念頭に置いている。米国ではM&A形式での進出を目指しており、今はその相手を検討中であるという。シンガポール進出も、同国で英語が公用語として利用されており、同様に公用語が英語の米国へとつなげたい狙いがある。米国へのスムーズな進出は、シンガポールや日本での成果が影響すると思われ、アジアの2市場は同社の今後を占ううえでも大変重要な拠点であるといえる。

電子商取引全体の取引規模と、オープンマーケットの取引規模の推移。2008年は予想値。2007年時点では、オープンマーケットの全取引額が電子商取引のそれの41%程度にまで達していることが分かる(資料提供:Gmarket、出所:韓国オンラインショッピング協会)

主要な小売流通チャネル別の取引規模の推移(資料提供:韓国公正取引委員会、出所:Samsung経済研究所)