【インタビュー】

日中の"架け橋役"に生存賭ける中国・大連市「ブリッジシティ構想」 - 董処長に聞く

4 パラダイム・シフトに動く中国オフショア企業

    薄田雅人  [2008/12/02]

    オフショア企業を選別する眼は厳しさ増す

    以上が、大連市信息産業局ソフトウェア処、董莉処長へのインタビュー内容である。大連のソフトウェア産業行政の先頭に立つ現役の官僚であるにもかかわらず、直接的な質問に嫌な顔一つ見せず、テキパキと答えてくれた。これが勢いのある新興国の官僚なのかと、非常に好感を持った。

    だが、大連、東京、北京などで実際に企業経営にあたる経営者の実感は、微妙なところで、また少し異なるようである。

    例えば、北京でオフショア開発企業を経営するA氏(在日経験17年)は、「今後は日本企業の中国オフショア企業を選別する眼が格段に厳しくなるはず」と、警戒を隠さない。また、コストをさらに抑えるため、大都市や沿海都市から内陸都市への「二次オフショア」が増加してくると読む(この点は、大連市が推進する「ブリッジシティ構想」の妥当性を裏書するかのようだ)。

    実力のある企業には「絶好のチャンス」

    A氏はさらに、単純な日本企業からのオフショアに従事する大連企業は極めて厳しい立場に立たされるはずであると指摘。すでに多数の倒産や廃業が起こっていることや、大連企業への低価格でのM&Aも進行中だと明かしてくれた。

    A氏の会社は、さる11月14日に中央政府が発表した4兆元の景気浮揚資金に期待を寄せている。実力有り、コネ有りの企業にとっては「絶好のチャンス」だ。「中国国内の情報化投資にはまだまだ膨大な発展空間があるため、今後は積極的に国内市場に打って出る」という。

    一方、大連でオフショア企業を経営し、客先の8割が日本企業だという経営者B氏は、今の大連で安泰なのは「NEUSOFT(東軟集団)のようにごくごく少数の、中国市場で確固たる経営基盤をもつ会社だけ」と話している。

    B氏は日本に300人程度の中国人エンジニアを抱えてきたが、「(エンジニア派遣に)外国人(は)お断り」という案件が急増、年内にはリストラに踏み切らざるを得ないだろうと頭を抱える。

    B氏もまた、今後は日本企業との戦略的アライアンスを組むなかで、在中国日系企業からのSI業務を狙っていきたいという。日本市場が風邪を引くと、大連企業が肺炎にかかるという状況はいかにもまずい。B氏の会社もまた、来年以降の最大テーマは「中国市場へのシフト」、である。

    「中国市場開拓」のパートナーになる必要

    最後に、日本の経営者からの声を紹介しておこう。中国企業と長年の協業経験をもつC氏は、「単価が安いです、というアプローチをもらっても、もう魅力は感じない。それよりも、中国国内需要に関する提案や、中国国内技術の対日転用など、対等なビジネス・パートナーとして協力し合える中国企業とお付き合いしたい」と語る。

    さらにC氏は、今後の日中協力可能分野として具体的に、(1)日本のパッケージソフトウェアの対中展開(当該製品のローカライズや販売)支援、(2)在中国日系企業と日本本社間のデータ(会計等)連携ソリューション提供、(3)中国企業が対日進出する際のシステム開発支援ないしコンサルテーション、を挙げた。

    こうして整理してみると、明らかに、一つの事実がみえてくる。それは、中国政府も中国企業も、そして日本企業――おそらくはその他諸国企業の多く――も、いずれも「中国市場へ」が合言葉になっているのだ。

    大連市政府が掲げる「ブリッジシティ構想」は、自らの「強み」と「弱み」を冷静に秤(はかり)にかけ、また、中国経済が圧倒的な規模と高みを獲得するまでの、いわば過渡期をいかに賢く生きるかという思考を経て練り上げられたものであろう。そういう意味でも、いま筆者がもっとも強烈に感じるのは、中国企業のなかで猛スピードで進みつつある「パラダイム・シフト」への自覚にほかならないのである。

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