時代と共に拡大する「ネットわいせつ業」

インターネットが普及し始めたその日から、ネット上の"わいせつ業"はその技術発展の歩みを止めたことがない。P2P技術から検索、そしてWeb2.0に至るまで、インターネットの技術革新がある度に、わいせつ業は新たな形態をもって立ち現れてきた。

中国でも、事情は同じだ。政府の厳しい取り締まりにもかかわらず、ネット上のわいせつ情報は依然姿を消さない。国内の映像サイトの至るところで女性の半裸映像が見られ、そのタイトルも極めて露骨。中国では禁止されている日本や香港、台湾のアダルトビデオもその中に隠れている。

ブログなどの新技術の普及も、ネット利用者に多くの利便性を提供すると同時に、ネットワーク上の好ましからざる風潮を助長した。

肉体についての描写やわいせつ写真を公表することは法律に関わる問題で、犯罪につながる恐れもある。インターネットは、人々に伝統文化の元では到底考えられないほど迅速に名を売る方法を提供し、多くの若者がその誘惑に負けてその方法を模倣する列に加わっているのである。

2007年末までに、中国インターネット違法と不良情報通報センターには20万件あまりのわいせつ情報に関する通報があった。次々と新技術が生まれる環境の下、中国当局のネットワークわいせつ取り締まりの情勢は厳しくなる一方のようだ。

防止技術をかいくぐる「わいせつ情報」

2006年11月22日、「情色六月天」など登録ユーザー62万人を擁する4つの大規模わいせつサイトを運営してきた陳輝という人物が、「わいせつ物品伝播営利罪」で山西省太原市中級人民法院から一審判決で無期懲役を言い渡され、政治権利の終身剥奪が決定された。

この事件は中国国内で大きな反響を呼んだ。しかし、極めて重い量刑にもかかわらず、ネットわいせつ情報の勢いを止めることはできないでいる。中国のネットわいせつ取り締まりは、今や「行き詰まり」とでもいうべき状況に陥っている。

周知の通り中国はネット浄化において大変力を入れているが、技術的な面から見るとやや時代遅れという感じで、古い管理体制と技術手段では、にっちもさっちもいかなくなっている。

中国国内でネットわいせつ情報が伝播するのは、主に2種類のサイトを通してだ。一つはポータルサイトを含む大手サイトで、これらのサイトは中国の法律の「わいせつ」についての概念がはっきりしないところに付け込み、法規制ぎりぎりまでのことはするが、法律ではっきり定義しているわいせつのボーダーラインには踏み込まない。またユーザーからのコンテンツ提供が可能なWeb2.0が登場してから、これらのサイトは「わいせつ情報はユーザーが提供したもの」を口実に、何一つはばかるところがない。

北京大学法学院副院長の陳興良氏によると、中国の現在の刑法第367条には、わいせつ物品についての明確な定義があり、その規定がネットワークにも適用できるという。しかし、「わいせつ情報」の定義はわいせつ物品についての定義(規定)より遥かに範囲が広いため、わいせつ物品の規定にさえ違反しなければ、法律を適用することは難しい。それゆえ、多くのサイトは法規定ぎりぎりのことをしても法律に違反する心配がないのである。

二つ目はあきらかなわいせつサイトで、上述の「情色六月天」がこの類のサイトだ。この種のサイトは中国の法律に違反しているが、サーバの多くが外国に置かれたり、外国のホストコンピューターを使用したりしているので、中国としては技術的な手段で妨害する以外、なかなか罰することができない。

現在、検索エンジンや、リアルタイムチャットツールの普及により、これらのわいせつサイトは絶えずIPアドレスを換えながら、妨害から免れたり、検索エンジンやチャットを通じて宣伝を流したりして、従来の妨害技術を意味の無いものにしている。