プレスブリーフィングが開催

12月15日(現地時間)、電子デバイス技術に関する世界最大の国際学会「IEDM(International Electron Devices Meeting)」が米国カリフォルニア州サンフランシスコで始まった。15日の正午には、IEDM 2008の実行委員会が報道関係者向けにIEDM 2008のハイライト(見どころ)を説明するプレスブリーフィングが開催された。今回は、この内容をご報告する。なおIEDMでは講演中の写真撮影が禁じられている。このため、プレスブリーフィングで紹介された講演ハイライトの写真や図面などは、限定的に公表されたものである。

パブリシティチェアを務める石丸一成氏(東芝)がIEDM 2008のハイライトを説明した

プレスブリーフィングでは最初に、ハイライトのアウトラインが示された。最先端CMOS技術、メモリ、3次元積層技術、化合物/高周波デバイス、将来技術(医療およびバイオ向けナノテク)、ランチョン(16日昼に開催される特別講演会兼昼食会)である。

ハイライトのまとめ

CMOSプラットフォームのトレンド

続いて現在のシリコン半導体技術をけん引するCMOSプラットフォームのトレンドが解説された。設計ルールを前世代の70%に縮小する微細化が2年ごとに起きており、現行の最先端世代である45nm技術による量産が始まっている。次世代の32nm技術による半導体チップの量産は、2009年下半期~2010年上半期に始まると予測していた。

32nm世代の量産にあたって鍵となるのは高誘電率膜/金属ゲート(High-k/metal-gate)技術である。現在はIntelだけが量産に採用している。Intelに続く半導体メーカーがいつ、どのようにして登場するのかに注目が集まっているとする。

CMOSプラットフォームのトレンド

そこで注目されるのが、32nmの高誘電率膜/金属ゲート技術に関する講演である。TSMCの講演(講演番号27.2)と、IBMによる講演(講演番号27.3)を紹介した。TSMCは高誘電率膜/金属ゲート技術によって駆動電流が非常に高いトランジスタを実現した。露光技術は高開口率(高NA)の液浸ArFリソグラフィである。2MビットSRAMを試作している。IBMは高誘電率膜/金属ゲート技術によってしきい電圧のミスマッチを大幅に低減してみせた。

TSMCの高誘電率膜/金属ゲート技術に関する講演概要

IBMの高誘電率膜/金属ゲート技術に関する講演概要

CMOSプラットフォーム技術に関するそのほかの注目講演

メモリの微細化の進展

メモリでは、製造技術の微細化が続いていることを示す講演が紹介された。Qimondaによる高密度DRAM技術の講演(講演番号33.4)とIBMグループによる22nm互換の高密度SRAMセルの講演(講演番号27.1)、Samsung Electronicsによる超高密度相変化型不揮発性メモリの講演(講演番号9.2)である。また新しい試みとしてQimondaによる炭素ベースの抵抗変化型メモリの講演(講演番号21.4)が紹介された。

Qimondaによる高密度DRAM技術の講演概要

IBMグループによる22nm互換の高密度SRAMセルの講演概要

Samsung Electronicsによる超高密度相変化型不揮発性メモリの講演概要

Qimondaによる炭素ベースの抵抗変化型メモリの講演概要

3次元積層技術も注目

3次元積層技術では、IBMによる300mmウェハを貼り合わせるシリコン貫通電極(TSV:Through Silicon Via)技術の講演(講演番号26.2)と、東北大学によるセルフアセンブリ技術の講演(講演番号20.5)が注目講演に挙げられた。

IBMによるシリコン貫通電極の講演概要

東北大学によるセルフアセンブリ技術の講演概要

化合物/高周波では600GHz動作を実現

化合物/高周波デバイスでは、Intelによる140GHz動作のインジウムアンチモン(InSb)FETに関する講演(講演番号30.3)、Massachusetts Institute of Technology(MIT)による600GHz動作のインジウムヒ素(InAs)トランジスタの講演(講演番号30.1)、富士通による1チップの高周波CMOSパワーアンプの講演(講演番号19.1)が紹介された。

化合物半導体デバイスの注目講演

高周波パワーデバイスの注目講演

このほか将来技術(医療およびバイオ向けナノテク)に関する講演のハイライトが示されるとともに、そのほかの注目講演が紹介された。

将来技術(医療およびバイオ向けナノテク)に関する講演のハイライト。上から人工網膜の研究(講演番号13.1)、脳神経の信号をワイヤレスで拾う研究(講演番号13.3)、ナノワイヤを使って薬剤を供給する研究(講演番号13.5)である

そのほかの注目講演。上は1,100万画素と解像度の高いマイクロミラーアレイに関する講演(講演番号28.1)、下はナノワイヤを使ったバッテリに関する講演(講演番号7.6)

そのほかの注目講演(続き)。上は3次元FETの講演(講演番号31.2)、下はばらつきのメカニズムを解析した講演(講演番号10.4)