【レポート】
アドビ システムズは18日、報道陣向けに2009年度 事業戦略説明会を開催、9月にギャレット・イルグ前社長(現SAPジャパン 代表取締役社長)が退任して以来、空席だった同社代表取締役社長にクレイグ・ティーゲル氏が就任したことを発表した。出口の見えない経済不況が全世界を覆う中、米Adobeは今月始め、600人前後のリストラ案を発表したばかり。日本市場では19日から発売開始となる新製品「Adobe Creative Suite 4(以下、CS4)」の販売不振が一因と言われているが、はたしてティーゲル氏はこの難しい局面をどう舵取りしていくのか。「これまで培ってきた顧客、パートナーとの連携をさらに強化し、市場の期待に応えられる製品を提供していきたい」と同氏は語るが、カギは国内におけるCS4の売上、そして日本市場でも少しずつ浸透し始めてきた「Adobe LiveCycle ES」をはじめとするエンタープライズ部門の成長、そしてOSP(Open Screen Project)の成功にありそうだ。
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ジョン・ロイアコノ氏 |
説明会ではまず、米Adobeでクリエイティブソリューションのシニアバイスプレジデントを務めるジョン・ロイアコノ氏が登壇、2008年度におけるグローバル市場での同社製品売上について説明を行った。年間を通しての総売上は35億8,000万ドル、ビジネスユニット別の売上構成比は、CS4などのクリエイティブソリューションが58%、Acrobat 9/LiveCycle ESなどのビジネスプロダクティビティが30%、モバイル&デバイスが3%、その他が9%となっている。
ロイアコノ氏は「製品に多様性があるのが当社の特徴。とくにエンタープライズソリューションであるLiveCycle ESは売上で32%もの成長を遂げた。Adobe PDF ReaderとAdobe Flash Playerという二大ランタイムが世界中のほとんどのPC上で動作するという強みを生かし、エンタープライズにもリッチなユーザ体験を提供できることを証明した。そのひとつの例がSAPとの協業だ」とし、さらに「Adobeのビジネスモデルは基本的に25年間変わっておらず、今後も大きな変動はない」と語る。つまりPDFやFlash、そしてAIRといったクライアントをベースとした上で、それらと連携させるツールやフレームワーク、サーバなどのビジネスを行っていくというものだ。
Adobe MAX 2008において、同社CTOのKevin Lynch氏はさまざまな場で「Adobeはプラットフォームベンダ」と発言した。その核となるプラットフォームはFlashテクノロジにほかならない。Adobeは5月に"Open Screen Project"を発表しているが、これは携帯端末からPC、大画面スクリーンまで、あらゆるデバイスにおいて同じユーザ体験、すなわち"Write Once, Publish Anywhere"を提供するというプロジェクト。ベースとなっている技術はもちろんFlashだ。ロイアコノ氏は「このプロジェクトはAdobeだけでドライブできるものではない。現在は他のパートナーと(OSPの)スペックを協議中という段階。3、4カ月後には何らかの形をお見せしたい」と語る。
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アドビ システムズ社長に就任したクレイグ・ティーゲル氏 |
続いてロイアコノ氏から紹介されたアドビ システムズ新社長のクレイグ・ティーゲル氏が登壇した。同氏はイルグ氏退任の9月15日より同社代表取締役の座についていたが、この18日は"代表取締役社長"に就任した最初の日。翌19日に控えたCS4の日本市場でのローンチについて「この日を迎えられることを非常に嬉しく思う。12年前、Photoshopの知識が何もなかった私が無理やり(Photoshop 4の)デモンストレーションをやらされていた時代とは異なり、今ではアドビには数多くの優れたスタッフがいる」と語る。
CS4にはPhotoshopやIllustrator、FireWorksなどのクリエイティブ製品13種類が含まれており、R&Dやマーケティングにも相当の時間とコストをかけてアップデートが行われた。ここ数年の同社にとって最も重要な新製品といっても過言ではない。だが、世界的金融不況のあおりを受けたこともあり、CS4の北米/欧州での販売は予想よりも低調な数字に留まっている。日本でも日を追って不況の影響が強くなってきているこの厳しい状況を、ティーゲル新社長はどう見ているのか -「この不況は、当社にとって非常にユニークな機会だと捉えている。コスト削減という課題が差し迫ってくれば、企業は経営の効率化を図らざるを得ない。(CS4だけでなく)当社の製品群が、経営の効率化、コスト削減に貢献することを示す絶好のチャンスだ」と自信を見せる。
日本でのビジネス戦略に関しては、「アドビという会社は、当社の製品を忠実に使い続けてきた顧客、そしてパートナーによって支えられてきた。今後は彼らとの連携をいっそう強化していく。とくにエンタープライズ事業、そしてコンテンツ配信事業に力を注ぎたい。アドビが単なる"テクノロジサプライヤ"から"戦略的パートナー"になれるよう、努力していく」とした。
ITベンダが軒並み不況の嵐にもまれている中、アドビが日本市場における地位を保持していくためには、やはりCS4の売上が重要になってくるだろう。とくにローンチ後の最初の四半期にどういう結果が出てくるのか、注目しておきたい。
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