【レポート】
スウェーデンの首都ストックホルムで開催された投資と技術のカンファレンス「ETRE 08」にて10月15日、地元スウェーデンの老舗銀行SEBの会長であるMarcus Wallenberg氏が登場、この1カ月で急展開した金融危機およびベンチャー投資について見解を示した。
Wallenberg氏の家系は、スウェーデンやスカンジナビア諸国で大きな影響力を持つ。SEBは1856年、Wallenberg氏の曽祖父にあたるAndre Oscar Wallenberg氏が創業、銀行業のほかベンチャー投資も行っており、通信業界ではEricssonを支援したことで知られている。Wallenberg氏は以前、北欧地区大手の持株会社Investor ABのCEOを務めた経験もある。
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Andre Oscar Wallenberg氏 |
Wallenberg氏はまず、現在の経済危機について分析した。「市場の上がり下がりはあるが、今回の危機は近年のものより悪い」とWallenberg氏。現在の危機は金融に端を発したグローバル規模のもので、現在、我々はクレジットクラッシュの真っ只中にあるという。これまで間接的なクレジットクラッシュだったが、危機が財務市場から資本市場にも入ってきた。「サブプライムは当初の予想よりも大きな影響を与えたことがわかった」とWallenberg氏は言う。
「金融市場は信用に依存する」とWallenberg氏。この信用がなくなってしまった現在、「信用を取り戻す必要がある」と続ける。
スウェーデンは1990年代、経済危機を経験している。日本のバブル崩壊と同時期だが、スウェーデンは政府がすぐさま銀行に公的支援を行った。その後、スウェーデン政府は投資を回収し、利益を生んだ。現在、英国をはじめ欧州諸国では、当時の"スウェーデンモデル"を適用しようという声がみられる。
現在、株式市場、コモディティ市場は信用の欠如に反応し、売りが続出している。「市場は欲と恐れのバランス。現在は恐れが圧倒している状態だ」という。
だが、Wallenberg氏は比較的楽観している。前の週に米国ワシントンD.C.で開かれたG7に参加していたというWallenberg氏は、G7で話し合われた行動計画について「すばらしい前進を遂げた。賞賛したい」と述べ、「さまざまな対応策が出た」と高い評価をした。
次は、結果だ。これについては時期尚早だが、BRIC諸国の回復は大筋の予想より早く、堅牢な回復になるだろうというのがWallenberg氏の見通しだ。欧州も、対応計画が出たことを受け、ショックが緩和されると見ている。
Wallenberg氏はここまで述べた後、「リスクをとろうという投資家には、またとない好機でもある」と返す。
歴史を振り返ると、バブルが生まれて崩壊する -- これは強い成長のバネになってきたという。17世紀にはオランダで、世界最初のバブルといわれるチューリップバブル(チューリップの球根に高値が付き、家が買える値段に膨れたという)があった。19世紀には、鉄道バブルがある。Wallenberg氏は、投資総額と株価の推移を示しながら、「バブルの後、長期的価値が形成される」という。「インターネットバブルでも、同じパターンになる。技術はバブル後も継続して進化する」と続ける。技術イノベーションが社会的、産業的、技術的課題を克服することは長期的価値の創造に不可欠だとも言う。
「後退や停滞は長期トレンドでは自然の要素。だが、本物の価値が難しい時期にうまれることも忘れてはならない」(Wallenberg氏)
Wallenberg氏は、現在長期的価値を生む分野として、クリーンテック、バイオ工学とコンピュータが結びついたバイオテック、ITとの融合が進むテレコムの3つの分野を挙げる。クリーンテックについては、「環境は大企業が取り組むべき重要な問題だ」とも言う。
投資のアプローチとしては、人材に重点を置くという。「SEBとInvestorは150年の歴史を持つ。われわれは常に技術への投資にフォーカスし、起業家に投資してきた」とWallenberg氏。ファンドアプローチではなく、個々の企業に投資するというWallenberg氏は、起業家精神を重視している。「適切なタイミングで適切な場所に適切な人材を配置する。これなしには成功しない」
業界が取り組むべき課題としては、保護主義との戦いを挙げる。グローバリゼーションの反動として、保護主義が見られる。Wallenberg氏は、グローバリゼーションは経済開発に重要であり、保護主義への対処は急務と述べる。これは、現在の金融混乱を乗り切る上でも重要で、政治家らに保護主義抑制を呼びかける必要がある、という。
Wallenberg氏は最後に、"厳しいときの作業が良い成果を生む"という創業者の言葉を引用した。
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