取り締まりには高いコスト

中国のネットワーク監視・管理部門は、大きな難題に直面している。まず、外国のサイトを禁止することは到底できない。海外には膨大な数の中国語のわいせつサイトがあり、中国国内のユーザーがいつでもアクセスできる。

おまけに、監視コストが非常に高くつく。現在すでに検挙されているネット事件、たとえばわいせつサイトの制作、わいせつ画像の配布などの事件は、いずれも「ネットポリス」によるネットサーバ追跡調査によるものだ。

故意にわいせつコンテンツを配布する者たちは、転々とサーバを換えるが、そのコストは非常に安い。しかし、それについて調査し証拠を集めるためのコストは非常に高い。

ある業界通は、「端末ユーザーは本当の個人データを使用しない可能性があり、また本当の個人データを使用したとしても、証拠を集めるのに苦労する。したがって、これまで検挙されたネットわいせつ事件の数は非常に少ない。今後、監視をさらに強化する必要があるだろう」と語っている。

ネットの拡大に追いつかない法体系

中国インターネット協会理事長の胡啓恒氏は次のような見解を示している。

「中国のインターネットコンテンツの整理整頓をするには政府、企業、国民の三者による推進が不可欠。わいせつサイトの宣伝手段がますます多様化している今日、ネットワーク監視・管理部門だけによる簡単な防止だけでは物足りない。より多くのネット企業とユーザーの共同作業が必要になってきている」。

さらに、著名なインターネット関連の法律に詳しい弁護士の于国富氏は、「ネットわいせつ情報は非常にシステム化されたもので、サイト経営者、通信キャリアなど、その範囲は方々にまで影響する。さまざまな部門間で全方位的に協力し、より多くの関係法律法規を制定することによってのみ、ネットワークわいせつ活動を有効に取り締まることができる」と語っている。

北京大学法学院の陳氏は、ネットわいせつ犯罪に対処する上での最大の難題は、ネットわいせつ情報の定義で、法律上非常な難問だとしている。図書や写真などの伝播方式と異なり、ネット伝播の手段は非常に進んでいるため、証拠を集めるのが難しいのだという。

中国では、インターネットが現れる前は、公序良俗に反するわいせつ情報はそれほど氾濫していなかった。しかし、インターネットの急速な拡大により、今やわいせつ情報問題や大きな社会問題となっている。

法律体系は、現実にまるで追いついていない。2004年までは法律・法規が規制する対象としての「わいせつコンテンツ」は主に印刷物に限られ、わいせつ出版物やわいせつディスクなどだった。2004年に、中央の14部が連携してわいせつサイトの取り締まりに乗り出したこと自体、ネットわいせつ情報の氾濫ぶりや注目度を物語るものだった。