総務省総合通信基盤局事業政策課長・谷脇康彦氏

都内で開催された「MCF モバイルコンファレンス 2008(mobidec2008)」に、総務省・総合通信基盤局事業政策課長の谷脇康彦氏が登壇し、「モバイルビジネスの活性化に向けて」と題した講演を行った。

日本の携帯市場は、昨年末に1億加入を突破。世界でもトップクラスの3G普及率となっており、対前年比での加入者の伸びも5~6%止まりで、谷脇氏は「成熟期に変わってきている。(従来の)成長期のビジネスモデルが大きく変わろうとしている」と指摘する。グローバルでのオープン化も大きな流れだという。

日本の携帯市場はNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルの3大キャリアが市場の多数を占めており、毎月の純増数で争っているが、「長期のトレンドでマーケットシェアを見ると、(3社のシェアには)大きな違いがない」と谷脇氏。3社の寡占度は3,594にも上り、独禁法ガイドラインの規定では1,900以上は「きわめて寡占性が高い」と判断されるため、3社が独占した市場だと言える。谷脇氏は、「競争が不十分なマーケットと位置づけている。より競争を導入しなければならない」という。

ただ、競争の中でARPU(1ユーザーあたりの月間平均収入)は低下を続けており、新たにモバイルビジネス市場を活性化する必要がある。そこで総務省は、昨年9月にモバイルビジネス活性化プランを策定、そのプランに従って施策を展開している。

同プランのポイントは3点。(1)販売モデルの見直し(2)MVNOの新規参入(3)市場環境整備――だが、(1)は現在の端末販売手法の変化に現れている。(1)では、従来キャリアが販売奨励金を出して端末を安く売り、利用料金から徴収する仕組みだったが、総務省では端末価格と利用料金の区別が不明確で、端末の利用年数によってユーザー間で不公平感が起きることを問題視。その結果「端末価格と通信料金を切り離してもらいたいとお願いした」(谷脇氏)のであり、総務省が「販売奨励金を廃止するようにお願いしたことも、2年縛りの契約を入れるようお願いしたこともない」(同)そうだ。

その結果、先行していたソフトバンクを含めて各キャリアから新しい料金プランが登場したが、谷脇氏は現在も残っている問題としてSIMロックを挙げる。SIMロックの解除は、現在のようにキャリアが通信から端末、サービスまでを提供するモデルからそれぞれを切り分ける上で必要と谷脇氏。とはいえ、現状は3GでもW-CDMAとCDMA2000の2方式があり、SIMロック解除しても、全ユーザーが自由に端末を購入できるわけでもないため、「今、SIMロックを解除するというのはやや乱暴な議論かもしれない」と慎重な姿勢。ただ、今後はSIMロックを解除する方向でタイミングを慎重に検討していくとした。

MVNOは、キャリア(MVO)の回線を借りてサービスを行う通信事業者だが、欧米ではこのビジネスモデルは成功していない。しかし、日本では高速な3Gネットワークが普及し、「日本型のMVNOを作っていくのが重要なテーマ」(同)という。総務省ではMVNOのガイドラインを策定し、事業者の要望などを聞きながらさらにガイドラインを整備して、MVNO事業の拡大を期待しているところだ。

なお、超小型の携帯基地局であるフェムトセルについては、すでに改正電波法が成立しており、年内にもガイドラインを策定。「なるべく早く導入できるよう制度整備が完了しつつある」(同)状況だ。

市場環境整備では「通信プラットフォームにフォーカスを当てている」と谷脇氏。現在は、サービス利用者の認証、課金はキャリアが提供しているが、認証・課金プラットフォームをキャリア以外も行えれば、「コンテンツアプリ市場とプラットフォーム市場の好循環が生まれるのではないか」(同)。携帯ネットのトップページはキャリアのメニューサイトだが、これも同じ条件で他のポータルなどが参入できる、公式サイトからのリンクの自由化、位置情報提供の基準の透明化など、さまざまなポイントを谷脇氏は上げる。

現状は、認証・課金はキャリアが提供しているが、そのためキャリアを変更するとコンテンツは引き継がれず、提供者もキャリアだけ

固定系サービスでは、PCなどの端末、NTTなどの通信回線、ISP、クレジットカードなどの認証・課金は自由に選択できるのに、携帯ではそれができない

また、MNP(携帯番号ポータビリティ制度)によって電話番号はそのままでキャリアは移動できるが、メールアドレスは変更される。Webメールを使っていても、プッシュ配信は行われない。着うたやアバターなどのデジタルコンテンツも持ち運びはできない。こうした点についても谷脇氏は解決すべき課題に挙げる。

端末、サービス、ポータビリティで多様性を強化。認証・課金制度やMVNOの拡大などで市場の活性化を狙う

ID管理も注目しており、固定、携帯でも1つのIDで利用できるような環境も検討を始める

端末仕様も、現在はキャリアごとに異なるが、キャリアが異なっても共通できるところは共通化し、コスト負担を減らす必要性を訴える。プラットフォームについてはLiMo、Symbian、Androidというオープンプラットフォームを例示する。

なお、同様にキャリアを超えた共通プラットフォームとなっているiPhoneに関して谷脇氏は、総務省の方針からは「微妙」と表現しつつ、キャリアの公式アプリなどと比べて「アプリを自由にインストールできる点はいい」としている。

谷脇氏は、端末から認証・課金を含むプラットフォーム、サービスなどをキャリア1社が行う「垂直統合型」のビジネスモデルだけではなく、さまざまなベンダーが参加してビジネスモデルを作る「水平統合型」も選択できるという状況を期待している。

垂直統合を否定するわけではなく、水平型も選択できるようにする、というのが谷脇氏の主張

そのほか、ライフログ関連のサービスに関しても谷脇氏は「将来有望。プル型(のサービス)からプッシュ型に変わっていき、とても重要」としつつ、「懸念の声も上がっている」として、健全な発展のために最低限のルールで必要なものを議論していく場を検討しているそうだ。