第4回FC EXPOセミナー In 大阪が16、17の2日間、大阪市内の大阪国際会議場(グランキューブ大阪)で開かれた。水素製造や部品製造などを行う約40社の中小ベンチャー企業が出展し、水素・燃料電池の研究、開発、設計、製造などに関わる専門家たちの注目を集めた。あわせて開催された全10のセミナーの中から、暮らしに近いテーマを厳選してお伝えする。

家庭用燃料電池の商品化に向けて進む技術開発、残るコストの課題

パナソニック ホームアプライアンス社 副社長 石王治之氏

パナソニック ホームアプライアンス社 副社長 石王治之氏は「家庭用燃料電池を取り巻く状況と課題~パナソニックにおける事業化への取り組み~」と題して講演。待ったなしの地球環境問題に対してクリーンエネルギーの導入は不可欠と話し、パナソニックが全社連携で燃料電池事業化プロジェクトを推進していることを強調した。同社では1999年4月にFCラボを発足、燃料電池の本格開発をスタートさせ、2005年2月には市場導入を果たしている。

そして、2009年の本格的な市場導入を迎えるにあたり、石王氏は商品化への重点項目について「生活に密着したインフラとして、『省エネ性』はもちろん、導入負荷を軽減する『経済性』と"絶対安全"の確保による『信頼性』、長期の使用に耐える『耐久性』を重視している」と話した。現在の開発進捗状況は、最高で39%という発電効率など高いエネルギー削減やCO2削減可能な実効効率を実現し、10年の耐久性にも目処がつき、製品の安全と品質も確立、高性能を実現し、準備が整ったという。設置スペースについても奥行き89cm、横幅3,180cmの2.8㎡とし従来よりも約30%減少させ、本体重量も約30%軽量化して設置性を向上させた。見た目においても、正倉院の校倉造りをイメージした波型サイディングのデザインに現代建築の外壁と調和するウォームシルバーカラーを採用するなど、他メーカーとの差異を図っているようだ。

一方で、石王氏は本格普及への課題について「性能や品質、耐久性などの使用性については商品化が見える段階に至ったが、コストの課題が残る」と話し、「高効率インバータなどの独自技術の開発に加え、業界連携のデバイス開発によって、より一層のコストダウンをしなければいけない」と構想を語った。同社による家庭用燃料電池の2009年度市場導入はガス会社を通じて一般販売され、2010年代にはより低コストを実現して燃料電池のすそのを拡大していき、約30%の販売シェアを目指すという。まだ現時点で市場導入の際の価格は決まっていないようだ。

富士経済 大阪マーケティング本部 第二事業部 主任 渡辺啓太氏

「燃料電池市場の将来展望~2008年度版 燃料電池市場レポートより~」の講師を務めた、富士経済 大阪マーケティング本部 第二事業部 主任 渡辺啓太氏からも、「燃料電池には競合技術も多く、燃料電池という新規技術の採用には時間がかかるなどの難しさがある」と燃料電池の商品化への厳しい見方が伝えられた。

ただし、「環境問題や石油問題を突き詰めていくと燃料電池は残る。将来的に大きな市場が期待できるなどの魅力は大きい」と話し、家庭や自動車、マイクロ(モバイル)、ポータブル、産業・業務といった主な5需要に対応できるPEFC(固体高分子形燃料電池)が燃料電池市場の枠組みの中で主流になるだろうと予想した。具体的なロードマップとしては、家庭用PEFCが2012年には1台100万円に、2015年には自動車PEFCが5,000台出荷(1台500万円)で一般ユーザーへの普及を開始するなど、2020年には推定1兆2,069億円の市場規模になると描いた。

また、渡辺氏は家庭用燃料電池の市場見通しについて、出荷台数は「2020年の60万台以降は75万台を上限として燃料電池の新しい技術へ移行するだろう」と予測。出荷単価は2009年で200万円、2015年で60万円、2020年で42万円と推定し、「ユーザーが手を出しやすい価格である80万円~90万円から始まって60万円に下がっていくだろうから、2015年でちょうど出荷単価と同額になる」と分析した。