三洋電機は、ブランドビジョンに「Think GAIA 地球といのちがよろこぶ商品作り」を掲げ、「環境・エナジー先進メーカー」をめざした事業スタイルの変革に取り組んでいる。このほど、「eneloop」のMoMA デザインストア(東京・表参道)での販売開始に合わせて「SANYO TG フォーラム」を開催。デザイン部門の責任者が登壇し、新しい事業スタイル1つである「デザインの変貌と活動領域の拡大」について解説した。

「SANYO TG フォーラム」でデザイン戦略を紹介する、アドバンストデザインセンター所長 清水正人氏

フォーラムの会場に展示されていた「エネループ ユニバース プロダクツ」の商品

清水氏によれば、従来、同社デザイン部門は各製品のデザインを個別に行っていたという。このため、ブランドとしての統一感が薄かった。また、デザインの方向性としても、店頭に並んだ際の他社製品との差別化や性能をアピールすることに重点がおかれ、文字を派手に踊らせたパッケージなどが主流となっていたという。

同氏は続けて、PDI(プロダクト・デザイン・アイデンティティ)を設定し、これをベースとしてトーンとマナーを統一するデザイン戦略を明らかにした。PDIとは、「共生(エコ・コンシャスなデザイン)」・「共鳴(ライフシーンから発想したデザイン)」・「誠実(合理性のあるデザイン)」・「愛着(永く愛されるデザイン)」・「知性(品性を備えたデザイン)」・「感動(感性に訴えるデザイン)」という6つにポイントに置いたデザインの指針というべきもの。また、デザイナーが商品の開発や規格、設計、製造にも関わることで、よりブランドビジョンに根ざした商品開発が行えるようになったという。

例えば、大ヒット商品となった充電池「eneloop(エネループ)」では、電池本体はもちろんパッケージにも、永く愛されるシンプルさと美しさが追求されている。eneloopの一番のウリは、ご存知のとおり、捨てずに繰り返し使用できるということ。商品の性能が、すでにブランドビジョンを象徴しているわけだが、それだけではない。リサイクル素材で作られたパッケージを、保存用ケースとして捨てずに使うことができるよう設計されており、デザイン領域にもビジョンが貫かれているのだ。

さらに、PDI を踏襲した「エネループ ユニバース プロダクツ」という商品群が生み出されている。例えば、化石燃料に代わるクリーンなエネルギー源となるソーラー充電器「eneloop solar charger」、使い捨てカイロに代わる充電式カイロ「eneloop kairo」、ウイルスから人々を守るウイルスウォシャー機能付き空気洗浄機「eneloop air fresher」などだ。

また、白物家電やAV機器などの分野でも、PDIをベースにしたデザインワークが行われている。グッドデザイン賞を受賞した商品も多く、海外でも高い評価を受けているとのこと。MoMA デザインストアでの販売開始も、バイヤーが「エネループ ユニバース プロダクツ」のコンセプトとデザインに共感して実現したのだという。

販売開始を記念して、MoMA デザインストアに設けられた特設コーナー(~11月3日)

なお、三洋電機の環境とエナジーを重要視する考え方に賛同した他企業とのコラボレーションも行われている。タカラトミーの世界最小人形ロボット「i-SOBOT」にはeneloopが同梱。各種イベントなどでコラボ展示が開催されるという。新しいところでは、20年前にヒットしたタカラトミーの「フラワーロック」を三洋電機のデザイン部門がデザインした新製品「FLOWER ROCK 2.0」が10月下旬に発売される予定だ。

「i-SOBOT」と「FLOWER ROCK 2.0」。「FLOWER ROCK 2.0」は、音に反応して踊るだけではなく、音楽に合わせて様々な色で光るほか、MP3プレーヤーを接続して音楽を再生することも可能。10月下旬発売予定で価格は6,090円