WOWOWで毎週金曜深夜0:00から放送されている『藤子・F・不二雄のパラレル・スペース』。その全6話のうちの第5話『征地球論』(11月28日放送)のMA収録が7日に行なわれ、"声の特別出演者"たちをインタビューした。前回お伝えしたテリー伊藤氏と、同作品の監督である青池良輔氏に引き続き、今回は、同シリーズの他作品の5人の監督たち、箭内道彦、三木孝浩、藤本周、筧昌也、小泉徳宏の『征地球論』を語っていただこう。地球について議論する惑星Xの宇宙人たちの声を務めたあとの、心境や"藤子ワールド雑感"など、さまざまな思いが飛び出した。

『征地球論』は、WOWOWで11月28日(24:00~)に放送される

箭内道彦監督(第1話『値ぶみカメラ』)

「1週間ごと違う監督の作品がやってくるのが面白い」と箭内監督

「値ぶみカメラ」という不思議なカメラを手にした、カメラマン志望の竹子(長澤まさみ)を描いた箭内監督は、「WOWOWの話題づくりに利用されてしまった(笑)」とコメントしながらも、『征地球論』の宇宙人の声を担当したあとについては、「宇宙人の言葉はほぼ全部共感できる。藤子先生の作品は、広い間口と深い奥行きが両立できている。普通はできないこと。見終わって考える人はいくらでも深く考えられるし、ぜんぜん考えなくても楽しい作品になっている。その二重構造を、今回この2作品を通して実感しましたね。結構な問題作をつくってしまったなと。『征地球論』は、谷村美月ちゃんが絶望するシーンから、それについて宇宙人が反応する数分間が重い。ここ数十年の映像作品の中で、最も重いんじゃないですかね。絶望している人に対して、音声で、『コイツ死ぬかもよ』みたいなことをアフレコで言う構造の映像作品って、今までないんじゃないかって。相当激しいなと僕は思った」。

三木孝浩監督(第2話『あいつのタイムマシン』)

ZONE、木村カエラ、ORANGE RAGEらのPVを手がけている三木監督

「タイムマシン」の特集を担当することになる科学雑誌編集者・ひろ子(田畑智子)と、大学でかつて一緒にタイムマシンの研究をしていたハルカ(ミムラ)と、1人の男性との関係を描く『あいつのタイムマシン』の監督を務めた三木孝浩氏は、プレッシャーを感じたという『征地球論』での声の役について、「当たり前と思って日常を生きているいる人たちを、ふと当たり前でない人たちが見ると、『なんておかしな日常を生きてるんだ』と思うのかもしれない。それがこの物語のテーマだとは思う。『あ、そういう見方もあるよね』という部分が随所にある。そこがこの作品の面白いところ」と語っていた。

藤本周監督(第3話『ボノム~底ぬけさん~』)

フジテレビ系ドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』などの演出を務めた藤本監督

周囲も呆れる程にお人好しなベテラン俳優・片山(國村隼)の妙なまでの信念を貫く姿を描く『ボノム~底ぬけさん~』の藤本周監督は、『征地球論』のMA収録後、「青池監督が『すばらしいです』って言ってくれるけど、言われたときのあの疑心暗鬼感がたまりませんでした。冒頭、宇宙人がガヤガヤしているシーンでは、『もうやってらんないよ! 一発で済むだろ!』なんていう台詞があるんですが、何となく自分の感情が生々しく出ていると思いますね(笑)」とシュールなコメントを。自身の作品については、「脚本も仕上げもとても楽しい作業で、苦しさはないですね。原作のいい雰囲気がもともとあるので、我々もリラックスして制作できている」と、順調のようす。今回のMA作業は、「不思議な統一感があって、『こうしよう、ああしよう』と相談していないのに、バラバラにならずに大きな包容力に包まれている感じがする現場だった」と感想を述べていた。

筧昌也監督(第4話『かわい子くん』)

代表作に『ロス:タイム:ライフ』(フジテレビ系)、『Sweet Rain 死神の精度』などがある筧監督

自分の容姿に全く自信がないフリーライターの茂手内(本多力)と、彼が通院する歯科医院長の理子(麻生久美子)の「本質」をテーマにした物語『かわい子くん』の監督を務めた筧昌也氏は、声優としての自分に対して「軽く凹んでいる。声って難しいですね。芝居というよりナビゲーターというか、説明が多いのでたいへんです」と。他の監督の声での活躍を見て、「脚本も書く監督さんたちだから、全体のこと考えて自分のキャラをつかんで話すので、上手いな~と思う」とうらやましそうに語っていた。また、自身が手がけた『かわい子くん』については、「藤子・F・不二雄さんらしい、不思議な作品が多いなか、僕の作品は妙な感じであまり"藤子先生らしさ"を感じなかった。シナリオがどうこうというよりも俳優さんがもつ魅力が出てればいいかなという感じで制作した。キャスティングはすごいよかったと思う」と振り返っていた。

小泉徳宏監督(第6話『ボクラ共和国』)

『ガチ☆ボーイ』、『タイヨウのうた』を手がけた小泉監督

さて、最後を飾るのは小泉徳宏監督の『ボクラ共和国』だ。子供たちがつくりあげた架空の国をめぐる物語で、小泉氏は、「大事にしたのは原作で何を伝えたかったのかというメッセージ性を重要視して、藤子先生のメッセージや作品が存在する意義がキープできれば、他の部分は変えちゃっていいと思っていた。僕なりに解釈したのは、『国は子供にもつくれるかもしれない』ということ。大人にはしがらみや立場というものがあって国を変えるというようなことはできないかもしれないけど、子供たちならば変えられるのではないかと。この作品はぜひ同年代の子供たちに見てほしいですね。いっぽうで大人たちには新しい発見が見つかるとも思う」と自信を込めた。さらに『征地球論』については、「宇宙人という第3の視点、遠いところからの客観的な視点から話すということが面白い。藤子先生もある意味人間の世界を宇宙人の視点で見ていたんだろうなとも思う。そんな視点があるから『ドラえもん』のような夢のある作品も描けるんだろうな」と語った。