父の死を乗り越えての優勝

優勝した中井さんは、タリーズコーヒーでアルバイトとして働き、今年社員に。アルバイト時代にも大会に参加して2005年度に優勝しており、今回社員としても優勝というすばらしい快挙を成し遂げた。

父への思いを壇上でも語っていた中井フェロー

「自分の作るドリンクが今まで以上においしくなり、そしてお客様に喜んでもらいたいという思いから出場しました」という中井さん。昨年11月には今まで一人で育ててくれた父親を亡くしている。表彰された壇上でも、その父親への思いがあふれだし、涙が止まらなかった。

「急に亡くなってしまったので、父親には今までの感謝の気持ちを伝えられませんでした。なので、今回いい報告ができればなと思い頑張ってきました。このようなよいけっかとなったのも、きっと父親が見守っていてくれていたからだと思っています」。

中井さんは出場に向けて、ドリンク作成のトレーニングはもちろんのこと、テイスティングの審査にむけ1日にたくさんのコーヒーを飲んだという。練習で1番苦労したのは、「不安になってあせる気持ちを落ち着かせること」。本番では緊張したというものの、普段の自分の力を出せるように日々トレーニングに励んだことが優勝へとつながった。「今回のコンテストでは、本当にいろいろなことを勉強させていただきました。僕でも一生懸命努力をして頑張れば、なんでもできるんだと勇気が出てきました。ただそれは、日々の積み重ねがあってからこそのこと。自分の癖を直したり、足りない点を補ったりすることによって、やるべきことが見えてきます。普段の1日1日がいかに大切かを痛感できたことも、自分にとってプラスになりました。今後、何かにチャレンジする時にはバリスタコンテストで努力したことを思い出して、頑張っていきたいと思っています」。今後もタリーズの店舗で、一杯のおいしいコーヒーを提供してくれることだろう。

後半に行なわれた「アルバイトフェローの部」では、バリスタとキャッシャーの2人1組によるシュミレーション形式での審査となった。通常業務を行なっている各店舗の手書きPOPを持ち込むなど、各自それぞれ雰囲気づくりにも熱心。バリスタが商品をつくり、キャッシャーがお客役に対して季節メニューをすすめたり、ポイントカードを押すなど、通常と同じようにサービスを行なった。

2人で支えあっての優勝

「アルバイトフェローの部」で優勝したのは、熊本県熊本市にある熊本はません店の女性コンビ。2007年のコンテストで準優勝したベテランと、まだ経験の浅い若手のコンビで、「お互いに気づいた点は話し合い、困った事は共有しあって、コミュニケーションを大事にしました。日々のトレーニングは、体力はもちろんのこと、何より精神的に非常にハードでしたので、辛いときはお互いに叱咤激励し合い頑張りました」。

もう1人は、「私はテイスティングが苦手だったので、テイスティング審査で負担をかけてしまうと思い、それを補う意味で、コーヒー知識のテスト勉強にも力を入れました。また、週1回2人で行っていたミーティングでは、励ましてもらったり、勉強を教えてもらったりと、本当に色んな面で支えてもらいました。1人では絶対に乗り越えられなかった試練であり、結果だと思います」。と、このように、2人で努力し、支え合っての優勝となった。その他の参加者も、日ごろの努力を出し切り、よい笑顔を見せていた。この人たちが淹れてくれるコーヒーを飲んでみたいと思うような、期待を持たせてくれる大会だった。

表彰式後のフォトセッション