ヤナセは、同社のショールーム「ヤナセ 銀座スクエア」(東京・銀座)で11月6日まで、「芝浦ショウルーム」(東京・芝浦)で11月8、9日の両日に、「昭和の名宰相、吉田茂が愛したメルセデス・ベンツ」と題し、1963年に吉田茂元首相が購入した「メルセデス・ベンツ 300SEロングセダン」を特別展示している。

吉田元首相は、ベンツを買うことを約束したアデナウアードイツ元首相に、納入したその日に電報を打ったという。「われ約束を果たせり。新しいベンツに本日から乗っている」と

このメルセデス・ベンツ 300SEは、麻生太郎首相の祖父で、戦後の日本復興に尽力した吉田元首相が晩年に愛用したクルマで、ヤナセの故・梁瀬次郎氏が吉田元首相に直接納車した300SE輸入第1号車となる。

ヤナセ代表取締役社長 西山俊太郎氏と2ショット。45年の時を隔てたメルセデスの名車が隣り合わせに

梁瀬次郎氏は、「私が最も尊敬している吉田茂翁について」と始まる同社社内報「和苑」の記事の中でこう記している。「吉田翁は私にこのような話をされた。『君は自動車の輸入を一生懸命やってくれ。輸入車が増えれば、それに追いつき追い越せと日本の自動車業界が必ず発展する。会社の発展のために輸入している、という狭い考えはやめて、後に日本の自動車が輸出されるときが来るのを目指して頑張ってほしい』。その話を伺って、日本の自動車産業の発展に力を尽くそう、と心の奥から燃え上がったのを憶えている」(一部省略)。のちに日本、アメリカの自動車殿堂入りを果たし、後世までその功績が称えられることとなった梁瀬氏も、今年の3月に死去した。

同社 代表取締役社長 西山俊太郎氏は、「この300SEはヤナセの歴史そのもの」と語り、今回の展示イベントに大きな節目の意味を込めていると話していた。ヤナセの歴史は、東京・日比谷に1915年に設立した梁瀬商会から始まる。1960年代から自動車輸入業として黎明期・全盛期を迎えるが、90年代バブル崩壊以降、海外の自動車メーカーが、直系販社の日本法人を次々と日本に展開する中で、輸入事業から販売業へと転換することになる。

鋭いエッジのついたリアまわりのデザインも特徴のひとつ。独特のフィンが存在感を引き立たせる

「ヤナセの歴史でもあるこの300SEの展示は、新しいスタートという意味が込められている。ひとつは『銀座スクエアでもクルマを販売しているんだよ』というアピールのために。もうひとつは、最近のメルセデスのラインナップとは明らかに違う、『どこから見てもベンツ』という風格を持つ次期『Eクラス』への期待を込めて、ここに展示した」と西山氏は語る。この63年式300SEと次期Eクラスのイメージが重なり、45年の年月を経て、「これぞベンツ」といわしめるクルマが来年にもお目にかかれるという期待感を持たせるイベントだともいう。

「『クルマが語る人生のドラマ』を多くの人にご覧いただきたい」というヤナセの思いが込められた本イベントで、自動車と日本の歴史のひとかけらを見つめに行ってみては。

「昭和の名宰相、吉田茂が愛したメルセデス・ベンツ」展は、6日まで銀座スクエアにて、8・9日は東京支店・芝浦ショウルームにて開催。開館時間などの詳細はこちら