株式や投資信託などの金融商品に投資をして利益を出している人に限らず、損失を出している人であっても、証券税制の変化には敏感になっておきたいところ。それにより、還付金を受け取れる可能性が出てくるからだ。そこで今回は、2009年1月1日から変わる証券税制について注目する。譲渡所得、配当金などは延長だが、新しく可能になる損益通算などは、しっかりチェックしておこう。

上場株式等の譲渡所得

2008年12月31日、上場株式等の譲渡所得にかかる軽減税率は廃止となる。ただし、この廃止にともなう特例措置として、2009年1月1日から2010年12月31日までの2年間は、1年間の譲渡所得のうち500万円以下には10%(所得税7%、住民税3%)の優遇税率が適用される。しかし、500万円を超えた場合は確定申告をする必要があり、500万円超えの部分に対して税率20%(所得税15%、住民税5%)が適用される。また、2009年以降の公募株式投資信託の解約請求・償還に関しては、買取請求と同様に譲渡所得となる。

上場株式等の配当金

上場株式等の配当金にかかる軽減税率も2008年12月31日で廃止。この場合も譲渡所得と同様に、2009年1月1日から2010年12月31日までの2年間は、年間配当所得が100万円以下なら税率10%(所得税7%、住民税3%)が適用がされる。しかし、100万円を超えた場合は確定申告をする必要があり、100万円超えの部分に対して20%(所得税15%、住民税5%)の税率が適用される。また、確定申告時には、譲渡損失との損益通算が可能な「申告分離課税」、配当控除が利用できる「総合課税」のどちらかを選択しなければならない。

上場株式等の譲渡損失と配当金との損益通算

上場株式等の配当金、もしくは公募株式投資信託の分配金は、2009年以降、申告分離課税を選択した場合には譲渡損失との損益通算が可能になる。これには、損失の繰越控除を受けている場合の繰り越し分も含まれる。また、2010年以降は、「特定口座の源泉徴収あり」口座内にて上場株式等の配当金の支払いが受けられる予定であるため、取引口座内で「譲渡損失と配当金の損益通算」が可能になる。ただし、損益通算をした後の配当所得金額が100万円を超えた場合には、確定申告による納税が必要だ。

支払調書・報告書・提出書類など

2009年以降の確定申告では、税務署へ提出する書類が増えた点に注意が必要となる。特定口座を開設している場合には、源泉徴収のあり、なしに関わらず、「特定口座年間取引報告書」の提出が義務づけられた。また、特例措置である所得税7%の源泉徴収税率が適用される上場株式等の配当金などに関しても、「支払調書」の提出が必要になったのだ。これらは証券会社から送られてくるものだが、放置または書類作成後に捨ててしまうケースも少なくない。今後は、通知書などをこまめにチェックし、しっかり保管しておくよう心がけよう。

これらに加え、12月に発表された自民党の「平成21年度税制改正大綱」にも注目しておきたいところ。

具体的な内容としては、住宅・土地税制における住宅ローン減税の適用期限の5年延長や、長期優良住宅の最大控除可能額600万円までの引き上げなどが挙げられる。さらに、金融・証券税制においては、上場株式等の配当等について現行税制の3年間延長や20%本則課税が実現する際の5年間毎年100万円までの上場株式等への投資にかかる配当・譲渡益の非課税などが検討されている。

もちろん、今後の政治動向によってこれらの改正案がどう変わってくるかは誰にもわからない。それほど変化の激しい税制だけに、税金を支払う国民としては、その動きをしっかり見極める必要があるだろう。