クリエイターの側から、面白いモノを提示するべき

――『秘密結社 鷹の爪』や『菅井君と家族石』といった一連の代表作では、下らない笑いを前面に出しつつも、根底に家族愛的なものが確実に入っているように思います。FROGMANさんのなかで、なにかこだわりはあるのですか?

FROGMAN「それは、僕なりのコメディーの解釈の仕方だと思うんです。生まれて初めて観たコメディー映画はチャップリンの作品だったし……。必ずただのバカで終わらずに、そこに何かテーマを本質として置いておくっていうのは、やっぱり僕はコメディーの基本だと思っているんです。だから、そういう先輩方のスタイルを真似てるっていうのはありますよね」

――古墳とか、スライ&ザ・ファミリーストーンにしても、『鷹の爪』の中で吉田くんがボソッと言う小ネタにしても、結構30代以上の人にとってのツボというものが多いような気がします。作品を観る世代というのは特に、意識されていない感じなのですか?

FROGMAN「これもまた僕のスタイルではあるんですけど、TBS系列「NEWS23」の『蛙男劇場』をやっているときもそうなんですけど、「NEWS23」サイドから言われているのが、"10代から70代まで笑えるコンテンツにしてください"って言われるんですよ(笑)。でも、その両方に受け入れられるようにと考えながら作ると途端につまんなくなるんですよ。"わからなくてもいい"じゃないと、僕らはクリエイターなんだから、やっぱり見せる人たちを追いかけちゃダメだと思うんです。"今、こういうものが流行っているから、こういうものを作りましょう"ってのは嘘なんです。やっぱり、ジェームス・ディーンがジーンズを穿いて、それを穿きこなしたからこそ若い人たちにジーンズが広まったと思うんです。それと同じように"これかっこいいだろ、これ面白いだろ"って提示していくのがクリエイターの仕事だと思うんです。"もしギャグわかんなかったら調べろよ"とか"理解できるように頑張れよ"とか、ちょっと傲慢なんですけど(笑)、そういう部分ってあってしかるべきだと思うんですよ」

――そうすると、FROGMANさんのやり方として、オーダー通りに作るっていう発想はないのですか?

FROGMAN「いえいえ、それはもう僕は逆にいうとオーダー通りになるべく作りたいと思っているほうです。『作りたいもの』と『作ってもらいたいもの』。このベクトルって必ず交わるポイントがあるんですよ。だから、この交わったポイントを見出して作るのがプロだっていう風に思うんです」

――ご自身では、ポイントとか着地点とかっていうのは掴めている感じがしますか?

FROGMAN「自分なりには『ここだ』って見極めて作っているつもりでいます」

――FROGMANさんは個人体制のFlashアニメ作品以外に、これからやってみたいこととかあるんですか?

FROGMAN「もう前から言ってるんですけど、まず実写作品で作りたい企画が何本かあるんです。それは、ちゃんとした長編の映画で、僕は脚本・監督になると思います。で、最近ようやく昔の実写時代の仲間に『実はFROGMANは小野なんだ』ってバレちゃってるんで、先輩とかにも『お前、作品出ろよ』とか言われて、映画に出されちゃったりするんですよ。だからもうそこら辺は開き直って、『じゃあこんなの作ろうぜ』みたいなものを昔の映画仲間に言ってます」

――FROGMANさんの実写作品は、これまでにアニメ出身の監督が作った実写作品とは、まったく違うテイストの作品になるような気がするのですが……。

FROGMAN「そうだと思います。僕の場合、ベースが映画だと思ってますし、映画をやるにあたって、『こういう作品がやりたい』っていうのがあったんで、皆さんが想像しているようなおバカなショートコントの寄せ集めのような映画ではないですね。まぁコメディーは作ろうと思ってますけど、蛙男商会のFlashアニメ作品とは、また全然異質なものになると思います」

――FROGMANさんのようなクリエイターを目指している人は沢山いると思うのですが、そういった方々に、なにかアドバイスのようなものはありますか?

FROGMAN「気づいてそれを受け入れるってことは、凄く最近大事だなって思うんです。それはいいところも悪いところもで、どうして自分がこれじゃダメなのか? それに気づいてダメなところを出さずに、良い部分を出していこうということですね。僕の場合だったら、やっぱり島根に行って自分で一人で映像作ろうと思ったとき、何が出来るか考えたんです。まぁ、絵はちょっと書ける。シナリオも書けなくはない。声も自分で出してもいい。そしたらアニメーションをやるしかない。自作自演でやるしかないっていうことで今のFlashアニメーションの形になったんですよ。元々ああいう風にやろうと思ったわけではないんですよね。消去法で自分の出来ることを残していったら、あれしかなかったんです。だからもっと音楽ができるとか、自分でダンスができるとかだったら、違うコンテンツになっていたと思うんです。あれが実は自分が出来ることの精一杯だったんですよ。それに気づいたから、実行に移すことができたんですけど。だからクリエイターを目指して『ああいう風になりたい』ってみなさん猛進するんですけど。でも自分で気づいてダメだと思うんだったら、もっと違う道や方法っていうのも考えて欲しいなって思いますね。ブスなのにモデルになろうとかそれは無理じゃないですか。やっぱり気づかなくてはいけないんですよ。頭悪いのに博士になろうとか、コネもないのに総理大臣になろうとか無理じゃないですか。そしたらこういう方法もあるんじゃないって。僕は映画監督になりたかったけど、ダメだった。でもFlashアニメからいったら、映画監督に近づいたんです」

秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE II ~私を愛した黒烏龍茶~

FROGMANの劇場用映画第2弾『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE II ~私を愛した黒烏龍茶~』。(※パッケージ写真は「スタンダード・エディション」のもの。定価3,990円で東宝より発売中)

(c)「秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE II」製作委員会

撮影:岩松喜平