グーグル シニアプロダクトマネージャー 及川卓也氏

12日に開催された「Google Enterprise Day 2008 Tokyo」では、ブレイクアウトセッションとしてGoogle Apps製品の紹介が行われた。

「企業における情報共有といえばナレッジマネジメントという言葉が流行した時期がありました。そうした製品を導入して成功している企業もありますが、導入しただけではうまくいかなかったという声も多くあります」とグーグルのシニアプロダクトマネージャーである及川卓也氏は語る。データ容量が増大する中、ファイルフォーマットの多彩さやフォルダ分類方法の統一の難しさなどが、情報の共有を難しくしているという。

また、コスト面での障害もある。動画等のリッチコンテンツが増えたために1ファイルあたりの容量は巨大化し、それにともなってストレージにも大容量が要求される。システム投資をすると保守費用も発生するため、新たな取り組みにはなかなかコストを割くことができない。ハードディスクの1GBあたりの価格は年々安くなってはいるが、企業は気軽にストレージの変更や追加ができるわけではない。

技術革新による情報格差をいかに解消するかという課題もある。日本はブロードバンド環境が整備され、高速な携帯電話網や無線LAN環境も整っている。どこからでもネットワークにアクセスできるインフラあり、それを利用するモバイルデバイスの進化も進んでいる。こうした状況を物心ついた頃から利用しているデジタルネイティブと呼ばれる新世代と、それ以前の世代には情報格差が生まれるとも言われているのだ。 「これらの課題を解決するために、クラウドコンピューティングで対応します。たとえば、個々のストレージを交換するのは難しいですが、クラウドに一任することで簡単に容量増加のメリットを受けることができます。クラウドで提供されるGoogle Appsはインストール不要です。IT部門の余計な作業やコストなしで、強力なメッセージングや共同作業のためのツールを提供します」と及川氏は語る。

Google Appsプラットフォーム

Google Appsでは、メッセージングツールとしてGmail、Googleトーク、Googleカレンダーが、共同作業用のツールとしてGoogleドキュメント、Googleサイト、Googleビデオが提供される。無償で利用できるスタンダード版ではGoogleのドメインを利用するが、有償のプレミアムエディションでは企業独自のドメインで運用することができる。画面上に広告は表示されず、Googleロゴを自社ロゴに差し替えることも可能だ。1ユーザーあたりのストレージ容量も25GBと、無料版とは桁違いになっている。

Googleカレンダーは、企業利用に合わせて人のスケジュールだけでなく会議室等の施設スケジュールの管理にも対応する。Googleビデオは社内のみに公開することができるため、教育用の動画を配信するのにも役立つはずだ。

Google Appsのアプリケーション群

「Google Appsは様々な機能を提供するが、特にGoogleドキュメントは共同作業を容易に実現するという大きなメリットを持っています。一般的なオフィスアプリケーションにも文書共有機能を持つものが増えているが、たいていは使いづらい機能になっています。GoogleドキュメントはMicrosoft Officeの代用品だと思われがちですが、全く違う価値を持っているのです」と及川氏は語る。

Googleドキュメントは同時に複数人数がドキュメントを開いて編集した場合、わずかなタイムラグで他のメンバーの画面に編集結果が表示される。仮に同時書き込みが行われた場合には警告が表示されるため、再度書き込みを反映させるだけで良い。編集履歴には、いつ誰がどのような変更を加えたのかが記録されており、選択した版ごとの差分表示や特定の版への書き戻し等も容易に行うことができる。

Googleドキュメントの特性

また、セキュリティやコンプライアンスへの対応も実施されている。Gmailのマルウェア防御機能が強力なのは知られているが、コンテンツポリシーを設定しての処理にも対応しているのだ。また、メールのアーカイブや検索も行うことができる。

「企業は可用性の確保や保守サポート、ハードウェアの追加等に1ユーザーあたり年間数万円のコストをかけています。しかしGoogle Appsを利用すれば、それらはわずか6000円で手に入れることができます」と及川氏はGoogle Appsの利用がTCO削減にもつながると主張した。

TCO削減へのGoogleのアプローチ

Googleでは、Enterprise SearchやGoogle Appsについてのオンラインセミナーを定期的に開催している。同じ基本機能をもつスタンダード版を無償提供するだけでなく、企業ユースのプレミアエディションにも30日間の無料トライアルを設けるなど、今後も積極的に展開していく予定だ。