CGアニメ映画で今一番突っ走ってる会社といえばピクサーだ。フルCG映画を作っているのはピクサーだけじゃない。でもピクサーが作る映画は他と違う。だいたい絵作りに凝りすぎるとロクなCG映画にならないんだけど、ピクサーの映画は綺麗な絵がより映えるストーリーや演出が徹底的に考えられてて、演出が絵に負けてない。それもこれも、いまや天才アニメ監督として名を馳せるジョン・ラセターやここで紹介する「ウォーリー」の監督であるアンドリュー・スタントンなどの強力な演出スタッフのなせる技と言えよう。

…なんて綺麗にまとめてみましたが、オイラはこの手のCG映画が正直苦手。登場キャラのツルツルしてバタくさい顔がダメなのよ。ストーリーも良いし背景、動きの表現なんかはすごいと思うんだけど、くどい顔でペラペラしゃべる擬人化キャラを見るとげんなりして、どうしても楽しめない。止め絵と省略が持ち味の日本製アニメに毒されてるせいかもしれないが…。

そんな中、予告編を見て目にとまったのがこの『WALL・E/ウォーリー』。主人公がロボットで、顔らしい顔がない! その上ほとんどしゃべらない! ダメなところがないよ! 実際観てみるとこの映画、「萌え」とは行かないまでも「ツンデレ」風味が利いた、オイラのような日本系アニメジャンキーにも抵抗ない映画だった。こーゆーのを待ってたんだよ!

29世紀の地球でひとりぽっちのウォーリー

ストーリーは、自然破壊の末ついに人類が地球に住めなくなった未来の話。人間がいなくなり、ゴミだらけで廃墟と化した地上でただ1つ動いているのがゴミ処理ロボットのウォーリー。ウォーリーは誰もいなくなった地球で、ひたすらガラクタをプレスして積み上げている。ひとりぼっちで作業をするうちに、ウォーリーは寂しさのような感情や好奇心を持つようになっていた。この汚れた地球の表現がすごくて、地上全体のほこりっぽさや、ウォーリーのボディについた汚れやサビの質感がCGを感じさせない仕上がり。映画のプロモ用にラジコンで動くウォーリーも作られてるけど、映画のCGと見分けつかないもん。

自分の体の中にガラクタをかき入れ、四角くプレスして積み上げていく様子はとっても健気

さて、何百年も変わり映えのない生活を送っていたウォーリーの前に、ある日巨大な宇宙船が降り立ち、中から1台のマシンが現れた。ウォーリーとは対照的な白いピカピカの体をもつロボット「イヴ(EVE)」だ。iPodのデザイナーがデザインしたそうで、言われてみるといかにも。イヴの顔は電光掲示板になってて、そこにニコニコマークみたいな目が出るだけ。ウォーリーも双眼鏡みたいな目を動かすだけの顔で、普通に考えるとかなり表情乏しそうだけど、ご両人とも結構な演技派で、ちょっとした仕草で泣かしてくれる。チャップリンの映画で動きを研究したそうで、今やCGキャラが名優に演技を学ぶのね。

イヴのビームはちょっとした岩山を溶かしてしまうほど強力

最初は腕に仕込まれた強力ビーム兵器で動くものを撃ちまくる暴れん坊だったイヴだが、ウォーリーの再三のラブコールにだんだん感情が芽生えて、良いムードになってきたところで突然機能停止してしまう(理由は明らかなんだけどネタバレなので秘密)。イヴを目覚めさせようと手を尽くすウォーリーだったが空しく時は流れ、やがて宇宙船がイヴを回収しにやってきた。ウォーリーはイヴを取り戻すため、この宇宙船に張り付いてついに宇宙に出る。

ゴミの山から見つけた宝物をイヴに見せて精一杯お愛情表現

ここから話は宇宙に行くのだが、もともとピクサーって「スター・トレック」の特撮CG作ってた連中だから、宇宙モノは大得意。さっき挙げた汚れた地球の描き方もそうだけど、宇宙空間やスペースシップの絵も高額予算の実写映画CG(って変な言い方だな)と比べてまったく遜色ないレベル。「ウォーリー」ではこれをうまく使った仕掛けが用意されている。

宇宙船の外壁につかまり、新しい世界へと踏み出す

イヴを差し向けたのは実は人類で、ゴミだらけの地球を捨てて巨大宇宙船に乗って何百年も旅を続けていた。ここで初めて人間が画面に登場するんだけど、これがオイラの苦手なお肌ツルツルで丸々太ったマンガキャラだった。一方、地球に住んでいた頃の人類の映像が流れるシーンがあり、それは普通の実写画像になっているし、ウォーリーが宝物にしてる映画ビデオ(「Hello, Dolly!」という実在するミュージカル映画 : 主演はバーブラ・ストライサンド!)もそのまま流れてる。つまりどういうことかというと、人類は宇宙船の中で至れり尽くせりの生活を送った結果どんどん太って、何百年後には自分で歩くこともできないマンガみたいな生き物になっちゃったというワケ。キャラをまぜこぜにしてるように見えて、実は限りなく実写的な絵作りの映画なんですよ!

この宇宙船をはじめ、ウォーリーやイヴ、そして人類の身の回りにあるものをすべて作って、ひたすら消費を奨励してある意味人類を堕落させているのがBnLという企業。BnLとは「Buy and Large」の略で、今の資本主義社会をパロったような存在だ。米国での公開時(6月ごろ)には実際に「http://www.buynlarge.com/」というURLでホームページまで作ってあって、会社情報から各種グッズの販売、各種ロボットカタログや宇宙船による宇宙移住プランのお誘いまで凝ったコンテンツが充実してたけど、今は閉鎖されて、このURLにアクセスしてもディズニーの宣伝ページに飛ばされてしまう(泣)。大人の事情で日本公開が半年遅れになったのなら、こういうフォローも続けてほしいもんだ。

ちなみにWALL・Eは"Waste Allocation Load Lifter-Earth Class"、EVEは"Extra-terrestrial Vegetation Evaluator"の略だそうな。これ見たとき「ガンダムSEED」のストライクガンダム起動画面を思い出したのはオイラだけか? あ、起動といえばウォーリーの起動音がMacと同じというネタを書くの忘れてた。イヴ=iPodな件ともども、自分たち(ピクサー)の大株主(スティーブ・ジョブス)に気遣いすぎじゃないの?

誰かと手をつなぐことが夢だったウォーリー、その恋は成就するのか

『WALL・E/ウォーリー』は全国ロードショー中。

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