10月に起こった金融不安の影響で1ドル90円台半ばの円高が続いているにもかかわらず、低迷する海外旅行が復活する兆しはない。好調なのはウォン安の著しい韓国ぐらいなもの。原油の値下がりにより、燃油サーチャージが引き下げられそうな気配もあるが、何より先の見えない不況下で「これから海外旅行に行こう!」という人はそういないのではないだろうか。

そんな中、海外旅行者にとって新たな負担が生まれている。旅行会社が海外航空券を手配・販売する際に「手数料」を上乗せし始めたのだ。すでにエイチ・アイ・エスは今年6月から、JTBや近畿日本ツーリスト、日本旅行では10月から「手配手数料」の収受を開始している。「手配手数料」とは、旅行会社が利用者の要望に基づいて海外航空券を手配する"手間賃"なのだが、なぜ今になって手間賃を上乗せする必要がでてきたのだろうか。

旅行会社の手数料徴収--背景は航空会社のゼロ・コミッション化

その背景にあるのは、航空会社による「ゼロ・コミッション」政策である。コミッションとは航空会社が旅行会社に対して支払う航空券の発券手数料のこと。もともとは券面額の10%が自動的に航空会社から旅行会社へ支払われてきたが、それが2001年に7%となり、2007年には5%と段階的に削減。今年10月からはノースウエスト航空とアメリカン航空がコミッションを全廃しており、来年4月には日本航空と全日空が追随することが決まっている。航空会社からの手数料収入が入らなくなる旅行会社が、それを消費者から徴収しようというわけだ。

では、なぜ航空会社が旅行会社へのコミッションを廃止するに至ったのだろうか。コミッション削減の動きが出てきたのは、今始まったものではない。実は90年代半ば、サウスウエスト航空など欧米で新規航空会社が続々と誕生し、航空会社間の競争が激化した頃からだ。その後、2001年の米テロ事件による世界的な航空不況により一気にこの動きを加速。さらにインターネットの浸透で、店舗網をもたなくても航空券を販売できるようになったことが、「ゼロ・コミッション」という航空会社の決断を後押ししたようだ。

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