ベルギーの研究機関IMECとオランダの露光装置ベンダASML、ベルギーの半導体製造装置ベンダApplied Materials Belgiumの共同研究チームは、EUV(Extreme Ultra Violet)露光技術を導入して32nm世代の高密度SRAMセルを試作した結果をIEDM 2008で発表した(講演番号35.2)。

EUV露光技術は、波長が13.5nmと極めて短い軟X線を光源とする縮小投影露光技術である。現行の最先端量産技術である液浸ArF露光の光源波長は193nm。光源波長が短くなるほど露光技術の解像力は高まるので、EUV露光技術は液浸ArF露光をはるかにしのぐ解像力を備えている。

露光技術のロードマップ。EUV露光技術は22nm以降の世代で実用化を狙う(IEDM 2008の論文集から抜粋)

ただし従来技術の延長である液浸ArF露光技術と違い、EUV露光技術はまったく新しい技術なので、リソグラフィを支える各種の要素技術も開発しなければならない。実用化までには膨大な開発リソースを要することになる。

実用化への第1歩が、ASMLが開発したEUV露光装置「ADT(Alpha demo tool)」である。EUV露光装置としては初めてフルフィールド(大面積)を露光できる装置で、EUV露光技術の開発に大きく役立つと期待された。その1台はIMECに納入され、評価を受けてきた

IEDM2008では、液浸ArF露光とEUV露光を組み合わせてSRAMセルを製造するプロセスが披露された。製造工程はトランジスタの形成、コンタクトの形成、多層配線の形成と進む。このなかでトランジスタの形成工程で特に微細な加工が必要な個所に液浸ArF露光(開口数は0.93と0.85)を使用し、コンタクトの形成にEUV露光(開口数0.25)を使用した。EUV露光装置は当然ながら、ASMLのADTである。

SRAMセルの製造プロセス工程。MOLのコンタクトパターン形成にEUV露光を使用した(IEDM 2008の論文集から抜粋)

コンタクトの形成にEUV露光を使用したのは、非常に納得できる選択である。微細なコンタクトのパターンをきれいに露光するには焦点深度(DOF)を必要とするからだ。ArF露光は開口数が高く、焦点深度が浅くなってしまう。一方でEUV露光は開口数が非常に低く、焦点深度が深い。コンタクトのパターン形成にはうってつけと言える。

試作したSRAMセルのトランジスタはFinFETである。ゲート長は45nm、ゲートピッチは150nm。フィンの加工とゲートの加工に液浸ArF露光を採用した。SRAMセルの面積は0.186平方ミクロン。基本的な動作を確認している。静的雑音余裕(SNM)は電源電圧が1.0Vのときに139mV。

EUV露光でパターンを形成したコンタクトは、コンタクトホールとブーメラン型コンタクトの2種類である。コンタクトホールの直径は約55nm。露光用レジストの厚みは100nm。かなり良好なパターンを形成できている。

コンタクト領域のレイアウトとEUV露光によるパターン(IEDM 2008の論文集から抜粋)