中国の「独占禁止法」が、2008年8月1日に施行された。これは中国の市場経済が新たな発展段階に入ったことのシンボルであると受け止められている。

無論、法律が制定されたといっても、この先運用面で成熟するまでには長い道のりを歩まなければなるまい。そこで本稿では、IT・ネット業界などに関する研究機関「中国インターネットラボ(China Labs)」がハイテク業界と独占禁止法の関係を分析した「中国ハイテク分野独占状況調査レポート」に基づき、ます独占禁止法の基本的内容を理解。その上で、実例を挙げながら、独占禁止法の発効後、中国の各業界にいかなる影響がもたらされるのか、また、各業界の対応策などについて検討してみたい。

ハイテク分野について製品・サービス別に調査

中国インターネットラボの職員をはじめ、各分野から数十名の学者を集めて組織されたプロジェクトチームが編集した「中国ハイテク分野独占状況調査レポート」。これは中国市場における企業の独占状態に関して初めて報告された調査レポートで、極めて重要な意義を持つ。

このレポートは、中国の独占禁止政策がこれまでの議論検討レベルから、理性的な調査や評価段階に入ったことを意味する。同時に、将来、実際の訴訟が始まる前段階での有力な理論的根拠を提供している。

同レポートは数十種類のいわゆる「ハイテク分野」について、製品・サービス別に細分化。つまり、インターネット/メディア/ソフトウェア/コンピュータ/半導体/電気通信/ ITサービス/デジタル製品など10業種について、CPU/ OS/アプリケーションソフトウエア/検索/リアルタイム通信/モバイル通信/電子商取引/固定電話ネットワーク/通信設備/携帯電話/ ITサービスなどの製品・サービス別に調査している。

調査対象となったのは、Microsoft、Intel、騰訊網、中国移動、中国電信、淘宝、阿里巴巴、IBM、Cisco、Nokiaなど数十社。国内外を問わず、現在の中国市場における寡占、独占状況についての分析を行っている。

今回の調査では、欧米、日本、韓国などの独占禁止法の実践経験、独占の判断基準、独占の程度の測定基準などを参考にしている。項目別の調査以外に、第三者機関による大量の調査データや調査結果に基づき、経験豊かな専門家が厳しくチェックするというリサーチ手法を採用。それぞれの産業の独占状況についての定量評価を行い、特に独占状況がひどい場合については追跡調査と総括を実施。独占によってもたらされた被害の程度も評価している。