SNSというと昨2007年頃から米Facebookの勢いが目立つが、元祖SNSのMySpace(Fox Interactive Media傘下)も着実に戦略を進めている。MySpaceの最大の強みは収益性。創業したその日から収益を考えており、売上高の増加はGoogleよりも早いという。

10月16日、スウェーデン・ストックホルムで開催された技術と投資のイベント「ETRE 08」にて、同社でインターナショナル担当マネージングディレクターのTravis Katz氏が基調講演を行い、ビジネスモデルや新サービスについて語った。

Travis Katz氏

Katz氏は、米国以外のすべての国のオペレーションを統括する人物。Katz氏はまず、このところの金融危機とインターネットビジネス全体の状況について、次のように語った。「広告費は確かに最初に削減されるものの1つ。だが、インターネット広告は効果を測定できるメリットがあることから成長しており、われわれは楽観している」

Katz氏の自信には理由がある。MySpaceは収益性を重視しており、「創業したその日から収益(=広告モデル)を考えていた」とKatz氏。広告が重要な収益の柱になると想定していた同社は、最初からWebページに広告の枠を入れておいた。こうすることで、ユーザーは慣れ、広告が掲載されることを自然と受け入れると考えたからだ。「このような収益性へのフォーカスは、他のWeb 2.0企業との差別化」と続ける。

Katz氏によると、昨年の売上げは8億5,000万ドル。「創業5年目にしてのこの数値は、GoogleやYahoo!など、前の世代のインターネット企業の成長ペースを上回っている」と胸を張る。アクティブユーザー数は現在、1億2,000万人に達した。Fox Interactive Mediaの親会社であるNews Corpが買収した当時は2,500万人だったという。Katz氏が統括する米国外では、この6カ月で26%増で伸びたともいう。このような売り上げとユーザー数の増加により、「2005年に買収されたときには、評価額が高すぎるといわれたが、現在では金融アナリストらから"適切な価格だった"といわれるようになった」とKatz氏は続ける。

堅牢なビジネスモデルの構築こそ最大のフォーカスというMySpaceは、この5年、ブランド、広告主、エージェンシーらと協業し、広告モデルを共に考えてきたという。そして、その成果の1つとして、ターゲット広告技術「HyperTargeting」を利用した広告サービスを前日の10月13日に開始したことに触れた。

Katz氏は広告モデルがSNSにとって正しいビジネスモデルであることを確信しているようだ。「SNSの長所はユーザーの情報があること。適切な広告を、適切なユーザーに、適切なタイミングで配信できる。MySpaceには、性別、居住地区にとどまらず、好きな音楽、好きな食べ物など幅広い情報がある」(Katz氏)

HyperTargetingでは、ユーザーのプライバシーに配慮し、個人を特定できる情報を切り離してカテゴリ化していることを付け加えた。

競争を勝ち抜くにあたって、重視していることは「成長・拡大と収益のバランス、イノベーションへの投資」とKatz氏。その鍵を握るのは人材だ。

優秀な人材の引き抜きはMySpaceにとっても重要だ。それにあたって、いまや大企業の一部となったMySpaceだが、ベンチャー企業の雰囲気を大事にしているという。幸い、Newsを設立したRupert Murdoch氏自身が起業家であることもあり、起業家精神あふれた社風という。Katz氏はまた、買収の条件の1つとして、既存の計画に口出ししないことにMurdoch氏が応じたことも明かした。

SNSはプラットフォームになりつつあり、米国ではHotmailやYahoo!を侵食しはじめたとKatz氏は言う。現在はMySpaceを次のレベルにする種を蒔いている段階という。「他(のSNS)はユーザーどうしがコネクトすることにフォーカスしているが、われわれのフォーカスはMySpaceの外のエクスペリエンスをMySpaceに持ち込むことにある」とKatz氏。その1例として、今年初めの「MySpace Music」を挙げた。

Web 2.0時代にうまれたMySpaceは、来るWeb 3.0をどのように見ているのだろうか? Web 3.0については「わからない」としながらも、インターネットの進化の方向性としては、パーソナル、ポータブル、コラボレーションの3つを挙げる。中でもモバイルは大きなフォーカスで、今後5年の間にユーザーの50%が携帯端末からアクセスすると見ているという。

MySpaceには現在、約2週間おきに新しい機能が追加されているという。このペースを維持するとKatz氏。「イノベーションはまだ始まったばかり」と述べた。